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2/86

prologue

どくだみ再編集して投稿します

桜も散り新緑が芽吹き始めた桜並木を走る三台の自転車。

ジェット機こそないものの時期が来れば、航空ショーで賑やかになる日本中部地方の小さな航空自衛隊の滑走路脇の道路を彼らは蛇行するようにダラダラと進んでいく。

自転車をこぐ三人の、一際小さい少年が物語の主人公である。



「じゃ、いつもと同じで負けた奴がジュース奢りな?」


「異議なし!」



今時珍しい五分刈り頭の草薙健の言葉に、メガネをした少年が呆れたように口を挟む。

ジュースを賭けてのチャリンコレースをするようだ。



「ボクはいいけど、健もあれだけど影丞も懲りないよね」


「オレだって、そんなに差はないだろっ!」


高校一年らしく、短く切られた髪とまだ幼さの残る顔立ちをした日ノ下影丞は自慢のチャリを指差した。


T形のハンドルには捻るタイプだが六速ギヤがついていた。


対して健と真一はU字ハンドルに、軽・普・速の三速ギヤありきたりな普通の自転車だ。


実際には対した違いはないのだが六速ギヤと言う響きとその性能を影丞は疑っていない。


小学一年より幼い頃から共に育った所謂幼なじみであるが、身長が150そこそこしかない影丞は、170近い健と真一に比べ一つ二つ学年が違うように見られる事もある。


なりは小さいが闘争心と負けん気だけは強い影丞の気質はよく知っている。


多少チャリが早く走ろうと、体格が女子並の影丞になら、筋力の地力の違いで余裕に勝てると確信している二人は口には出さず思うのだ。


―今日もゴチになりやす。



信号が青になり、三人は同時にペダルを“踏み抜いた”。


-ズダン。


力任せそんな言葉が似合う足音とが一つ。


小さな影はバランスを崩し面白い姿を曝しながら草むらの中に転がって行った。


「いったったたた…」


ムクリと身を起こしたその姿、長い黒髪は枯れ草と土ぼこりにまみれ、着ていた和服“弓道着”も枯れ草だらけになっていた。


「うぶぇ、チャリ壊れた~?」


這いずりながらワダチしかない舗装のされていない道に戻った“影丞”は辺りを見回し乗っていたはずのチャリンコを探して右往左往し始めた。


「…なにこれ意味わかんねぇ」


親に対するチャリンコを無くした言い訳も妙案が浮かぶことなくへたり込む。

テレビで葦とか呼ばれていたような影丞の背丈を軽く越える草に視界を塞がれチャリは何処にも見当たらなかった。


そもそも、影丞の行動範囲にこんな景色があった覚えはない。


河原に行けば別ではあるけど、ススキだってこれほで視界を塞ぎはしないだろう。

足元は確保出来ないし、こうした草が鬱蒼と茂った場所に潜む、マムシとかヤマカガシみたいな蛇がこわいからまず影丞は行こうとはしない性格だ。


友人達もそのはずで、体験したことがない事態に、なにゆえにか正座をしながらキョロキョロと周りをせわしなく見渡す。


―いや立とうぜ?


