食べ物事情?
健が帰ってきてから、十分程度でフラスコの中の水分がだいたいとんだので、アルコールランプに蓋をして火を消す。
そうして、フラスコの中に残ったポポタンをすり潰し何枚も布を重ねた物で包んでビーカーの上に配置。これで簡単な濾過装置になり一晩放置すれば中に黄緑色の液体だけが残る。
中の液体を油と混ぜれば、混ざり物の少ない軟膏が出来る。すり潰すだけの奴より、作る時間はかかるけどちょっと買取の値段がいい。
ギルドが、ポポタンを格安で販売してくれたから、こうして内職で稼ぐ。
ポポタンの部品分けの作業もあるみたいだけど、そっちはチンピラみたなオッサン達並びに、事務員さんらしき人らも頑張ってた。
オレらのせいだが気にしたら負けだ。
とにかく、ポポタンの作業はここで終了。
ヤクルトサイズの瓶に入ったポポタン水が銀貨五枚は堅い。
ビーカーサイズの瓶に数日前から溜めてきた軟膏も一杯になるので更に銀貨五枚。
擦り潰して裏漉しした物だと銀貨一枚。
手間かかるけど、長い目でみたら手間かけた物を作って、たまに混ぜて水増しとく手もいつか使えるかも知れない。
…言い訳が思いつかないし、バレたらヤバいから、それはあくまで最後の手段にしよう。
「それで一段落か?」
「一応ねー」
押上るタイプの木戸のつっかえ棒を外して内側にある取っ手に錘を付ける。
鍵はなくコレだけで終わり。見ての通り安全面は最悪です。
玄関には南京錠あるんだけど他がガバガバで、一人残された時寝てると誰か入って来ないか不安になる位には環境がよろしくない。
番犬二匹が度々夜に遊びに行ってしまうので、近くにセ〇ムあったらマジ契約したいレベルです。
「毎度の事ながら、もっとマシな防犯対策しないとやばいかな?」
「あー、貴重品はインベントリだからいいんだけど、一人で影丞が寝てるほうがおっかないんだよな」
「そう思うなら、ローテ組んだりすりゃいいのに」
「…お前と二人きりなのもおっかないんだよ」
「…………なにゆえ」
「寝てる姿がまんま貞…」
「〇治ーーっ!」
子と言われる前に王監督の名前を叫ぶ。
止めれマズでやめてくれ。
オレの黒髪が長いからって、アレと同列にするのは止めてくれ。
「たまに風で巻きついてくるし、目を開けたら顔が髪の毛に埋もれててチビりそうだったわ」
「…寝相悪くてスイマセン」
寝起きに健や真一の顔が真横にあるとかたまにあるからな…。物入れの扉が観音開きで、中にいる時は基本的に開けっぱにしてあのもあるだろうけど、コッチに来てからやたら寝相が悪い。
まぁ、昔から寝て起きたら反対向きに寝てて枕が足元にあったりはしたけど、目撃者の証言によると足を抱えた状態でコロコロと移動して来て健や真一の頭などでせき止めてられるのだが、その際膝が当たるらし。
「とりあえず、今日は暇つぶしを兼ねて下見をしに行ってみようと思うんだわ」
意外に慎重だけど暇つぶしでやることか?
「キャンp…野営訓練とか、やれそうなら練習しとこうかと思ってさ」
キャンプから野営訓練と言い換えると真面目に聞こえない☆
結局遊び重視なんだな。
「…確かに、他より安全とは言いましたけどね」
「ちなみに、既に焼き肉の支度もしてあります。キリ☆」
健さん、にやけた顔でキリ☆とかないわ…。
キリ要素無しだもんな。
モン〇ンみたいに戦う仲間の隣で一人焼き肉みたいな状況やりたいの?ハラミ晒して死にたいの?
「今日は湖まで行くだけだけど、魚がいたら次ん時は釣り道具も拾ってこうぜ?」
「釣りイイネ☆」
異世界来る日に魚釣りをやる予定だったから釣りに関しては依存はない。
遊び方が限られてるし、気晴らしに丁度いいかも。
ちな、この場合の拾ってくは落ちてる物拾うんじゃなくて買ってくの意味ね。
「…湖の魚が川魚と同じなら、釣りはリリース専用な?」
「…ああ、あの熱帯魚か」
フナくらいなら焼いて食べてやろうかと考えて草原付近で捕まえた魚は、まだらな紫でした。
串に刺して焼いてみたら、したたる油の色はどぎつい紫。
焼けた石の上に落ちたソレは魔女の鍋の中身のようにゴポゴポと粘着質な音を立てて煮えたぎり、やがてタールのような黒い固まりを残し蒸発していった。
あんなの垂れるようじゃ、アブラソコムツとかみたいに腹から変なん油出てきそう。
アブラソコムツというのは別名バラムツとも呼ばれてる魚で、全身がトロより脂分が多く、味は旨いらしい。
だが、食べたとしても一口二口が限界らしい。それ以上食べると、尻から脂の固まりが出でてくる羽目になるとか。
アブラソコムツの脂分は、ワセリンとかグリセリンみたいな人間の体内で分解出来ない油分で分解出来なかったソレが、まんま出てくるんだとさ。
毒ではないらしいけど、食用とは認められていない魚らしく、以前中国がアブラソコムツをシャケの切り身とかに混ぜて販売したとかニュースにもなっていた。
が、ムニエルでもなんでもフライパンに油を使わなくていい位の脂分は、一部で個人的に食べてる人がネットにアップしてたりするから、愛好者は皆無ではないようだ。
でも、そんな魚は無理して食べなくてもいいと純粋に思う。
鯖でいいじゃん、クロマグロじゃなくて、トンボマグロでいいじゃん?
「あと、ゴブリンと交流できないかなとか考えてたりする」
「ラノベか」
ゴブリンとか魔物と交流するラノベ多いけど、あれらみたいな技能があるだろうか。
―ナイン!(有り得ない)
門番をスルーした男にそれが出来るなら引きこもりも引きこまらないで学校行くわ。
「交流は無理だと思うよ?」
「いや、物々交換とかから地道に始めれば行けなくね?」
地道も何も一体全体、非知的生命体何と交換する気だよ。
ここのゴブリンって、原住民みたいな生き物じゃなくて、群で行動して“ギャギャギャ”しか言わない冬眠する原初の生物だって話だったぞ。
ある意味猿より凶暴で、ドラゴンにすら襲いかかり戦闘民族真っ青な生き方してるから、危険な生き物がいない森らしいんだぞ。
その元凶のゴブリンと交流だ?原始的すぎてコミュニケーションとか無理だろ。
「受付さんからも無闇に近付かないように言われてましたよね?」
「…不慮の事態で何とか」
「無理だと思う」
健の蛮族装備も相俟って、不慮と言うより不良が、チンピラに巻き込まれるかの如く、人の生活圏から離れて野生化していきそうな気配あり。
健と手を繋いだら絶対に離さない方がいいのだろうか。
野生化してゴブリンと番になるフラグとかないと思うけど、最近のラノベも物によっちゃ、種族関係なく繁殖行動起こすから安心出来ないわ。
いま日本じゃないからなぁ…。
実際にバラムツは食べてはいけない魚に指定されてるらしいです。
でも、バラムツ食べたら脂分のおかげで便秘知らずになったりするんじゃないかと思ってしまったりする。