嗜好品や
体を拭いて服を着て待機。
真一がバケツを手に、健が縄を手に部屋に入ってきた。
「影丞、ちょっと後ろ向いてくれる?」
「うい?」
そうして、手足を縛られ部屋の隅に追いやられた。
「…なして?」
「わかっているよな」
―セクハラ対策だそうだ。
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幅100×160の物置が両隅にあり、200×160の部屋が二つ、後は土間兼作業場が一つ。
むき出しの梁と土壁が、昔の納屋を彷彿させる。
窓は木戸とか昔の雨戸みたいな奴だけだから閉めると真っ暗。
細長い長家であるが、ひと月銀貨十枚なら安いと思う。
「さあどう使おうか?」
一番狭い物置に座りながら二人に訪ねるが、二人は広間でオレは確定だと思うね。
「寝場所はともかく、部屋は好きに使えばいいだろ」
「そうだね。あと床が板だけだし毛布か布団くらい欲しいね」
「それよか、異世界だし枯れ草集めてでも布かけといたらよくね?」
「ああ、ありかも…」
お金がなくて納屋を借りて寝起きする冒険者みたいな?
「とりあえず、今日も午前中に街中で着替えを確保して、午後から草刈りな?」
「「ラジャ」」
因みに、草刈りはポボタン以外に、稲科の草も刈って束ねて梁に引っ掛けて乾かしてから床に敷く予定。
服は最悪布だけかって真一に作ってもらう事にした。
本人は知られてないつもりだったらしいけど、真一がレイヤーなお姉さんの衣装造りに付き合わされたり、消しゴムをかけたりさせられてんのを、オレと健は知ってた。
制服や髪の毛にトーンが!なにやら派手な糸くずが!?てな具合いにな。
上げ底の下着まで作らされたらしいから大丈夫。
まぁ、それと言うのも大将に下着を買える店を聞いたら“履いてない”と言われたからだ。
パンツは嗜好品で、街にいる男の八割がフリーダムなんだと、ズボン黄ばまないっすか?
パンツを変えるかズボンを変えるか決めてくれ。
―オレは両方変えたい派だ。
土間にレンガの竈もあるから薪か炭があれば煮炊きが出来る。とりあえず、健は土間に昔ながらの囲炉裏を作って魚を焼いたり、冬に鍋をやれるようにしたいと話していたよ。
冬まで居着くつもりかと聞いたら、手段があるなら逆に聞きたいといわれた。
旅行でもない旅は難しいし、方針が定まるまで“冬に向けた基盤づくり”をする事に決まった。
ちゃぶ台になるコタツと、中に入れる火鉢と熱が長持ちする備長炭とZippo。
まあ、最後のは無理だろうし、マッチあるらしいから買えばいいよね?
だが、備長炭はテレビ見たから出来るはず。(※根拠の無い自信)
ちゃぶ台は普通に作れそうだよね。(※かなり嘗めてます)
梁から鎖垂らしてフックに鍋吊して…。
いや、それ以前にあの底の丸い鍋なんてあるのかが問題か。
香辛料も味噌と醤油無いみたいだし、“和の冬”が半年の間になんとかなるんだろうか?
もし無理なら、アルプスガールHi“G”に路線変更だね。
綴り変えると、メカみたいになるな。
メカ…今週の〇ンダム〇〇が、見れ無いじゃん…。
異世界。
……………………………………………………………………………………………うわ、どうしてくれよう。
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「ん。急に影丞が不機嫌になったけど何でだと思う?」
「…いや、何も“ない”のに今更気付いた事あるんじゃないかな」
「影丞の髪の毛とか、リアルゲームみたいなもんだべ?」
「いや、無理だよ。なんか遊べるものも作ろうか?」
「厚紙かなんかあるといいな?」
「そろそろ行こうか?」
「トランプならいいよな?」
「無難だね…」
話をしながら、風もないのにザワザワと揺れている影丞の髪から距離を取る事にした。




