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髪を整え

髪を整え、ご飯も食べた。


さぁて、いまから大変だ。


何しろ何も出来ないんだからな。


大工仕事の手伝いは邪魔になるから、健達みたいに人足で雇ってもらえない。


部屋にいるだけで、真面目に役立たずです。


だって、器具も長家の押し入れに仕舞われちゃったから、ポポタン精製がやれないんだよね。

器具があったとしても、宿屋の中では流石にやれる気がしないから結局は同じなんだけどな。


でも、食堂で暇そうにしてると女将さんが気にしてくるから部屋に居るか出かけるかの二択。

そして、何かない限り外出禁止だって言われたよ。

普段頼りないのが悪いんだけど、一人で街に行ってもする事ないんだよな。


結局のところ、一人で部屋に籠もりきりになるしかないのか。

「…暇だ」


正直、三日もベッドでゴロゴロしてるだけたから流石に飽きてきた。


二人が、部屋の隅のデカい袋に、必要になりそうな物を色々詰め込んでくれたけど、正直釣り竿とタモ以外はほぼ食料品。




50メーターくらい行った所に、小舟サイズ貨物船が行き来してる運河みたいな川あるからあそこで釣りでもしてこようか…。


連れてもこの辺りのは、熱帯魚みたいのばっかりだから、キャッチ&リリースのスポーツフィッシングみたいになるだろうけどね。


「ちょっと、行ってみようかな?」


膝丈無地の作業スカートと、汚れたシャツに着替え、頭に麦わら帽子を被る。


「大将ー、ちょっと出掛けてきます」


「んぁ、出掛けるってエースケがか?


「そこの運河まで釣りに行ってみようかなと」


「あの水路にか?まぁ、船の邪魔しなけりゃ別に何もいわれねぇだろうけど1人だけか?」


「二人は仕事してるから声くらいかけるよ」


「けどよ。タケルにエースケは外出しようとしたら生き別れになりそうだから、絶対に止めてくれって言われてっからな…」

「信用ないな…」


「俺も、今から仕入れにアチコチ行かなきゃならねえから、エースケの見張はできねーしな」


「連れてって下さい」


「そうゆうのは、エースケが一緒だと邪魔になりそうだし無理だな」


「…そうですか」


大将、手加減なく一蹴。


「まぁ、あんま暇してるだけってのもあれだからな。肉の解体でも手伝うか?」


腹をさいてブヨブヨした内臓を取り出したら、アバラ骨が内側から見えるあれですか?


「…無理です。絶対むり」


「だろうな、部屋で大人しくしとけ」


「うぅ、もう今日は降りて来たくない」


「…ヨメにいくなら、覚えといて損はないんだかな」


「ウルサいです。キモイから部屋に帰ります」


「…………そうか、面倒がなくていいが気が向いたら降りてこいよ?」


「絶対来ません…」


キモイの体験するくらいなら暇な方がマシだから、釣り竿を引きずりながらとぼとぼと部屋に戻る。


「…いんこんぷりーと、作戦失敗」


部屋に戻り、今度は今ある荷物をベッドに広げてみる。


そこには、新たな発見があるかも知れない。



「ああそうね。何も出来ないよね」


わかっていたさそんな事。


ーはぁ。


手書きのトランプを作ってくれてあるけど、独りじゃ遊べないし、独り二役でトランプしても寂し過ぎる…。



もしかしたら、オレはウサギなのかも知れない…。


布と糸針のセットあるし、裁縫でもやってみる?



一応授業で使い方くらい習ったけど玉結びだかみたいな、針にぐるぐる糸巻いて止めるアレが苦手ですぐ解れちゃうんだよな…。


どうせ暇だし、ちょっとやってみるか。


「…痛っ?!」


取り出す段階で針先が指に刺さった。


どないしよ。


とりあえず、自作の軟膏を塗っておいたら直ぐに血が止まった。


うん、オレの作ったヤツでもちゃんと効果はあるみたいだね。

日本なら、ティッシュ巻いてりゃ普通に治るレベルだからわかんねーけどな。


でも、普通の針に肌が負けるとなると、刃物だと普通に切られそうだ。


やっぱ、オレのアバ体は見た目だけか…。


ちょっとショック。

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