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お互いを少しずつ知っていこう

かなり遅くなりすいません。

ちょっと忙しかったのと、ハースストーンにハマってました。

「にゃー、ゴロゴロ」

玉座でアリスに喉を撫でられて、気持よさげに鳴く黒猫が最後の砦のボスだとは到底思え無い。


「可愛いでしょ?ノクスも撫でてみたら?

最も、私以外に触られるのは嫌がるから無理だと思うけどね」


「にゃー」


「本当だ、触り心地良いな、お前」


「えぇ!?な、なんで触れるの!?」


何故か胸を張っていたアリスから離れ、ノクスに体を絡めてきた黒猫を自然と撫でていたノクスに驚きを隠せ無い。


「ちょっ、ちょっとクロ!?

あなた、私以外に撫でられて大丈夫なの!?」


「にゃー」


クロは気持ちよさそうに体をノクスに預けてくる。


「…大丈夫そうだな」


「そ、そうね…。流石よ、ノクス…」


悔しそうなアリスにノクスは尋ねる。


「それより本当にここのボスはこの黒猫なのか?」


「もちろん唯の猫じゃないわよ。

クロはこれでも上位魔族の中でかなり強い方なんだから」


「まぁ、確かにここの階層だけ漂う魔力が違うもんな」


「それはこの階層にはdungeonへの転移魔法陣があるからね。

dungeonから魔力がここに流れてきてるのね」


「黒猫さんの魔力とは関係ないのかよ…」


「そうでもないわ。

ダンジョンのボスを担う者が、そのダンジョンの質を決めるのだけど、質はボスの魔力量によって決まるのよ。

上位魔族を三体と、質の良いスライムを大量に管理できているのはクロの魔力量が高い証拠よ。

ボスの魔力がダンジョンに満ちているから、魔族とモンスターはUtopiaで本来の動きができるの」


「魔力量が高いのはわかったけど、戦えるのか?」


「ボスの所まで侵入者が来た時はダンジョン内に魔力を放出する必要がなくなるから、クロは本来の魔力で侵入者と対峙できるわ。

クロが純粋に魔力だけで戦うなら私よりも強いかもしれないから、きっと大丈夫よ」


ボスの所まで侵入者が来た時、それは他の魔族が倒されたことになる。

仲間が殺されたことになる訳だから、考えたくはないことだろう。


「約束どおり、しばらくノクスは私といてもらうわよ!

dungeonも後で案内するから…、ちょっとごめんなさい」


アリスが表情を変え、急に口調が険しくなる。


「はい、こちらアリス。

…わかりました、直ちに向かいます。

…では、後ほど、神と天使の名の下に」


神と天使の名の下に。

聖騎士が神と天使の加護の元にあり、自身の行動を神と天使に誓い、神と天使に身を捧げるという意味を持つ言葉だ。


この発言の意味はアリスが聖騎士であることを意味していた。


「アリス、どういうことだ?

君は聖騎士なのか?」


「え?言ってなかった?

私は確かに聖騎士よ」


「魔族の君がどうして聖騎士になれているんだ?聖騎士が所属する教会は、魔族を邪として扱っているはずだ」


「もちろん魔族である事は秘密よ。

私は完全に魔力を転換できるの、白か黒、光か闇の魔力にね。

魔力が変わると、私の体質も容姿も変わるから教会から魔族だってバレる事なく潜入できたのよ。

本当は魔族の方でいる方が好きだから、この姿でUtopiaを歩くのが好きなんだけど、大衆の前で翼と魔力を見せちゃったから…、もうこの姿でUtopiaは歩けないわね」


「潜入って、アリスはUtopiaをどうするつもりなんだ?」


「それはこっちのセリフよ!

Utopiaはdungeonをどうするつもりなのか?

それを知るために、わざわざ聖騎士になったんだから」


「じゃあ、アリスはUtopiaに害ある行為を意図的にしようとしている訳じゃないんだな?」


「当たり前じゃない!

