表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『1章完結!』光と闇の継承者 〜神に選ばれた少女の物語〜  作者: 加藤 すみれ
2章 歪みの中で出会う者たち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/14

下界へ、双子の女神

下界への扉は、家の奥深く――

誰にも知られぬ隠し部屋にあった。


淡く光る扉を前に、スミレは一度だけ足を止める。

胸の奥が、ひどく静かだった。怖さよりも、覚悟の重さがそこにあった。


「……行ってきます、母さん」


振り返ると、メイサは微笑んでいた。

けれど、その指先はわずかに震えている。


「いってらっしゃい。

必ず一年後には帰ってきてね。絶対に……生きて、また会いましょう」


その言葉を、スミレは胸に刻むように強く頷いた。

――もう、振り返らない。


扉をくぐった瞬間、世界が反転する。



辿り着いたのは、薄暗い部屋だった。

壁に囲まれ、窓もない。どこかの家の――隠し部屋。


「……なぜ、こんな場所に?」


戸惑う間もなく、壁が低い音を立てて動き出す。

隠し扉が開き、ひとりの女性が姿を現した。


鋭い視線。

だが、その面差しは――否応なく、メイサを思い起こさせた。


「気配を感じたと思ったら……迷い込んだ子たちかしら?」


女性はスミレたちを見渡し、静かに告げる。


「今すぐ戻りなさい。ここは、あなたたちにとって危険な場所よ」


その声に、警告だけでなく“庇うような色”を感じ取り、スミレは一歩前に出た。


「それは、わかっています」


震えはなかった。


「でも……遊びに来たわけじゃありません。

私たちは、仲間を探しに来たんです」


下界へ来た理由を語り終えると、女性はしばらく沈黙した。

やがて、小さく息を吐く。


「……他の種族の力を借りるのは簡単じゃないわ。

特に、妖精族はね。それでも――行くの?」


「はい」


即答だった。

命の残りを思えば、迷う理由はなかった。


女性は、かすかに笑う。


「……やっぱり、姉の娘ね」


そして、名を告げる。


「私はマリサ。メイサの双子の妹よ」


その言葉に、空気が揺れた。


「妹……?

そんな話、聞いたこと……」


「でしょうね」


マリサは肩をすくめる。


「私は戦いに疲れて、下界に逃げたの。

今じゃ、臆病者として嫌われているわ」


軽い口調とは裏腹に、瞳の奥には消えない影があった。


「ここで立ち話もなんだし……移動しましょう」


隠し部屋を抜けた先に広がっていたのは、息を呑むほど豪奢な空間だった。

高い天井、煌めく装飾、整然と立つ使用人たち。


「……お城?」


「ええ。この国の城よ」


直後、通路の先から声がかかる。


「王妃様、その方々は……?」


「私のお客様よ。

姉の娘と、そのお友達なの」


メイドは一瞬驚いたものの、すぐに一礼して去っていった。


「……王妃?」


問いかけに、マリサは少し照れたように微笑む。


「人間と結婚したの。これでも一応、ね」


案内された部屋で、マリサは本題に入った。


「それで……仲間を探しているのね」


「はい。

人間族、獣人族、妖精族の力を借りたいです」


その言葉に、マリサは困ったように眉を下げる。


「他の種族はともかく……人間だけは無理よ」


「なぜですか?」


シュンの問いに、マリサは静かに答えた。


「人間は、まだ女神族も魔人族も知らない。

知れば、欲しがる。利用しようとする。

争いを広げないためには――知らせない方がいいの」


スミレは唇を噛む。

正しい。けれど、それでも――。


重い沈黙が落ちた、その時。


「お母様、入ってもよろしいでしょうか?」


扉の向こうから、控えめな少女の声がした。


マリサの表情が、はっと変わる。


「……そうだわ。

この子がいたじゃない」


「マイ、入りなさい」


現れた少女にマリサは事情を話した。

少女は、戸惑いを隠せない様子で立ち尽くしていた。

視線が揺れ、指先が無意識に握られている。


説明を聞き終えたマイは、声を失っていた。


「……そんな……

お母様が、女神族だったなんて……」


「この子は、私たちの従妹?」


スイレンの問いに、マリサは頷く。


「えぇ」


スイレンはじっとマイを見つめ、率直に言った。


「……強そうには見えませんが」


「失礼ね!

これでも、国でお母様の次に強いのよ!」


マイは顔を赤くして言い返す。


「人間は他種族より弱い。

でも、女神族の血を引くマイは――人間の中で最強よ」


その言葉に、皆が顔を見合わせた。


「確かめたいなら……」


マリサは静かに告げる。


「マイと、あなたたちの誰か戦ってみる?」


その瞬間、

マイは不安そうに拳を握りしめ、

スミレはその小さな背中を、静かに見つめていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