Ep3 城塞都市グリッド
点々と見える枯れ木の他に一切何も無い荒野。
そこを歩く人影が二つ。そう、和也とセクラトである。
「ねぇ、何処行くつもりなの?というかなんで旅なの?」
「旅はロマンだろ?行先なんて関係ないさ!」
「要するに何処行くか考えてないのね」
「...」
...ちょっと待て、そういえば何故俺はこんなとこにいるんだ?
よく考えれば分かる事だ。魔王?なんだそれ、地球にそんな奴いるわけがないだろう?
どういう事だ?あれか?最近流行りの異世界転移ってやつか?バカバカしい。
でもここ地球じゃなさそうだしなぁ...聞いた方が早いか。
「なぁ...この世界ってなんてーんだ?」
「は?そんなことも知らないの?バカなの?生きてる価値あるの?」
「そこまで言わなくてもいいんじゃないすかねぇ!?」
「はぁ...この世界はサラス、ここは魔族領よ。エノリア大陸の東側ね」
「へぇ~、サラスか。んでそのエノリア大陸ってのは?」
「サラス唯一の大陸でかなり大きいわ。後は周りに少し島があるぐらいかしらね」
ふむ、地球ではないのか...。まぁ生きてるだけましだろ、ロリチウムの補給源もあるし。
んで行先か...。どうすっかなぁ...やっぱ人の居るとこがいいな。街行くか。
「なぁ、街ってどっち?」
「人族のならこのまま歩いとけば着くわ」
「距離は?」
「200kmってとこね」
「遠い!無理だろ!」
「しょうがないわね...つかまってなさい。...《ワープ》」
瞬間ーー体全体が歪んでいるような感覚。その後一瞬で光景が変わった。
見える景色は森の中。木漏れ日が差し込んでいて綺麗だ。
でもこの体が歪む感覚はやばい。胃の中がかき混ぜられる感じだ。
あ、吐く。
おえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!
「あらごめんなさい。《ワープ》酔いね、始めてだとよくなる人多いのよ」
「それ...先に言え...よ...」
「さ、行くわよ」
「ちょっ、たんま!」
「街も近いから、ほらさっさとしなさいよ」
「おうふ..」
神様、幼女が冷たいです。今度は優しい幼女を授けてください...。
◆◇◆
「着いた...!」
眼前には30m程の壁、入り口と思われるでかい門、そこに並ぶ人の列。
間違いなく街への入り口だろう。
聞いた話によると魔獣ってのもいるらしいしな、文明遅れてるんじゃないだろうか。wktk
そんな事を考えながら並んで待っていると案外早く順番が来た。
「身分証の提示を」
「へ?あ~...持ってないです...」
「では仮の物を作りますのでこちらへ」
「はい...」
着いて行った先は詰所。かなりの数武装した兵士さんがいらっしゃった。
そんな治安悪いの?不安なんだけど。
「...はい、これが仮身分証となります。ギルド等で早めに身分証を作ってくださいね」
「はい、ありがとうございました。セクラト~...セクラト?」
「一緒にいた御嬢さんならもう行きましたよ?」
「ファッ!?身分証は!?」
「持ってましたね」
なんだよ!持ってんなら言えよ!くっそ!見つけたら何してやろうか...!
「すいません!ありがとうございました!」
「お気をつけて」
いや~衛兵さん良い人や~。口調も丁寧で好感度MAXですよ、ええ。
◇◆◇
くっそ~、何処行ったんだあの幼女め~。
おっ、発見発見。
「おい!身分証持ってんなら言えよ!」
「言う必要性を感じなかったわ」
こんの幼女は~!
「あ~もういい!ギルド行くぞ!」
「レディーを待たせておいて失礼な態度ね」
「は?バbーー」
「あ”?」
「サーセンナンデモナイッス」
「よろしい」
なんか幼女の尻に敷かれてるんだが。こういうのは俺じゃなくて染谷にやれよな...。
あいつはそういうタイプだからな。
てか何ヤクザみたいな声出してんのこの子!?
怖すぎんだけど!まぁそれは置いといて。
「ところで、ギルドって何処?」
「知らないわよ」
「え!?どうすんの!?」
「てっきり聞いてきたのかと思ったわ」
「いや仮身分証発行してもらっただけだから!」
「はいはい、さっさと行くわよ。場所は分かるから」
「いや知ってるんかい!」
あれ?なんでツッコミしてんの俺?俺ボケの筈なんだけど?
そう思いながら和也はマイペースなセクラトと共にギルドへと足を向けるのだった。
ご意見ご感想、評価宜しくですm(_ _)m