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ドクダミ

「貸し出しですので、壊したり無くしたりしないようにして下さい」


「らじゃ。ありゃ、ちょっと重い?」


「…無理すんなよ」


「途中で交代するよ」


受付のお姉さんから、やたら年季の入った道具一式を受け取った。


ズタズタ袋×3

草刈り鎌×1

スコップ×2

チョンチョングワ×1


あまりのボロさに引いていた健と真一を押しのけてゲットしたぜ。


見よっ!


この、向こうでも見慣れた装備の充実ぶりっ!


異世界なんの事はあろうか、夏休みに家でダラダラしてると親に捕り色々手伝わされる日本の子供にとって、草刈りもまた日常の中の基本スペックの一つに過ぎない事を思い知るがいい。

まーそれはともかく、日が暮れるまで三四時間らしいから出来るだけ袋に積めて帰ってきたいね。


この辺りの薬草は、大した値段にならないけど、需要はそれなりにあるらしいので、採取した物は状態に関わらず全部買い取りしてくれるそうだから、二人にちょいちょい頑張ってもらおう。


「無理しなくていいからね」


真一は、荷物をインベントリに投げとくつもりなんだろうけど、こうして抱えてると、荷物で谷間隠れるからちょうどいいんだぞ?


普段より、妙に優しい気がするのは、たぶん女体になってるせいだろう。


健?健はよくわからないけど何時も通りにダラダラしてるから好みじゃないか気にしてないな。


「じゃ、行き先確認な。西の道を西へ、常に三人で行動。不足の事態が起きたら我先で街へ逃げるでいいよな?」


「らじゃ」


「生贄は必要だよね」


「…あなた達、悪いとは言わないけど、もう少しなんとかならないかしら」


「「「むり」」」


「…………」


あ、受付のお姉さんが何か言いたそうな顔してる。


苦情は受付ません?


さて、草原から更に西に向かえば森と湖があるが、森がゴブリンの縄張りになっているので比較的安全なんだそうだ。


一般的な人にまで、魔法が普及するくらい危険な世界と、平和な日本を比べるのが悪いとは思うけども、定番のモンスターのゴブリンが安全かね?


最近の小説ではわりと危険くさい扱いのゴブリンが安全の基準になるとかおかしくねえかな?

「…攫われたりしてないとか?」


「見てみないとわかんないんだから気にすんな」


「ふひふ、ひゃひふぉー!」



渋い顔をしていたらしく、健に顎を掴まれおちょぼ口にされた。

“たけるやめろー”と抗議したつもりだったが間抜けな声が漏れただけ。


「…やっぱ無理かな」


「何がだよ?!」


手から解放されたオレは、健の足をゲシゲシと蹴手繰る。

指で輪っか作って何てもんと比較してくれてんのっ!?


「…真一、蹴られてんのに全然痛くなくて逆に不安になってきたんだけどよ?」


「影丞って、確か筋力ほとんど初期値のまま遊んでたからかもね」

「…真一、蹴られてんのに全然痛くなくて逆に不安になってきたんだけどよ?」


「影丞って、確か筋力ほとんど初期値のまま遊んでたからかもね」

「…遠距離の技能特化だっけ?」

「回復型だったし、なんか仙人だかのジャンプの滞空時間が伸びるだけのゴミスキル“軽気功”が舞空術だとか言いながらとって、防御育ててなかったんじゃなかったっけ」


「ゲームは遊びだったから仕方ないけど、影丞の“シヤド”だと一人じゃ戦えないよな」


なんか深刻な顔してるけど、おれがいたたまれないから後にしないか?


見た目プレイで遊んびたくて、遠距離支援特化にしたんだから後悔はないわ。



「キャラチェンジ出来ないんなら悩んでも仕方ないよ」


「確かに今更だからね」


「その通りだ」

「それより草刈り行こ?」

「ぴっかぴっか」


「ちゃんと“その娘”を守りなさいよ?気をつけてね」


「「「らじゃ」」」


受付さんに見送られ冒険者ギルドを後にする。娘(アバ体)の体はオレが守るさ。


しかし健さんや、その図体でピカチュウはむりあるからやめような?

