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VSゴリ山最終決戦の巻1 ―佐々木の悲劇―

  −佐々木の悲劇−


「昨日付けで佐々木が学校をやめた。佐々木はこのところずっと学校に来ていなかったが、彼なりに色々考えたみたいでな、昨日付けで学校をやめた」

朝のホームルーム、担任のゴリラのような顔をした熱血教師磯山(通称ゴリ山)が深刻な表情でそう言った。


佐々木というのは半年くらい前からずっと学校に来ていなかった生徒だ。

まぁいわゆる登校拒否ってやつ。

「みんな、それぞれ悩みがあるだろ。でもな、それは本当はよく考えるととても小さいことだ。もっと広い視野で周りを見なさい。そうすると、自分がどうしてこんなに小さなことで悩んでいたのかと、気付くはずだ」

出た。

ゴリ山の口癖

「広い視野で周りを見ろ」。

もう耳にタコが出来る程この言葉を聞いた。

ついでに言うと、俺はこの言葉が大嫌いだ。

「佐々木にも何度もそう言ったが、やはり狭い世界しか見れなかったみたいだな…。この先どうするのか…。お前らには出来ればそうなって欲しくない。リストカットとか、そういうことに逃げて欲しくない。つらいことがあるなら先生に相談しなさい。いつだって相談に乗る」

あぁ〜あ、 何言ってんだ、この先生。

根本をわかっちゃいない。

佐々木が登校拒否になったきっかけは、あんただったっていうのに…。




俺はたまたまその場に居合わせた。

「もう…嫌だ…。……もう何もかも…嫌だ…。…みんな…みんな…大嫌いだ…」


確か、5時限目が終わった休み時間だった。

俺は小便を催してトイレに行った。

そしたら、まぁ…泣きながらトイレにうずくまってる奴を発見した。

「…佐々木?」

俺が声をかけると、大袈裟なくらいビクッと身体を震わせて、慌てて俺を振り返った。

その顔は泣きじゃくった後みたいな酷い顔だった。

ただ…それだけじゃなくて、顔中にある無数のあざに俺は目がいった。

できたばかりのようなその赤いあざ…。

「何してんの?」

遠慮がちに、だがさりげなく俺はそう声をかけた。

「もう…なにもかも…嫌になった…。…もう、うんざりなんだよ…。春木はいいよ…いつものほほんと生きててさ…悩みなんか何一つなさそうで……。俺は…もう…嫌なんだよ…」

そのとき気付いた。

佐々木の手に握られているカッターに。

「なんかあったの?ていうか、その顔…」

そしたら、佐々木は渇いた笑みを浮かべて、力無く言った。

「この顔?…ハハ…ゴリ山にやられた…。俺が反抗するからだってさ…ハハ……。何でも相談しろって言ったの誰だよ……。あいつ…知ってた?…ゲイなんだよ…」

急に何言い出したかと思った。

「はっ!?」

「驚くことじゃないじゃん…。あいつ…女子生徒のことには全く興味ないけど…男子生徒のことになると妙に執着してくるし…。俺も…もっと早くに気付いてればよかった……」

それから俺はまたしてもあることに気付いた。

佐々木の制服が妙な形ではだけているということに…。

「まじかよ…」

「やっと気付いた?…春木も気をつけた方がいいよ…。あいつ本当の変態だからさ…」

佐々木はまた目から涙をポロポロと流し始めた。

俺はあまり気にしすぎちゃいけないと思って、素直に小便をした。

「もう…誰も信用できない……。もう消えちゃいたいんだよ…俺…」

まだ便器にいる俺は振り返りながらそのときこう言った。

「あんな奴のために死ぬのか?そんなのあいつがゲイだってバラして犯されたことお巡りに言えばいいじゃん」


そしたら、佐々木の奴…キレた。

「そんなの…言える訳ないだろ!!?俺のことなんて誰もかばっちゃくれない!!そんなこと言ったらみんなのいい笑いのネタだよ!もううんざりなんだよ!!!何もかも!!!」

