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西の森2

ユッサユッサと揺られながらいると眠くなってくる。

イモ虫の皮は頑丈で、安心して収まってられるから楽でいい。

抱えられても、わき腹が痛くならないし、これで鎧作ったらダウンジャケットみたいな、いいの出来るんじゃないのかな?


『影丞、湖見えたからそろそろ出てきなよ』


『ボールにして遊ぶぞー?』



「…中身グチャグチャになるからやめてー」


健ならやりかねないので、抱えられたままのイモ虫の口から顔だけ出す。


「よく影丞はその中に入れたよね」


「押し込んだの真一だぞ?」


ナマモノの皮によく収まったとか言いたいんだろうけど、真一と健の二人で押し込んだくせに今更何を言うか。


とにかく、本当に運ばれただけで目の前に湖が広がっている。

楽ができた。


その横で健が枝に布を結んで旗らしき物を掲げている。


「ここを、素材屋の野営訓練所にしよう」


「…まぁいいけど」


頭に布巻いたり、ちょっとみない間に健が濱□さんみたいな事になってますよ?


「訓練ったってなにするのさ」

キャンプすらしたことないし、マジわかんないんだけど?



「食料確保と家を作るしかないだろ」


とにかく、本当に運ばれただけで目の前に湖が広がっている。

楽ができた。


その横で健が枝に布を結んで旗らしき物を掲げている。


「ここを、素材屋の野営訓練所にしよう」


「…まぁいいけど」


頭に布巻いたり、ちょっとみない間に健が濱□さんみたいな事になってますよ?


「訓練ったってなにするのさ」

キャンプすらしたことないし、マジわかんないんだけど?


「食料確保は後にして、枝とかで家を作る」


なるほど、無人島ハウスですね。わかります。


「それやるなら、僕はバリケード作るよ。柵あれば安心だし」


「わかった任せたぞ」


「うん、頑張るよ」


「影丞は枝とか枯れ木集めてくれ」


「らじゃ、けどバラけない方がいいんじゃ…」


「大丈夫だって、それじゃ行動開始」


「おー」


「…マジか。おー」


こうゆう時の基本はバラけない事だと思いつつもオレは枝集める。


―二人は森に消えました。


うん、想定内ではあれけれどこれは酷い、警戒心もなく普通にキャンプしにきただけだよ。


日本だって渓流釣りでクマに襲われたりするんだから、警戒的な意味でちったあ周りに気を使おうよ。


ドサン、バリバリバリ


真一が入ってた辺りから倒木だったらしき木が森の中からいくつも転がってくる。


まず下の安全なんか考えてませんな。


下敷きになるのだけはカンベンだから、離れましょう離れましょう。


「森の中、倒木だらけでらくでいね」


「さよか…」


材料集めは楽なんでしょうけど、斜面が倒木だらけで自然に優しくない。


「…んお、結構かさばる」


続いて森から出てきた健は、シダの葉とか、大きな葉っぱのついた枝を集めて来たみたいだ。

「真一、木の細いとこだけ遣わせてもらうぞ」


「いいよ、まだ集めてくるし」

「さんきゅ」


言うが早いか、手近な木を自分の身長位でへし折り、三本一口で先端をワザと余して束ねていく。

稲引っ掛ける竹組みみたいなものを作ったら、更に細い木を吟味して乗せ、拾ってきた草木を床にバラまいて満足そうに頷いた。


「ここを統合本部としよう」


床と梁はあるけど、肝心の屋根がありません。


「…隊長屋根がありません!」

「馬鹿者、野営に屋根があったら周りが見えないだろうが!」


怒鳴られた。


いや、確かに遮蔽物作るのは上手くないけど、それじゃわざわざテントみたいに作った意味ないじゃん。


「壁とかに使う草は夜までに集めればいいから大丈夫だ」


そういいながら健は、オレが集めた枝を手頃な長さにバキバキと割っていく。


…力あるっていいね。


今のオレって、摘まむ程度の太さの枝はまだ折れるんだけど、握る太さになると曲がりもしないんだもん。


「そこらの奴も囲いの中に拾っておくか」


ちょっと重くてオレが拾わずにいた倒木を骨だけのスケルトンハウス付近に引っ張ってくる。

うん、あっと言う間にオレより容量多くなった。


「小枝に火がついたら、これら砕きながらくべてきゃ一晩持つかな?」


「どうだろ。もっと集めといた方がいいかな?」


「「……………」」


質問に質問で返し、二人とも沈黙



「わかった、影丞は夕飯の支度してくんねぇ?」



「え、夕飯には早過ぎるだろ。インベントリの中のパンでいいじゃん?」


オレ魚釣りしたいけど、木の枝釣り竿でつれるような魚いんのかな?