そう言や、健ってガチャで出た着ぐるみ着て過ごしてばっかいたのに、なんでそんなに装備充実してんだろ。


「…いや、普段から着替えられるように持ち歩いてた感じだから、ぬいぐるみもインベントリの中に一応あるぞ」


「ボクも、影丞がいるから回復アイテムの持ち合わせはほとんどないし、インベントリは装備品と素材が少しあるだけかな」


まあ、二人にその機能があればるだけましだよ。

オレも、こんなんだけどリアルの体より頑丈みたいだし、三人とも何にもない状態だったらよかよっぽどいいよ。


「まぁ、もしオレの治癒能力が無くなってたら終わってるな」

他に何も出来ないんで。


「影丞のあれ便利でいいんだけどな」


「周囲の自動回復増強(常中)とか怪我しないとわかんないよね」


「とりあえず怪我はしない方向で?」


真一はともかく健は突撃バーサーカーだから切る一択。

防御も回避もしないでひたすら吶喊するから自動回復ないと早死にする。


だいたい三人ともゲーム内部のランキングじゃ平凡な下っ端プレイヤーだから、あんま期待できなぁい。



真一は、盾持ってるけど遊撃だしな。


このパーティーはいわば、ゼロ戦と哨戒ヘリと小型航空母艦(武装皆無)の特殊過ぎる部隊。

うん、なかなか出撃許可が下りない無敵艦隊みたいなもんだ。

―強すぎてな。


傍聴人の発言は棄却します。



―ポポタン(薬草)―


ギザギザの葉っぱに筒状の茎の上に黄色い花を咲かせる。

花が咲いたポポタンを根っこを含め一株丸ごと採取。


制限なし


薬草のヒントはコレだけしかないが、草原についたらチラホラそれらしい花が咲いていた。


綿毛に載せて種子を飛ばし、最近じゃ茎の汁からゴムが採取出来たと噂のタンポポ様ソックリだ。


「さっきこいだ場所にまた生えてる」


「こっちもだ」


「すげぇなポポタン」


見る見るうちに花開いていくと言う植生が謎のポポタンをオレ達は無造作に袋に詰めていく。

「これだけあれば、タンポポ珈琲も飲めるかな? 」


「砂糖ないぞ」


タンポポ珈琲


根っ子の部分をフライパンで色が変わるまで煎るって急須(笑)にお湯を注ぐだけでも出来るんだ。


「…急須とかあると思う?」


異世界だから日本のアレがあるとは思えないが…。


「ないだろ。急須はないだろある方がおかしい」


「まあ、急須はなくても、ティーポットとか湯沸かし(薬缶)くらいはあるんじゃない?」


「なかったら鍋でやればいいだろ」


「沢山生えてるから根っ子集めてインベントリに入れとくから煎るのは影丞に任せる」


「え、オレですか?」


「言い出しっぺがやらなくてどうする」


「ボク作った事ないから出来ない」


それもそうか。まぁ、一番大事なのは作業する場所がない事だけどね。


「作るのはいいけどよ、一応異世界なんだから、毒消しとか揃えてから試そうや?」


「薬草なんて呼ばれてるからどんな効力あるかわかんないよね」


「見た目おんなじだから大丈夫じゃないかなぁ?」


そんな警戒しなくても良くないですか?


「そんなんじゃ、野菜とかも警戒しなきゃならなくなるぞ」


「んじゃ影丞、川っぺりに生えてるドクダミ生でいけると思うんだな?」


健が指差した先に木陰があり、白い花を付けたドクダミが群生していた。


なんだっけ、花を付けた時期にドクダミ茶作るといいとかいってたな。


わりとドクダミの“おひたし”とか“炒め物”も存在していたはずだけども、一応火を通すくらいはした方が安全だと思うんだけど?


「…いや、生は止めた方が無難だと思う」


「そう思うだろ?」


とか言いながら健はドクダミを束で摘んできた。


「実は炒めたりしなくても、生でイケたりするんだなぁ!」


「「保身はどうした!?」」


そう言いながら、健はムッシャムッシャとドクダミ口に頬張りました。


「タネも仕掛けもございませーん」


飲み込んだ後、口を開けてオレ達に中身がない事を主張してきたが手品じゃなくて食べちゃっただけだからな?!


「真一、健大丈夫かな…」


「もし、健が死んだら二人で生きてくしかないよ」


健の以外過ぎた行動に真一ビックリしてるねぇ。


「大丈夫だ、味もクサミも最悪だけど極上のドクダミだ」


いや、風味じゃなくてクサミと言うくらいには不味いんだな?

大丈夫じゃないぞ。


「チマチマ摘まんでる分には食えるぜ?」


健にドクダミを渡された。


「…小腹はすいたけど生は」


背に腹は変えられぬとは言うけども生で当たったりしたら目も当てられない気がする。


「マジで不味いなコレ」


ドクダミを見つめてる間も健はムッシャムッシャ食べてる。


「苦臭い…」


真一も食べた。


残るはオレだけ…。


ドクダミは、ただひたすらに青臭いほうれん草。


美味くはないが、言うほど薬っぽくも不味くもない気がした。


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