趣味と夢
オレは、生き物紀行とか好きでよく見てて、番組見てると凄くドキドキする
アマゾンの危険生物とか見て、自分ならどうするか考えて助からないと絶望感を味わう事もしばしば。
街の小川に魚がいると何となく嬉しいし、釣りで食べれるのが釣れなくても、海の大きめの魚が港の中で跳ねるのを見れればそれはそれでいい。
大自然は、テレビの中だから美しいんだと思う。
サバンナの真ん中に立つ勇気もアマゾンに降りる勇気もいらない。
オレは、テレビの向こうの傍観者でいたかった。
それはともかく、近所に結構な数のザリガニがいる。
地理に疎いのは致命的だから、とりあえず一人宿屋の周りを散策していたら、側溝とかに小魚やザリガニが居るのがわかった。
川の水は洗濯とかに使われてるみたいだけども、洗剤はあまり使用されないらしく水が綺麗なのかも知れない。
飲む気はしないが、フナとかハヤみたいのが泳いでるから、日本の都市部より綺麗なんだろね。
ピラニアじゃないと思うけど、浸けてると集団で噛みついてくるのがいるのでやたら入る気はしない。
ザリガニ捕まえようとしてたら、ピンポイントで足の瘡蓋取られて痛かったし、もう水の中に入ろうとは思わない。
街中で魚に襲われるとかシャレにならん。
それにしても、異世界で捕食される側のオレみたいのが、生きて日本の土を踏む日が来るのだろうか?
―せめて、後悔しない生き方をしたい。
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コポコポコポコポ…。
試験管の中で、たぎったポポタンが水蒸気がビーカーに集まって行く。
ホントに理科の実験みたい。
確か、香油とか香水って似たような公定で作られてた気がするからなんか作れないか試してみよう。
化粧とかやる必要はないと思うけど、椿の種から作る椿油とかも作ってみたい。
やってみたい事は割とあるから、暫く試験管に付きっ切りになりそう。
「おーい、影丞ちっと出かけねぇか?」
「今火を使ってるから後で」
「んな、付きっ切りにならなくてもいいと思うんだけどなぁ」
「仕方ないじゃん、ポポタン精製しないと買取してくんないし」
唯一の収入源だけど、未だに倉庫が空かないから買取してくんないんだよ。後は、ギルドの作業所でポポタンの部位仕分けの作業しかやれそうもないもの。
「…それよか、俺ら冒険とかしてみたんだけど」
「だーら、それこそオレが行ける訳ないじゃん」
立派な体格の健達は、数日前から森にちょくちょく出入りできるようになった。
初日だけオレも行ったが、藪に埋もれるは崖は飛び越せないわで何も遭遇しないわ、翌日には筋肉痛で動けなくなった。
ザ☆足手纏い。
故に、部屋にこもってポポタン水の精製に真剣に取り組む事にしたのだ。
二人は朝から出かけて、散策レベルの冒険をしつつ薪拾い。
健と真一も精製くらい出来るだろうが、本格的なポーション作りをするには、今の機材ではいくつか足りない機材があるし、知識もない。
レシピを買うにも、専門技師の免許がいるので試験をパスしないと買う事も出来ない。
ポポタン水だけだと、錬金セットを増やしてもさほどの実入りはないからオレ担当となっている。
宿屋にトイレ借りに行く以外では自宅警備を慣行しておりますだ。
なにしろ、護身用の鉄の剣が意外に重くて振り回されるわで立派な足枷になってくれると来たら、行きたくなくなったのも理解して貰えるのではないだろうか?
「それに、剣の練習くらいしてから冒険ようよ」
「…なんか、そおゆうのめんどくさいじゃん、ゲーム仕様なら大概の敵に勝てたし」
ゲーム感覚コスプレ冒険者がここにいます。
冒険したいが鍛えたい訳ではない。
ボールを蹴り合うのは好きだが、練習してまでサッカーをしたい訳じゃない公園の子供用や、仕事帰りにバッティングセンターで打ちまくるが、野球の試合はあまりみないオッサンみたいな?
「…冒険してその程度の気持ちで魔物を倒せるとでも?」
「……………まだ冒険者じゃないし」
顔をそむけて言い訳をする健だけど酷いなコイツ。
「危ないのはヤダけど、なんたら探検隊みたいな事したいし」
あれだ、初代ラ〇ダー筆頭の秘境探検隊。
昔、自分らが通れる排水溝やら無理やり探検したことある。
水たまりやらしかなかったが、その続きをしたいだけか?
「…そんで焚き火しながら、買ってきた保存食とか食べたい」
「キャンプしたいだけかお前は…」
「ぴか!」
いやいや、“わかってくれたか!?”的な感じで目を輝かせるな。
「西の草原の先なら、行ってもたいした事無いと思うんだ」
「…そこ、ゴブリンの縄張りだよ?」
異世界勇者物語なら、そんな依頼は洩れなく苗床フラグなんだけど?
「大丈夫だって。この辺りのゴブリンは一角獣みたいなもんらしいから影丞なら逆に乗せてくれるかも…」
「激しくいらねぇっ!!」
ユニコーンはヲトメしか背に乗せんでそれ以外は串刺しにするとか割と残虐な生き物だぞ。
それ以前に、ゴブリン“乗れよ”なんてやられたら困るしかないわ。
元気に歩けるのに、自分よりチッチャい生き物の背中に跨がる。それどんな罰ゲーム?
正月にやってきた、中学生の従姉妹にいいとこ見せたくて張り切りすぎる幼稚園児♂みたいな感じだぞ。
マジ乗ったら潰れちゃうから乗るに乗れない乗りたくないでも園児はやる気満々。
“いざ!いざ!いい~ざ~!のほぉ~るぅれぇ~~!?”
体重かけて乗ったら泣かれまますから手加減しようぜ!
「行くのはいいけど、万が一の時は本当にちゃんと守ってくれよ?」
初日の街へ帰る時もそうだったけど、足遅いし体力無いから、二人が先に逃げ出したら置いてけぼり確実なんだから、マジで頼む。
「…わかったけど、なんかいまのって」
守れと言ったら歯切れ悪くなったな。
「なんだよ」
「影丞が女の子みたいに見えた」
「喧しい!」
ガシャン・バリン
「ビーカー投げるほど怒るかよ!?」
空のビーカーを反射的に投げて、健がはたき落として迎撃。
ビーカー散乱。
「「……………」」
「ほら見ろ割れたじゃないか?!」
「俺のせいかよ!?」
健が女みたいとかバカな事言うからだろ。
「オレは男だー?じゃないけど、襲う気も襲われる気もないならそうゆう事言うなとっ!!」
ガンガンと机を叩きながらモウ抗議。
「影丞が扱いにくいっ!」
健が嘆くが、仕方なかろうTSとは元来そうゆう物だ。
扱いやすいと、エロ漫画みたいに半日も経たずにヤられちゃうんだぞバカやろう。
そしたら、自叙伝バカ売れもの映画化やT〇S系列のアニメ化の夢は無くなるぞ!
無理だろ…