とは口が裂けても伝わらないが、とにかく影丞でしかない見事な残念美少女がこの世界に誕生した。


影丞にもどこか見覚えのある青年二人が、その様子を見て何か安心したふうに道の先で佇んでいた。


―しかし。


二人の姿を見た影丞は、有り得ない姿にピタリと動きを止めて後ずさる。


そう、影丞の幼なじみと断定するには二人は背が高く何故にか蛮族鎧と騎士鎧を着ていたからだ。


自衛隊の近くでありながら、かなり本格的なコスプレをした大人が堂々と佇んでいたのだから影丞としては今すぐに逃げ出したかった。


「あ~、多分逃げなくても大丈夫だから―」


「多分って、真一はどこっ!?」


足が速いとは言い難い影丞からしたら、走って逃げ切れる相手ではなさそうだとジリジリと距離を開けながら辺りを伺う。

自らは草むらに潜んでおきながら多分大丈夫とは他人ごとにも程があると憤慨しながら二人の姿を探しているわけだ。


「やっぱ影丞だったか」


「うん、そうみたいだけど影丞だけ時間かかったね」


「俺が気付いた時は二人ともああだったんだぞ?」


「わかってるって、とりあえず三人無事揃ったから良かったじゃん」


「た、健?」


如何にも怪しい二人から聞こえてくる聞き慣れた声に恐る恐る声をかける。


「ああうん、だから俺らだから」


「ボクだから大丈夫だよっていったの」


蛮族と騎士が身振り手振りを繰り返し影丞の注意を自分たちに向ける。


「俺が俺で、こっちは真一だからそんな警戒すんなよ」


「見た目かわっちゃったけど、大丈夫だよ」


蛮族と騎士が明るく話しているが、ほぼ他人になり果てた友人がいた。


いわゆる幼なじみ達は立派な体格の大人にしか見えず、堂々とモ〇ハン並みのコスプレで道をに佇んでいるのだ。


「お前ら大丈夫か?」


日本でもコスプレ文化なるものはあるが閉鎖された限定的な場所でしか普通はやらない。

この二人が過去にコスプレをしていた事はなく、影丞はまず正直二人の正気を疑ってかかった。


―正直はっちゃけているとしか


「そりゃお互い様だ自分をよく見ろ」

「変化が一番スゴいのいたから何が起きてるか理解できたし」


そう言われて影丞は胸に手を当てると、やたら深い谷間が覗いていて、フワフワポヨポヨと弾む胸を押さえ影丞が虚しそうに呟いた。


「…これが胸部損傷ならもう死ぬしかないよ」


これが胸部骨折が理由で腫れ上がっていたなら、もう死んでいてもおかしくない。


「…いや、普通におっぱいだろ」


「影丞は目元くらいしか面影ないからね」


「チャリンコで、事故ったから自力でエアバッグ発生させたとか?」


身体強打でエアバッグ発動。


実際、影丞には全体的な筋肉に締まりがないような感覚がある。

頼りないと言うか、筋肉に力を入れても力が入ってないような感じ。


「おい大丈夫かオレの筋肉」


腕まくりをして、二の腕をバシバシ叩くとプルプルとゼリーのように震える。


「…ヤバい助けて、ぜんっぜん力はいらない」


絶望的な柔らかさに不安を覚え二人に飛びつく


「その手にはのらないぜ」


「ほーら、取ってこい!」


健にかわされ、真一になぜか投げられた。


―オレが!



ひとしきり騒いで冷静になった所で再び歩き出す。


「大丈夫、ゲームの姿絵のまんまだから全然大丈夫」


確かに見覚えがある服を着ているが、それとこれは別問題で大丈夫の範囲には収まらない。


「もしかして触ったりした?」

影丞は二人を睨みつける。


「いや、触るのは無理だった」健がワキワキと指をうごかしたけど、無理だったって事は触ろうとはしたんだ?


まあ、触診が基本なのは否定しないけど。


そう考えながらトトトトと、逞しく見える二人の背中を追いかける。

もともと身長差はあったけど、アバターになってしまったらしいオレと二人との歩幅の違いが顕著に現れている。原理は、よくわからないが今時ありがたくない異世界転移をチャリンコでしてしまったみたいだ。


