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オマケとフラグ

元レンジャーの経験があるギルド職員の青年タラは草原を目前にして膝をついた。


「あり得ねぇ。こんなの酷すぎるだろ…」


西の草原は見渡す限りの荒地にされていたのだ。

草は根こそぎ掘り起こされ、子供がイタズラで真似た畑の畝のように盛り上げられていた。

たかが数日、いや一晩で草原の風景が一変していた。

メッタに人里に降りてこない、大モグラやワームが群で草原を渡ってもこうまで破壊されないだろう。


ポポタンの汁を蒸留した液体はあらゆるポーションのベースに最も適している王者の水。


過去に流行った疫病を予防する効果もあり、裕福な家庭の飲み水には日常的に混ぜられる万能の予防薬。


大量の野生のポポタンを集めるのは難しく、ここのような街の近くにある草原に種を撒き一般人に解放する事で、一定量確保できる仕組みになっている。


しかし、ここだけはギルドの管轄になっていて一般人は立ち入りを禁止されている。


密かに希少な薬草の種も織り交ぜて育てているので、ギルドの薬草園と言い換えてもいい場所だ。

新人チュートリアルに使ってるのは、より安全な場所で段階的にギルドが色々と学ばさせるためだ。


ポポタンからレアな薬草依頼をやらせ、ギルド員の監視の下、一番弱いウサギの魔物を放って倒し方や逃げ方学ばせる事もある。


必要な基礎を学ばせ、引退間際の気のいい中堅冒険者に預け実績を作らせたりする場合もあるのだが、湯水の中で育てられた冒険者は時に横暴になる。


暴れる冒険者を取り押さえられるように職員も実力が求められる。

タラは細身だが、“ステータス”持ちの元中堅冒険者だ。


街の方から近付いてくる気配に気付き、道の脇に作られた半地下造り“隠し部屋”に潜り込んだ。


「なんだこりゃあ!」


“人気のない”草原にスコップを担いで現れたの男が一人。

サイモンだった。


(なんでサイモンがこんな所に来てんだ?)


大方張り出されたばかりのポポタン依頼にあやかろうとやってきたのだろう。確かに、街の外に私有地はないので密漁とかではないが、堂々と暗黙の了解を破ろうとするあたり、中堅冒険者としての資質がかけているのは一目瞭然だ。


「クッソ!ゴミみたいな草しかねえじゃねえか、なにが騙しやがったなギルドの野郎!」


暴言を吐きながら癇癪を起こした子供のようにメチャクチャにスコップを振り回す哀れな姿にタラから失笑が漏れた。


(盗めに来たのにギルドの野郎ってなんだ、そもそもギルドの野郎とかギルドは人じゃないだろう)


サイモンが現れた時には、これを仕出かしたのが奴の仕業で、新人いびりにここまでやるかとサイモンの頭を疑ったが、この様子では違うのだろう。



もともと、有り得ない量のポポタンで解体所を分解させた三人組の新入りの草原での行動を監視するよう命じられたのだからサイモンの行動は特に関係ない。


ここまでやり尽くしたと思わしき三人組みは、今日また来ると受付嬢に話したという。

量がおかしい事から、どこかよくない組織と繋がっているのではないかとの疑いが上がり監視する事になった。


現地について疑惑は尚深まるばかり、たかが三人でどうしたら此処までメタクソに草原を破壊できるものか。


背後にまだ十以上の人間が控えている可能性があった。


危険な組織なら、保護し彼らから手を引かせるし、それ以外なら考える。


孤児などの子供達が身を寄せ合った結果の可能性もあるから見極めなければならない。



来なかったとしても、また現地の状況をありのままに報告するまで、三人にはギルドから何らかの処分が下るかも知れない。


いや、もしこれで三人組みが来たとしたらサイモン以上の馬鹿じゃないだろうか?


タラは、とにかく静かに三人が来るのを待つことにした。


サイモンが立ち去った後、昼になるまでの間にサイモンと同じような行動をした者が三人ほど、スコップを投げ出して一目散に逃げ出したものも一名だけいた。



一番に白い石鹸があったから買った。


塩が売られていたから買ったが後でよくみたら砂が混じっていた。食用油が、量り売りされていたから二リットルくらい買って、オイルランプの油にも使えると言われ追加で買うと、他の店で七割くらいの値段で売られていた。


取っ手が壊れ歪んだ鍋が捨て値で売られていたから買って、壊れた鍋蓋が鉄くずに紛れていたから譲ってもらった。


他の所で、不自然に歪んだフライパンも買えた。


―調理器具で人を殴るのはこの世界ではデフォルトなのか?


道を歩いていると、店代わりなのか赤い札がつけられた商品を並べたままの荷車を引く商人と何度もすれ違う。

横に吊り下げられた黒いローブなんか、盗まれそうなもんだが誰も見向きもしない。

そして、たまに黒いローブ、また黒いローブ、気が付くと黒いローブが風に揺れていた。


「灰色のハーフコートみたいのとかないねぇ」


「…もうアレでよくないか?」


健が、またまたまた通り過ぎた黒いローブを指差した。


「ローブはなぁ…」


「嫌なんだな」


嫌だ。なんか古いらしくて素材に艶もないから、飾り気のないポッタみたいでやだ。


もう、パンツも服も作って貰うしかないとわかったしな。


古着は本当に古そうだし、汚すぎてだめ下着に至っては言わずもがな。


あらゆる意味で危険すぎた。


たまに枯れ木の折れるような音が背後から聞こえ、振り向いた先の健に「前見て歩け」といわれ数秒後に、遠くでオッサンの悲鳴が聞こえたりする。


健さんのキャラは、カウンター系のスキルカンストしていたような気がしたけどまさかですよね?


また、誰かが枯れ木でもふんだんですか。

路面はレンガで枯れ木ナンカナイノニフシギだヨネ。


うん、仮にここがスリ多発地帯だとしても、友人がすれ違いざまに人の手を折るとか悪夢でしかないよ。


しかも、わかったないみたい。

狂戦士でもないのに、無意識カウンターとか、闇のヒットマンみたいな技習得してるとか止めて?


それに、黒扇で叩いた時にオレの腕が折られなかったんだから、今のもきっと枯れ木を踏んだだけだと思うんだ。


はい認定。



「歩いて歩いて~」


「はい、歩いてます歩いてます」


件の狂戦士に肩を押され歩を進めるしかないオレは操り人形さ。


「影丞、アレ見てなんか揉めてるみたいだよ」


真一の指差す先、ならず者としか言いようのない男達が、ひとりの微妙な年(オバサンではないが若くもない)の女の人を取り囲んでた。


慌てず騒がずオレは二人に告げた。


「よし撤収ー!」


「取り舵おぱーい!よーソーロー」


健さんアナタいま何気に変なこと言いましたね?


「下ネタ控えー」


「ファックしまーすピピーンピピーンファックしまーすピピーンピピーン」


180ど回転したあと後ろに下がり始める。


下ネタのためにバックで火中に近付くとかやめー。


しかも、真一は健の肩に手を置いて一緒になって下がってっつる。


「うははは、遊びすぎじゃー!」


「影丞も笑いすぎだ」



ゲラゲラとわらいながら引きずられていく。


だか、揉めていた連中は被害者も含め逃げ出した後のようだ。

解せぬ、被害者が助けた主人公のオレに感謝する←イマココ的な感動の場面はどこにいった?


まあいいか。笑ってたらフラグを回避できたみたいだし。




―あるある借金奴隷ルートだよね。


年齢が微妙だったけど…。

フラグ?影丞にはお子様ランチの旗がお似合いさ!


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