「野営にパンとか…」


なんか納得してないみたいだけど、別にパン食べるくらいいいじゃんな?制限だらけの無人島生活じゃないんだから有るもの食べたらいいじゃん?


そんなんこだわってたらしてたら、嵐の中東京のマルムシ食わなきゃならなくなる展開になるだけだぞ。


異世界の虫とか嫌や。

ちな、爆散したイモ虫は欠片も口にしないで済んだ。

知らない間に確保されてるかも知れないけど、健が口にしなくてよかったと安堵してるオレが居る。


「わかった。ちょっと食べて我慢する」


風にばたつく髪を手で抑えている間に、健は食パン(一斤)を食べる事にしたようだ。


手でちぎるとかではなく、握りつぶして恵方巻きみたいに口にくわえた。


あれだ、北海道バター系の蒸しパン潰すとチーズケーキみたいな感じになるみたいな?


「ふひょひょははーほひひ」


「…何言ってるかわかんねーけど、のど詰まらせたら人工呼吸してやるからよ?」


「あぁ、バターつけたほうがうまいかなと思っただけだから」

「普通に食べないと、ポッキーゲームみたいに下から行くぞ」


「…影丞って、前はこんなんじゃなかったんだけどなぁ」


「こんなん言われても、嫌がるからやめるからいいじゃん」


セクハラ予告で、さっきみたいなおかしな行動は大概とまるし?


「でも、山ん中でパンとかあんま美味くないな…」


「今から支度しても、なにもおかずが食べれません」


キャンプ感覚の野営とやらで、赤米と麦茶を鍋で炊いてもおかずない雑炊とか辛いだけだぞ。何にも手に入れてないんだから、あるもので済ますしかなかった事くらいわかるだろうに…。


「食べたら釣りやるよ?」


真一は真面目に木材集めてるみたいだし、こっちも真面目にやらないと真一が怒るぞ。


山から出てきた真一がなんか口に咥えてるな。


「…真一も腹減ったみたいだな」


咥えてるのは、顔くらいあるロシアパンなんだが、…双子かコイツら?


なんでもいいけど、座って落ち着いて食べるとかでもいいんじゃないか?


「俺らも、異世界に来たらしく、冒険者らしくなってきた気がするよな…」


今のを踏まえてどの辺りがですか。


「行儀が悪くなっただけでしょ?」


野営地の構築も何一つ果たしてませんぞ?

屋根無いから認めない。


「テントくらい買わなかったのか?」


「いや、冒険者は野営してもテントはあんま使わないってきいたから買わなかったんだよ」


右に倣えはいいけど、野営するなら過剰に支度するのが日本人じゃありませんかね?


「…キャンプなら必要だと思うけどね」


「違う。これはキャンプじゃない野営訓練だ」



冒険者にやってる事見られたら、普通にお遊びでやってるようにしか見られないと思うぞ?


手には入る物を、わざわざ持たないで野営するんだから遊び以外の何者でもないさ。


「二泊もしない野営訓練なら先に物質を確保してからするもんでしょ。そこで米炊けとお願いした時点で、捕まえた魚焼くくらいしかする事ないのにどうしろと言うのさ」


「う」


バツが悪そうにしてるけど、別にパンが喉に詰まって苦しい訳じゃないよな?


吸い取る系人工呼吸とか難しそうだしカンベンな。


「…山だからか、なんか冷えるな」


二の腕をさすってるけど、暖かいくらいの陽気で何言ってるんだろ。


「風邪引くなよ」


「風邪じゃないから大丈夫と思う」


熱の確認するのにファンタジーならオデコとオデコが基本だよな。


オレの身長じゃ届かないから、やっても額に手伸ばすくらいか。


「どれどれ」


「………」


横から手を伸ばしたら、無言で払いのけられた。


―だめか。

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