スルメ
塩対応。
さり気なくを装って死角から手を出そうとすると、無言で対応されたりと、最近健の対応が冷たい気がする。
やっぱり日本にいた頃みたいには三人でバカをする訳には行かないんだろうか?
ない。それはない。なんせ考え事がほぼ顔にでる奴だから、何の気なしに打ち払うのはおかしいのだ。
「どうした、釣り行かないのか?」
しかも、気付いてない風に声をかけてくる辺りがなんとも…不安。
お前、カウンター技日常生活にも発動してませんかね。
なんにしても、健に対して不意打ち先制は無意味だ。
…宣言してから攻撃しよう。
「行くよ。釣り竿頂戴」
「あい。何かいきなり不機嫌に…」
「ああうん、大丈夫。」
オレが、手を出そうとしたのが悪いから自業自得だとわかってる。
もう、気安く肩も叩けんな。
投げ飛ばされかねんし…。
▼数時間割愛▼
…次は投網作って来ようと思う。
あ、魚は十五センチくらいのハヤみたいのが七匹釣れた。ただ見える位置に大量に居たから投網があれば沢山取れると思っただけ。
健にワタを抜かせて枝に刺してる所です。
因みに、真一の柵はとやらはなんだかスケルトンハウスの周囲を丸太が積まれていた。
縦糸と横糸の横糸だけしかないから組んでないのね。
本数積み上げてどうにかしたかったらしいけど三段位積むのが精一杯だったみたい。
「…あ゛あ゛っ!白身うめえ゛ぇっ!」
「をっ!?」
ハヤに頭からかじり付いた健が咆哮をあげて思わず持ち上げていた魚を火の中に取り落としてしまった。
塩振るって焼いただけで大したことしてねえから叫ぶほどの勢いなんかつかねぇぞ。
てか、串が燃える前に焚き火から魚を救出せねば。
「…ああ、たしかに普通で旨いよね」
チマチマと食べていた真一は身を食べては炙るを繰り返している。
イカ炙りながら食べてんじゃないんだから…。
「…そういや、海も近い筈なのにスルメとか見たことないね」
「異世界てか、外国だから無いんじゃないか?」
「…でびるふいーしゅ」
外国は確かにあんまイカタコの料理無いらしいけど、干物ないんだろかね。
真一の呟きは無視。
「いや、ありゃタコだろ。ジャーキーとか干し肉あるから食べないだけじゃね?」
「あんなの、硬いだけで食いではないからね…」
「堅いけど、噛めば噛むほど味がでるぞ」
同じサイズのジャーキーより長時間持ちますがな。
「冒険者って今みたいに野営するときも魔物に襲われるから短時間で食い終わりたいだろ。
スルメが口に入ったまま戦闘するよかジャーキーみたいに噛み砕いて飲み込めた方が楽だろ」
骨を気にせずバリバリと食べる健には関係ない話だろうが、ジャーキーも結構堅いから、クッキーみたいに気安く噛み砕けるとは思えねーんだけども?
「でも、魔物に奇襲されたらそこで食べるの止めんじゃねえの?」
「食ってたもん途中でまた袋に戻す訳にいかないだろ」
そこはポケットとか別の袋に入れて対処しりゃいいじゃん。
スルメなんて、炙ればやらかい状態で食べれんだぞ?
駄菓子の甘辛いゲソですら一本じゃ行けないのに、スルメを一枚丸さらのまま食べる奴はなかなかいないと思うぞ。
「…今はジャーキーしかないんだからワガママいわないっ!」
何故にか、健が俺の頭にズビシと手刀を一発。
手加減されてて痛くはないが、…オレ、スルメ食べたいとかいってねぇのに何故叩かれたし。