「のど乾いたんだけど、健の持ち物に飲み物ある?」


「とりあえず自販機なんかないから水飲んどけ」


「ありがとう」


身の丈六尺は在るだろう青年となった健から水筒を受け取り口をつける。

この水筒も、魔物か何かの胃袋から作られてる筈だが、どんな物からとれたかまでは忘れてしまった。


「…水だね」


「多分、ゲームん中で補充しといた蒸留水だから大丈夫だ」


「そか、素材か」


ただ、オレにはゲームみたいな便利機能はなく、健と真一には辛うじてインベントリだけあるらしい。


インベントリ拡張もしなかったし、ドロップ対策に所持品少なくしてたからないのだろうか…。


「影丞って、わりと平気そうだな」


「流石に性転換は予定してなかったけど、我が娘みたいだし」「我が娘はともかく、コレがマジ影丞なのが信じらんねぇんだけどさ」


健の指さすそれを、可能な限り巨乳にしなかったのが悔やまれますが十分な重さを感じている。


「…なんとかなるんじゃないかな?」


「いや、そこ以外にしても色々変わり過ぎてるからな?」

髪は長いし背も縮んだし、ウエストくびれて肌白くなったくらいなら“外観がほぼ別人”だからまあ耐えられるんじゃないかな。


「怪我して腫れ上がってたら痛くて騒いだろうけど、触っても何ともないし…」


怪我で腫れたとかでここまで育つなら、デートの前後に胸骨全損で病院に運び込まれる女の子増えるだろうな。


「元の顔で女体化してたら男らし過ぎて耐えられなかったぜ」

「影丞割と母ちゃんに似て女顔だったからな」


その意見は棄却します。

美形ではなかったけど二人が言うほど美人である訳がないし。

「絵師さんに描いてもらったキャラのまんまだから割り増しされてるんだろ?」


携帯ゲームの2D系MMOだったから、外観いじるのはサイトのプロフの中だけだったし、ゲームマネーで描いてもらった姿絵だからとことん美少女にしてもらった影響だろね。


「余分なオプションが付いてるのには目を瞑るとして何がどうなってるんだろ?」


見た目に獣毛を残した蛮族の鎧を着たタケルが、オレと真一に訪ねてきた。


健同様に背が高く、身なりのいい白銀騎士紛いの真一と、蛮族な健と弓道少女。


どんな組み合わせだろうか。


どうせなら、ガチャアイテムを装備してない状態にしてほしかった。いいアイテム装備してると耐久性へるし南無られるとドロップしたりするから普段はお気に入り着てなかったんだよな。


「ちょうどいいし、腰下ろして一息入れとくか?」


「そうだね。いくら歩いても疲れはしないのはいいんだけど、もう流石に歩くだけなのには飽きてきたから座ろう」


二人が道沿いの草を倒して座った。


大丈夫まだ歩けるぞ。


「コンビニも家もないとかどうなってんだ俺たちはよ…」


「影丞もこんなんなってるくらいだから、ボクら三人ともアバターなのは間違いないみたいだよ?」


「ゲーム世界トリップか転移かわからないけど家の近くじゃないよな」


健はそう言いながらゴロ寝する。

舗装はされていないし、轍の跡も車のタイヤではなく馬車とか大八車みたいな、木製の固い車輪でありそうだとの事。


木造船の舵輪みたいな奴で、掘れて深みができた道には、何日か前の雨水が濁った水溜まりを成形してて、カンボジアみたいな荒れた道路が続いている。


「ありがちな話だけどさ、俺ら自衛隊の飛行機でも落ちてきてシンだりしたのか?」


「赤とんぼじゃないから静かなんだろうけど、流石にそれはないと思うよ」


健の言うありがちは、遠慮願いたいが流石に飛行機墜落してきてたらわかると思う。


赤とんぼは自衛隊の古い練習機で赤と白のツートンカラーの飛行機だ。


小型ではあるけど、現在の飛行機とは静粛性に差があり、昔はかなりうるさかったらしいね。


「あるとしたら、ボクらのチャリンコを漕ぐ速度が世界の壁を超えたとしか…」


「…それだ」


オレもそれぐらいしか思い当たらない。

真一の意見に同意して声をあげずにひたすら首を縦に振る。


いや、声の違和感半端ないんでしゃべらないようにしてるだけ。


ヘリウムガスも未体験なんだけど、変声期じゃないにしても変わり過ぎだよ。


「とにかく、日が暮れる前に人を探そう」


「ゲーム世界だとそろそろ魔物来そうなんだけど来ないね」


「来てたまるか、ゲームの中ならまだしもいくら何でも生身で生き物殺せる訳ないだろ」


「でも必要になったら何とかしないとだし…」


「ばか、影丞に至っては武器すらねぇんだぞ」


健は長剣で、真一は盾と日本的な槍。


俺の荷物は懐に差してあった扇子と矢の無い和弓。

扇子は涼しげでいいんだけど、弓につがえる矢がないから武器にならないっす。


二つとも、ただの経験値増加アクセサリーだから戦えないのも仕方ないよ。


それに、オレもともと支援職だからなんとか頑張ってもらうしかないよ?