俺はそのいつもじゃありえない佐々木のキレっぷりに驚きながらも、あれをしまって佐々木の方に向き直った。

「結局春木だって人事だよ…。もういいんだ…。俺はもう…全部なかったことにしたいんだよ…」

そう言うと、佐々木は持っていたカッターを手首に押し当てた。

「おいおい、やめろって」俺は反射的に止めに入ろうとした。

そしたら、ボロボロの顔で佐々木は俺の目を見た。

「春木には止める権利ないだろ」

その瞬間、佐々木の手から血が吹いた。

深かった。

俺はそれをただ見ていることしかできなくて…


それから教師が沢山男子便に入ってきた。

何気ない顔したゴリ山も、ただ心配してる教師を装いながら入って来た。


それから、佐々木は学校には来なくなった。

俺にとっては、生きているのが奇跡だと思った。




「まぁ、佐々木のことは仕方がない。あいつは弱かったんだ。悩みも人に打ち明けられなかった。早くに先生に相談してくれればこんなことにはならなかったはずだ。もっとみんな広い視野で物事を見なきゃ駄目なんだよ。引きこもって何の解決になるっていうんだ?みんなそう思わないか?狭い世界で生きて苦しんで、それで人生終わりなのか?」


2回目…


「もっと広い視野で見ろ!先生もついてるんだからな。いつもいうように…」


なんだ、これ。

同じことしか言えねぇのか、このゴリラ。

もう聞きたくねぇよ、お前の話なんて。

そして俺はついに…キレた。


ガターン!!!


けたたましい音。

机が音をたてて倒れた。

まぁ、俺が蹴ったからなんだけど。

あ、前の席の鈴木くん、ごめん、もろに当たったね。

みんなの視線が俺を刺す。勿論1番痛い視線は担任のゴリ山の視線。

みんながまるで動物園のライオンでも見ているかのようだった。

恐ろしさと、好奇心。

俺が次に何をやるのかを期待している目。

俺はすっくと椅子から立ち上がった。

「便所…」

先生の頭にクエスチョンマークが浮かぶ。

「は?」

「便所…行ってきます」

俺はそのままクルリと向きを変えて、教室の後ろの扉を目指す。

数秒の沈黙

それからやっと我に返ったゴリ山の怒鳴り声。

「はるきぃ!!!」

うるさい。

仕方ないので振り返る。

「何ですか?」

怒りか、生れつきか、顔を真っ赤にしたゴリ山が震えた声で言う。

「机直していけ」

「あぁ…」

俺は倒れた机と、それに挟まっている鈴木くんを見て仕方なく席の方に戻ると、何故かゴリ山も俺の席の方に向かってくる。

何故かゴリ山の震えている身体…。握られた拳。

まぁなんとなく予想はついていた。

自分の席のところにくると、目の前にはゴリ山の醜い顔があった。そして、怒りの鉄拳。

見事に俺の左頬にヒット。そのまま俺は机の壁につっこんだ。

けたたましい音

女子の叫び声

みんなが一斉に俺とゴリ山から距離を置く。

「立てぇ!!春木ぃ!!!」

俺は唾を吐いてから立ち上がった。

今度は俺の番。

もう一度飛んでくるゴリ山の怒りの鉄拳を左腕で受け止めて、腹に一発。

屈み込むゴリ山を回し蹴りで投げ飛ばして、ゴリ山の上に乗っかった。

えぇーっと…何発殴ったっけ?

覚えてないや。

まぁ俗に言う、キレたってやつ。

佐々木にも見せてやりたかった。醜いゴリ山の顔がどんどんさらに醜く変形していく様を。

それからどうなったかは、みんな想像がついているように勿論停学。

教師を殴ったっていうのに、五日間の停学ですんだ。それは、ゴリ山が先に俺に手を出したから。

まぁ…しょうがないよね

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