サイモンと言う漢(!?)
本日二話目
サイモンと言う冒険者がいる。
若いときはギルドからも期待された男なのだが、チームを組んでも必ずと言っていいほどリーダー格とケンカし折り合いがつかないまま脱退を繰り返していた。
ソロ冒険者になってから、少しばかりズルい事を覚えたりしたが、こう見えて結婚もしている。30過ぎで嫁いで来たのはサイモンと似たような境遇にいたあぶれた女冒険者だった。互いに落ち目で行き場もないような二人で生活は豊かとはいえなかった。
今年で五歳になる子供が産まれ時には、二人で喜んだが嫁が子育てに掛かり切りになると、只でさえ少ない稼ぎが更に少なくなった。
なりふり構わず稼ぎを増やそうとする様を見て、浅ましい男だと言われ続けたが、構った事ではなかった。
新人いびりににしか見えない助言をしては小銭をせびり。
同様に少ない稼ぎに奔走する連中と付き合うようにる。
今年になって現れた、冒険者ですらない“ど素人三人”の姿を見て、バカでも数集まりゃどうにかなるんじゃねぇかと思い人集めに奔走する。
酒飲み仲間や、怪我の後遺症がある連中もいるが、そいつ等にもそれぞれの経験がある。
集めた人数は20人になると、落ち目の冒険者ばかりで、グループ登録に挑み、新人には嫌らしい罠などをかいくぐり、過去二番目の記録でダンジョンを踏破。
中堅冒険者の登竜門であるグループ“スリガゼル”のリーダーとなった。
40近くになって遅咲きながら、ようやく冒険者としての花道を進み始めた“ベテラン”冒険者だ。
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「よう、オメェら上手く稼げてっか?」
「ちーす」
「こんちは、スリガゼルさん」
相変わらず、ヨレヨレの鎧を着ている。しかし、全身汗塗れのながら服にも清潔感がありそこにかつての浅ましさは感じない。
「おいおい、二人だけか? お嬢はどうした?」
「馬車で倒れる」
「騎士の人が看てくれてるよ」
「オメェら、騎士様に仲間みさせてんのかよ」
「最初は一緒に作業してたんすけど、気分悪くなっちまったらしくて…」
「乗ってきた馬車に放り込んできたら、どうもそれ見られてたみたいです」
「…オメェら、エースケは女の子だろう。もう少しマシな対応してやれ、男の仲間にしたってもう少し気を使うぞ」
影丞の割とぞんざいな扱いに、サイモンが眉をしかめる。
「いくら、幼なじみだからったってな。こんな場所で休ませんじゃなくて、ギルドの馬車で先に街に戻してやりゃいいじゃねぇか。」
「「それだけはない」です」
サイモンの進言を二人はキッパリバッサリ切り捨てる。
「…………一応聞くがなんでだ?」
「あのまま馬車で移動させたら確実に影丞の奴は吐く」
「それに、一人だけで帰らせたら、途中で野盗か貴族か金持ちに攫われて生き別れそうだから無理です」
「…タケルはわかるが、シンイチのはなんでだ? ギルドの馬車だから流石にそりゃねぇと思うぞ」
「影丞は超kawaiiから野生のロリコンが目覚める」
「ん~、確かにお嬢はみたいな娘いたらいいと思うが、なんだそのロリコンってのは、意味わかんねぇぞ」
「サイモンさんなら大丈夫だけどね。今“か弱い”から、絶対ヤバいし近寄りたくないです!!」
「ますます分かんねーな。まぁいいや、お嬢はウチのカミさんらに様子みさせてやるからよ」
「おなしゃーす」
「多分騎士も今ヤバいんでお願いします」
「わかってんならシンイチは様子くらい見に行けよっ!?」
「今の影丞男じゃないし…」
「………………ますます、お前らの頭の中身がわからねぇ」
立ち去るサイモンの背中に、真一と健はドヤ顔で見送った。
使いどころが間違っていると思われそうだが、今の影丞に近寄るのは確実に危険なのだ。
なんと言うか、二人が近寄ると微妙に甘える感じがでてきてとてもヤバい。
影丞の影丞と言う中身を知るだけに、ギャップ萌えにならないが、もはや別人にしか見えなくなりそうな…。
「…オバサンなら大丈夫だよね」
「影丞子供と思われてるしわかんね」
「まぁ、早くすませて帰ろうや」
「影丞にしなだれかかられるよか、死体担いでた方がマシな気がする…」
「…ゆっくりやるか」
「そうしよう」
素材屋まさかのペースダウン。
血生臭いなか、ギルドから夕飯が配られたのだが、とうに限界をきたしていた影丞は、結局スリガゼルの家族馬車に乗せられ街へ帰って行った。
「「惰弱な…」」
見送る二人は、配給にかじりつきならそうつぶやいたが、飲み物がアルコール度の高い酒であったためにハイになり、下呂を吐きながらベテラン冒険者とギルド関係者に飲まされ続けた挙げ句、アッパラパーな状態で居残り組と夜通し騒ぎ続けたと言う。
はい、前作でかかれ無かった話の保管完了。