見た目が楽しい遠距離からの支援ためにの魔法範囲と回避を高く育ててたから基礎能力が低いのだよね。


特に腕力に関しては、初期設定のままだからか、二人が手にしている武器はオレには持ち上げるのも大変。


別に、武器にレベル幾つ筋力幾つ以上とかの規制がある訳ではないみたいだし、純粋に腕力がたりてない。


故に投げやすそうな小石を拾い集めながら歩いてたりする。


「道の荒れ具合からしても、頻繁に誰かが通ってるよな?」


「毎日じゃないかもしんないけど、轍に草が生えてないからその内馬車とかが通るかもね」


ただし。


「…でも、馬の足跡らしき物がみあたりませんが?」


CとかUの字みたいな蹄の後がないし所々大きな犬が横切ったような足跡が残されたりしていた気がする。


「馬の足跡がないのは轍の真ん中歩いてるからじゃないかな?」


「そうか?ここらの窪みなんか足跡っぽいぞ。


丸っこい窪みを健が指さすが、馬にしても小さめで頼りない感じがする。


「竹突いた跡みたい…」


孟宗竹じゃなくて竹竿とかになるような真竹の方で、湯のみ茶碗とかコーヒーカップくらいの足跡は小さすぎやしませんかね?


「それは多分、馬がサラブレッドほど大きくなくて、道産子とかボニーみたいなサイズくらいなんだと思う」


「アルパカの可能性もあるよ」

「いやアルパカは蹄の形違うからな?」


真一が口を挟むと健はすかさず否定した。


「馬とアルパカは全然ちがうし」


馬とアルパカの違いなんかわかりませんが…。


「まぁ、足跡なんか見てもわからないし、今は魔物じゃないなら何でもいいか」


とにかく街へとは思うものの、街についても手元にお金がないんだよ。

普通のありがちな話なら、手頃な魔物を倒して街に付いたとたんに換金出来るだけのイベントがあるんだけどなぁ。


「もし、街に入れてもお金ないならそこらで野宿するしかないよ」


「いや、明るいウチに寝床作って暗くなって起きてる方がましなんじゃないか?」


健はいきなり諦めよった。


「…暗くなったら歩けないだろ」


「身を守る術もないし、そうゆうのは街にたどり着いてから相談しようよ」


「そうだな、しかたないから歩くか…」


「…冒険者ギルドとかあればいいけどな~」



のそのそと歩き出す二人の後ろをついて行く。


有り難い事に太陽はまだ高いし、日が暮れる前に人里につけるといいなぁ。


「…いや、意外と近いわ」

蛇行する道の先、レンガで作られた壁が見えた。


「…城塞都市だ。野宿は止めたほうがいいかもよ」

水張られたお掘りと跳ね橋タイプの門も見えた。門番みたいな人もいるし、入口でお金取られたりすんのかな。


「まて、まず誰か先行って様子見てからの方がよくないか?」

草むらが途切れる手前で、健が足を止めて提案してきた。


「この国の体制もわかってないし、言葉が通じない可能性も有り得る」


「そりゃいいけど、必然的に真一か真一になるし蛮族より騎士のが人当たりよくない?」


「「…………」」



いや黙るなよ。


偵察なら、相応しい姿の奴がやるのが当然じゃないか?


「…ジャンケンで決めようか」

「ああ、ジャンケンなら恨みっこなしだ」


真一の提案に健が乗ったけどオレもやるのか。


「さーいしょは」


「「「グー!まだまたまグーいかりやチョーすけ頭はパー!じゃんけん」」


「ぱー」「ぱー」「グー」


健の負け。


泣く泣く健が歩いて行くが、真一を生かせた方が話がすんなり通りそうな気がしたんだけど?

「…影丞、ボクも見た目だけだからあんまり期待しないで欲しいよ」


「それもそうだね」


まだ、高一の初夏になったばかりだもの中学生と変わらんよね。


なんて話してたら、それこそ三人で行きゃよかったんじゃねえのと思う出来事が起こりました。


奴(健)一言も話さずに門番素通りしましたよ?


おい、偵察はどうした。


いや、門番も見なかった事にしてないで、ひと声くらいかけてあげて?

( ̄∀ ̄)影丞達は読者の声で成長します。感想から何か一言かけたげてください。

返事はないかも知れませんが何か?

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