連れ去り
「契約成立。これからは僕も君たちの冒険に参加させてもらうよ」
スミレたちは、サリの家に案内された。
そして、次なる地を話し合う。
「で?次は決まってるの?」
サリが楽しそうに聞く。
「次は、妖精の森に行く」
サリの顔色は一変する。
「本気?妖精族ほど女神族と魔人族を恨んでる種族はいないよ?」
その言葉に誰もが、俯いた。
「わかってる。でも、多くの者の力を借りなければ......」
スミレは、グレイルが現れた時を思い出す。
◆
村に戻ると、そこにはいくつも命石が落ちていた。
息を吸うたび、鉄と血の匂いが喉に貼りついた。
命石を砕かれ、身体すら灰になった者もいた。
スミレは、それを見て涙を流す。
「命石が......なんてことを」
命石を割られる。それは魂ごと砕かれることだ。転生の希望すら残らない。
◆
「獣人族の力を借りられるとはいえ、グレイルには適わない。
妖精族の力を借りても、勝てる保証はない」
スミレはもう、力を借りることに迷いはない。
だが、その力が通用するのかが問題だった。
「強くなりましょう。私たち自身がもっと、強くなれば......」
リリナが言う。
「えぇ、そうね。
私たち自身が強くならないと......」
翌日、スミレたちは妖精の森へ向かった。
その道中でスミレとサリは止まった。
「どうした?まだ、妖精の森にはついてないぞ?」
ルイが少し先で立ち止まったスミレに気づいた。
「それがさ、昨日の試合を見てたやつがずっとついてきてるんだよね。
そろそろ出てきたら?」
サリが後ろを振り向いて言う。
「へぇ、オイラの気配に気づいてたんすか」
声がする方を見ると、そこには一人の妖精がいた。
「森の匂いに混ざって、変な魔力がずっと張りついてたんだよ」
サリが面白そうに、妖精に言う。
「街道から外れたのは、巻き込みたくなかったから」
スミレがそう言いながら、警戒態勢に入った。
「面白いっすね。妖精族は、気配を消すのが得意なんすけど......」
妖精は少し、悔しそうにした後ニヤッと笑った。
「それで?オイラが君たちをつけている理由は、わかるっすか?」
その言葉は、少し弾んではいるものの厳しさが滲んでいる。
「交渉の余地があるか。それを測りに来たってところ?」
スミレがそう言うと、妖精はケラケラと笑いだした。
「半分正解で半分不正解。
オイラが見ていたのは、話をするためじゃないっすね」
急に真剣な顔になった。
「君たちの能力を測っていただけ。
君たちは、強いっすよ」
妖精は、スミレに近づいてきた。
そして、
「君は、相反する気配がする。危険分子だ。
樹牢」
地面が揺れ、木の根がスミレを囲う。
「スミレ!!」
サリの声には少しの焦りが含まれている。
「くっ、なに!?急に、力が......」
スミレは歯を食いしばり、魔力を押し返そうとする。
「大丈夫っす。
殺したりはしないっすよ。」
そう言うと、妖精は去ろうとする。
サリが一歩踏み込み、腕を振り上げた。
「そんな根、僕が燃やしてあげる!炎爪!!」
炎が根を引っ掻く。
だが、木は焼けず焦げ目すら付いていなかった。
「なっ」
「世界樹の根に炎が効くわけないじゃないっすか。
それじゃ、お暇させてもらうっす」
その言葉とともに、根が地面へ引きずり込むように沈み、スミレの気配が遠ざかった。




