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2025~作品

闇に棲む

作者: 蒼月
掲載日:2025/10/22

コンクリートの床に横たわり

天井の一点を見つめる

壁の向こうに何があるかは知っている

嘘に満ちたモノクローム

この床や壁と何ら変わらない色彩

それが太陽の下に生き 社会を作っているらしい

街では誰もが屍のように歩いている

ショートした思考回路 麻痺しかけた感情

笑顔の作り方を忘れて 人は仮面舞踏会

誰かが足を引っ張って

お嬢様を転ばそうとしている

気分の悪い道化師が 私の地獄へ共に来いと

無理矢理に手を引くようだ

しばらくすれば 別の誰かが

彼の頭を撃ち抜くだろう

45口径の立派なピストルで とろけ出した彼の頭を

きっとその銃を持っているのは 似たような顔の悲しき道化師

同族を嘆き 同族の犠牲者を嘆き

贖罪を代行する

私は屍 あるいは闇の囚人

感情は麻痺していないが 逃げる気もない

やがて全て白に包まれるまで

ここで倒れているつもりだ

太陽は遠く

いつか高く消え去ることを

私はただ 感じている

不意に手を伸ばし 掴もうとするが

私はイカロスにさえなれない

冷えた冬の日 雪も降らず

ただ空が遠いだけ

昼ですら 春の灰

夜はより冷え込み 星が見える

遠い光がこの闇を知ることはない

彼らが唯一知っているのはほかの光と澄んだ闇

煙に巻かれたこの地の灰色を彼らには知る由もない

時計の針が音を立てる

ずいぶんと長く無機質なそれは まさしく時間の象徴

長ったらしい葬列 同様に感情を消す存在

彼らが顔を隠しているのか それとももう顔がないのか

私にはわからない

純粋無垢な天使の落とし子は この闇を知るより前に

神の使者たちが回収を試みた

私はその前に闇を知り 天使は私を残した

やがて私は彼の元へ行き

この地に全てを伝えるだろう

酷く詩的に 酷く悲観的に

その時彼は私に楽園への鍵を渡す

そういう夢を見る

神々は全知全能

されど 世の理を覆せはしない

彼らの多くは私と同じく悲観主義者なのだろう

その抱擁は悲しみさえ抱いてしまった

神はそれを包容し 同じように扱った

毒を取り込んみ されど死なぬ

それを私は哀れむが おそらく彼は悲しまない

私は神ではないから

私は神になる器でないが もし私が神であれば

もし悲しみを殺せるのなら 胸の奥までナイフを刺して 

冷たい目をして殺しただろう

私はそんな空想にも飽き 虚構の死体を放り出す

罪に濡れた不純な身体で ふと自己嫌悪なんかに浸る

まだわずかに 心臓が温かいらしい

感情が迷宮へと入り

やがては 無へ還る

そこが 私の感情の住処

家に帰れば またもう一度

旅に出ようと感情は動く

私を構成するそれの一部が ぐるぐるぐると回りだす

答えのない問いという概念が 自らを生かす血液を求めて

誰も知らぬ哲学者の墓からDNAを持ってくる

悲しみはどんな眼で生きているだろう

悲しみとして生まれた存在を 怒りを超えた今は憐れむ

悲しみや苦しみ ありとあらゆる痛みが 

アニミズムの考えのもとに魂を宿すのであれば

私は彼らを憐れまぬことに この生を終えられない

彼らの死は 彼らの望みか

彼らの死は いづれ来るか

哲学者ぶった私は 暗緑の樹海の中

同じように墓石を刻んでいる

憂鬱な思考回路 科学曰く脳の機能不全

インパーフェクション

それさえ私と知っている

私は孤独であり ゆえに人らしくある

私は憂鬱であり ゆえに人らしくある

私は不完全ゆえ 人である

人とは 不完全である

神さえ 不完全である

埋めるかけらの見つからぬ 欠けた存在である

されども それを埋める欠片が 

どこにも見つからないゆえに 半ば結果論的に

宇宙はそれがわれらの完全体だという

完璧主義者はおおよそ卒倒するであろうが

私はもはや驚かぬ

大きく感情が動かなくなり 液体金属のように

緩やかな安定が 私の今の住所なのだ

もはや 脳みそは海である

私の身体はいづれは溶けて やがて液体か気体となる

私はその時 海になる

海になり、宇宙を呑む

そして 新たな宇宙になる

私の輪廻はきっとそう

そうであったら面白い

ユーモアのかけらが笑っている

冷たい風が人を殺めそうな 悲しい歌を歌っている

月は黙して ただ微笑を浮かべる

やはり そのわけは

そうせざるを得なかったからだろう

今宵はここらで眠りについて

宇宙のラジオに身をうずめよう

明かりを消して ダイヤルを回し

ホワイトノイズに溶けこんでいく

接続の成功は 視界のホワイトアウトが

代わって伝えてくれるだろう

この色味のない灰色の部屋で唯一の 黒を含まぬ色が


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― 新着の感想 ―
投稿お疲れ様です。闇を知った人間がいつか辿り着く場所、辿る道なんでしょうか。人は愚かでありつつ、どんな存在、どんな色彩になれてしまうからこその表現、感服致しました。
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