どうして私がUtopiaに害をなす必要があるのよ!」


普通なら魔族が聖騎士になり、Utopiaに潜入していると聞けば、何としてもその魔族を排除しなければならないと思うだろう。


聖騎士と言えば、ダンジョン攻略の要であり、平和の象徴なのだ。


その平和の象徴が魔族だなんて、Utopia最大の危機に他ならないだろう。


しかしノクスはアリスの魅力チャームの効力もあり、素直にアリスの言葉を信じることができた。


「わかった、俺はアリスの事を信じるよ。

だから、お互い秘密はなしにしよう。

聞かれた事は素直に答える、疑問は口にする。

そういう関係を俺はアリスと築きたい。

できるなら、俺はUtopiaとdungeonが争い合わなくていい世界を見てみたいんだ。

アリスと俺がそうなれたなら、きっとUtopiaとdungeonもそうなれる気がする」


「…ノクス、奇遇ね!

私もそう思っていたのよ!

そもそもどうして、争い合わないといけないのかが謎なのよね。

私も聖騎士になってから、色々調べてみたんだけど、どうもしっくりこなくて…」


ブツブツと語り続けるアリスを見て、ノクスはやはり彼女の言葉は正しいと感じていた。

きっと互いに知らない事が多すぎたのだ。

知らないという事は怖いことだ。

リリィと戦って、ノクスは恐怖を知っている。

未知のモノと戦う恐怖。

命がなくなるという恐怖。

その全ては自分がソレを知らないという恐怖なのだ。


Utopiaとdungeonはお互いに未知の世界で、互いに恐怖しているのかもしれない。


お互いに敵だと、決め付けているのかもしれない。


もしそうなら、悲しいすれ違いだ。

確かめなければならない。

先ずは魔王に会うところからだろう。

一応は魔王候補であり、娘てあるアリスの紹介ならば会えるかもしれない。


「アリス、話が変わって悪いんだが…、魔王に会うことはできるか?」


「え!?パパに!?

ちょっ、ちょっと気が早いんじゃないかな!

そ、それにホラ、プ、プロポーズとかも…一応は、してもらいたいし…」


「い、いや違う!

