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プロローグ

【SF×ミステリー長編】


 高校生の朝澄珠緒あずみ たまおは絶望の渦中にいた。

 容姿による格差があることを確信しており、この世の中に絶望している。

 そんなとき、自分が呟いた言葉に匿名で連絡が届く。


「棄てるつもりなら、お前の命を私に寄こせ」


 珠緒はこの誘いを受けたことで科学者・永霧なぎりと邂逅する。

 研究施設で被験者となった珠緒は”あるもの”を失い、彼の運命は大きく動き出すこととなる。

 読んでくれてありがとう。

 この手紙を偶然読んでいるあなたへ。

 まず、問いたいことがあります。

 

 あなたは一度でも、


 ――この顔じゃなければ、もっと違う人生があった。

 

 そう思ったことはあるでしょうか?

 もしもないのであれば、これから僕が書くことは退屈に感じるかもしれません。


「人生が上手くいかない責任を、すべて他人のせいにしている」

「そんなにつらいなら、今は整形なんていくらでもできる」


 こんな風に考え、僕のことを非難したくなるかもしれません。

 はじめに言いましょう。

 そうした意見はすべて正しい。

 “正しく”在れるあなたはとても良い人だから、どうかここで手紙を読むのをやめてください。これからの人生を、どうか僕の吐き散らす呪詛に惑わされず生きてください。


 さて、逆に思ったことのある方(もし居たら、ですが)。

 あなたは僕に共感できるはずです。

 言葉を選ばずに言いましょう。

 不細工に生まれたことで、損をしている。

 少なからずそう思ったことがありますよね。


 同じグループの友だちのはずなのに、些細なことで少し雑に扱われる。

 同じように思慮深く口数の少ない性格をしていても、美人なら「ミステリアス」と言われるのに、不細工は「不気味」「暗い」と言われる。

 能力が同じはずなのに、組織内での評価はきれいな人が攫っていく。発言権も、どんどん格差が開いていく。

 辛いことを思い出させたらすみません。

 また、被害妄想が過ぎると不快に思われる人がいたらすみません。

 

 しかしここに挙げたようなことは僕にとって紛れもない事実で、僕がこれから行おうとすることに密接に関わっているので避けては通れない話題なのです。

 美しさによる格差は、美しい側の人には見えません。


 だって、思い出し笑いしただけで「気持ち悪い」と言われたことありますか? 友達とただ笑いあっているだけで「うるさい」と怒られたことがありますか?

 自分のことを「不細工だ」と馬鹿にした子を、先生が薄ら笑いを浮かべながら叱っているのを見たことがありますか? 

 真剣に人の容姿を馬鹿にしてはいけない、なんて思っていないんです。先生は僕の手前形式的に叱っているだけで、馬鹿にしてきた子供と同じように「不細工と言われても仕方ない顔」と思っていました。


 そんな経験が、美しい人にはありましたか?


 すみません。

 つい、感情的になってしまいました。共感できない人間は読まないでほしいと言ったのは僕なのに、何を書いているんだろう。

 支離滅裂ですね、すみません。


 まとめます。

 僕は自分の人生に絶望しました。

 生まれもった容姿で格差が生まれてしまう、人間という社会に望みを見出せなくなりました。この社会で傑出しようと努力する意味も、ただ生きていく意味も、僕には誰からも与えられる気がしません。

 外に待っているのは罵詈雑言。

 それだけです。

 先に僕を見限ったのは世界なのですから、僕がこの世界を見限る自由も、もちろんありますよね?


 どうぞ、美しい人間だけでこれからの世界を回してください。

 では、さようなら。


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