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「ってなことがあったのよ。王子様なんて外面だけなのね」
あの悪夢から16時間経過したお昼下がりの頃。
私は唯一の親友であり人妻のMrs.ユリアと午後のお茶パーティー(愚痴会)を真っ最中だ。
ユリアはクリーム色の見事なカールが特徴的でいつも美しいデザインの白いドレスを纏っている美人でこれまた旦那さんは黒の貴公子(悪い意味ではなく、彼の黒髪に燕尾服が神々しいくらい似合っていて世の女を虜にしたことから呼ばれた)と言われる有名人。その方についてはまた後ほど……別に羨ましいとかなんてこれっぽっちも、思ってないんだからね!
「あのアルバート公爵様が……そう。ローズ、あなたはよくやったわ!すごいわよ、そんなことできる女の子なんてローズしかいないわぁ」
ユリアは太陽みたいに朗らかに笑った。彼女が笑うとローズもつられて笑顔になった。
「おほほ、おかげでなんかスッキリしたわ。あとは中身も外見も素敵な白馬の王子様に出会えれば……」
「ローズ……それは難しいわ」
「そうですよね」
「ねぇ、ローズ。私、思ったの」
急に場の空気が変わった。常に微笑んでいるユリアが真顔になったからだ。無表情が笑みというくらいほとんど微笑んでいる顔が笑う以外の表情を見せるのは珍しい。私は嫌な予感を察知し、気持ちを落ち着かせるために紅茶を喉へ押し込んだ。
「熱ッ! う、うん。よかったら聞かせてくれない?」
(もしかして無理とかいうんじゃ……)
「あのね……
私の兄上と婚約するっていうのはどうかしら?」
「ゲッホ、ゴホ、ゴホゴホ……え?」
今のユリアの家系は腹違いを合わせて11人兄妹だった。ユリアは6番目。上に兄が4人がいるらしい。ちなみにユリアの家の爵位は伯爵。まあ、悪くない。
でも、まさかユリアが突然そんな発案をしてくるなんて思いもしなかった。
「3番目が兄上もローズに同じく結婚できなくてね、容姿は悪くないと思うんだけど……うん、もしかしたら気が合うんじゃないかと思うのよ」
「え、でも」
(いくらユリアのお兄さんでも会ったことのないひとはちょっと……)
「あのね親友のローズのために言ってるから政略とか強制じゃないのよ、親にはまだ秘密だからね。嫌だったら言ってもいいのよ!あくまで私は兄より断然あなたの味方だからね!!」
それなら、断れるわ……!グッジョブユリア!!
「ありがとう。我が親友ユリア。ぜひ、会ってみるわ!やっぱり持つべきものは頼れる美人の親友ね!」
「いいのよ。ローズにも早く幸せになってほしいのよ。言うでしょ? 結婚は女の幸せだって」
「先輩が言うと言葉の重みが違うなー。いいよね~、ユリアにはもう素敵な旦那さんがいるんだから。
仲睦マジクテケッコーデスコト」
「まあ、私達は、そんなんじゃないわよ。ふふ。姉妹みたいな?」
「え!? どゆこと!?」意味深すぎる・・・。
「ふふ、秘密」ユリアは柔らかい唇に細い人差し指を当てて、しーって言った。
「っま!、後でゆっくりじっくり濃厚に夫婦生活を聞きだしてやるんだから」
「お手柔らかね。あら、そろそろ時間よ、ローズ。例の事については場所をセッティングしておくから、来週の水曜日に」
「オッケー! 楽しみにしてるわね」
私は席を立った。
この時の私は思いもしなかった……まさか、あの悪魔と再会するとは。
気まぐれ更新です。
もし読んでくれてる人がいるならば、嬉しすぎて頭皮が爆発します。