そういう挨拶とかじゃなくて、ただ話を聞きたいんだよ!」


「そ、そんなに否定しなくても…、良いのに…、ノクスは、私の事が、嫌いなの?」


涙目になりながら、見つめてくるのは卑怯だとノクスは思いながら頭を掻く。


「嫌いじゃないけど、け、結婚とかは、その、段階を飛ばしていると思うよ。

もっと、その、デートとか?お互い知ってからじゃないかな?」


「にゃー」


クロの鳴き声にアリスとノクスは肩をあげて驚いた。


「あ、ご、こめんね、クロ。

相手してあげなくて…」


アリスは慌ててクロを抱き上げて、頭を撫でた。


「ノクス、私は成り行きで貴方の魔力を浴びて、離れられない存在になって…、魅力チャームの反動も確かにあったと思うけど、けど、ね。

ノクスを好きだと思う気持ちは、私の本当の気持ちだと思うから、ゆっくりでいいから、私を好きになってくれると嬉しい…です」


「はぁ、アリスはズルいよ」


ただでさえ綺麗で可愛いのに、魅力チャームの補正があるなんて、いつまで理性が持つのだろう。


ノクスの中でアリスへの好意が高まっていくのを感じにはいられなかった。


「ゆっくりでいいなら、お互いを少しずつ知っていこう。

きっとお互いを知っていく内に、知った分だけ、その…好きになれるんじゃないかな?」


「ノクス…、ありがとう」


ああ、やっぱりアリスは泣いているより、笑った顔の方が可愛いな。


照れながらもアリスとノクスは互いに歩み寄る。


dungeonとUtopiaもこうなればいいと思いながら。



しかし、そんな思いとは裏腹に世界は大きく捻れていく。


世界は単純ではない。

ノクスとアリスはあくまで個と個であり、世界は集と集なのだ。


様々な種の生命が、様々な思いを、或いは野望を、夢を、願いを、命を持っている。


それは様々な問題、亀裂、争いを生む事にならざる終えないのだ。


やがて、その争いはノクスとアリスの間に及ぼす事になる日は来るだろう。


その時の選択で世界はまた、大きく変化を遂げる事となる。


強大な力を持つモノは、産まれながらに選択を迫られるモノだからだ。



「選択の時ね」


第一帝都、センチェリオンの王、そして姫であるアルティナ・ハートフィリアは選択を迫られていた。


帝都から遥か先の空で見えた、光と爆風はリリィが放ったものである事は間違いない。

ノクスを頼むと言ったのに、ノクスごと最上位魔族を消し炭にするつもりだったのだろうか?


全くあの子はノクスに嫉妬でもしているのかしら?

私がノクスを好いていることは知っているだろうけれど、リリィも贔屓目に可愛がっているつもりなのに、甘えん坊さんね。


そんなことよりもだ、リリィが撃ち落とされた事によりノクスの救出がかなり厳しくなってきた。


アルティナは一国の姫である為、自身で助けに行く事は出来ない。

かといって、いくら聖騎士候補であれど、一人のために軍を出す事は一国の姫として、行動が安易過ぎる。


そんな行動を取ろうものならば、軍からは反感を買い、国民からは信頼をなくす事になるだろう。


軍はあくまで国と国民のための組織なのだ。

私の私用で乱用する事は出来ない。


それが許されているのがリリィというアルティナの切り札だったのだが、それは失敗に終わってしまった。


それにしてもドラゴンであるリリィを撃ち落とすなんて、何方の仕業なのだろうと、アルティナは思考する。


魔眼保持者の最上位魔族ならば、確かに可能かも知れないけれど、ノクスにもあの魔力ならば十分に可能なのではないだろうか?


本来ノクスは聖騎士以外にならば、どんな職にもつけたのだ。

これは買いかぶりではないだろう。

魔法の方は自身の特異魔力の所為で、習得する気が無かったようだから、魔法主要の職は難しいかも知れない。

その分剣術に力を入れていたので、魔力の持ち腐れではあったのだが、危機的状況下で魔法を習得した可能性はある。

人間は自身の命の危機が迫る時が、一番成長する時だとアルティナは考えている。


ノクスの力は未知数だ。

本当に彼は何処まで強くなれるのだろうと、楽しみで仕方がない。


是非、今回リリィを撃ち落としたのがノクスであると嬉しく思う。

リリィはきっと大丈夫だろう。

彼女の強みは頑丈さなのだから、おそらく問題ない。


現在取れるべき手が一つしかないのが悩みの種だ。

アルティナは事を起こす時は、手段を複数準備してから行動する為、手が一つというのはあまりに心許ない。

しかしまぁ、一つあるだけましなのかも知れない。

一つもなければ詰みなのだから。


かといって、一国の一大事に手が一つ、或いは無いでは姫として失格だろう。

それでは国が滅ぶのだ、そんな甘えは許されない。


反省をしつつ、ぶっちゃけ私が動ければ早いし、国の一大事も何とかなるとは思いつつ、残された一手、聖騎士ステラ・ルーンライトに声をかけた。


「ステラさん、あなたはまだ、私の騎士でいてくれないかしら?」


聖騎士ステラの今回の任務は勇者適性試験中のアルティナ姫の護衛、及びアルティナの指示を優先して行動することだった。


勇者適性試験は最後に問題は起きたが、一応は終了している。

アルティナの命を聞いてくれるかは微妙なところだった。

断られた場合の策を巡らせつつ、ステラの表情を伺う。


「…はい、任務終了の報告はしていませんので、何なりと」


「では、私用で申し訳ないのだけれど、先ほどの最上位魔族を追って、ノクスを救出してくれないかしら?」


「…お言葉ですが、それは教会にはどの様な説明を?

流石に一人のために円卓の騎士である聖騎士一人を向わせるのでは、恐らくは納得して頂けないかと…」


「それは問題ありません。

最上位魔族がメインですから、ノクスはついでという事にしますので」


「なるほど、あくまでついでという事ですか、それならば、彼の命の保証は…」


「ええ、しなくていいですよ。

あなたはあくまで最上位魔族の追跡、及びダンジョン、或いは潜伏場所の特定をお願いします。

因みにノクスは魅力チャームを受けている可能性もありますので、もしも戦闘になったら気を付けてくださいね?」


「気を付けて、と言うのは彼を殺さない様にという事ですか?」


それでは話が違うとステラはアルティナに問いかける。


「いいえ、本気で殺すつもりなら、全力を出さない事をお勧めしますよ、彼は強いですからね」


「どういう事ですか?」


「死に直面した時の彼が一番強いので、一応は忠告です」


「万が一でも、円卓の騎士が負ける事は許されませんよ、アルティナ姫。

では、聖騎士ステラ・ルーンライト、アルティナ姫の命を受け、任務を開始します。

神と天使の名の下に」


「ちょっ、ちょっと待ってください!」


ステラが闘技場を後にしようとした時、息を切らせながら走ってくる女性が見えた。


「はぁ、はぁ、す、すいません。

ぶ、無礼を承知でお願いします!

わ、私も、連れて行ってはいただけませんか!?」


頭を下げた時に、後ろで編まれ一つになっている赤味がかった長い髪が揺れる。

茶褐色の肌からは汗が伝い落ちた。


よほど急いで来たのだと思わせた。


「あなたには見覚えがあります。

勇者適性試験でウルフを一刀両断していましたよね?

見事でした。

ですが、相手は最上位魔族です。

幾ら何でも、勇者になったばかりのあなたには荷が重いでしょう、辞めたほうがいいです」


「足でまといなのは、わかっています!

ですが、彼を、ノクスさんをどうしても助けたいんです!

…いえ、一度でいいから、もう一度、話がしたいんです!

今行かなければ、叶わない気がするんです!

お願いします!」


必死に頭を下げる彼女の強い思いはわかったが、だからと言って流石に最上位魔族と対峙するのに同行を許可するのにステラは気が引けた。


「私は構いませんよ。

勇者が魔族を追う事や、人助けをする事は当たり前の事ですからね」


アルティナはステラにそう告げる。

正直、手は幾らでも打っておきたかったのが本音だが、彼女も十分に戦力にはなるだろう。


「魔族が飛んだ方角は第二帝都、サラマンドラの方ですが、あなたはドワーフの血が流れているのでは?」


「はい、私はサラマンドラの出身です」


「…わかりました。

私はサラマンドラに入った事はありませんので、道案内をお願いしたい」


「あ、ありがとうございます!」


「では、よろしくお願い申し上げますね。

ステラさんと…?」


「ロロニアと言います。

よろしくお願いします!」


「ロロニアさんですか、私は聖騎士ステラ・ルーンライトと言います。

では、早速で悪いのですがすぐに準備を、魔族を追います」


打てる手は打った。

後は教会の説得をしなければならない。

でなければ、ステラを呼び戻す恐れがあるからだ。

全くもって面倒だ。

アルティナはステラとロロニアを見送りながらも、教会への言い分を整理していた。

本当に面倒だ。

ブチキレないように安定剤を飲んでおこう。

ノクスと話をしたい事がいっぱいあった分、極度のストレスがアルティナにはのしかかっていた。


今度会った時は思う存分に触れ合い、互いを愛し合おう。

その事だけがアルティナの精神を支えていた。

展開が急に早くなったと感じた方、正解です、すいません。

ちょっと頭の中でストーリーがだいぶ先まで行ってしまっているので、混乱してきています。

追いつかないと伏線とか、設定とか、色々回収できなくなるので、止む終えず…、完全記憶能力が欲しいと、思ってる末期野郎ですが、今後ともお付き合い頂ければ嬉しいです。

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