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第九章:星と魔の共鳴

1. 三大神の脅威

三つの光の柱が世界各地から天に向かって立ち上がった夜、地球上のすべての生命体が恐怖に震えた。

戦神ヴァルハラの光は北欧の山々から、滅神アポカリプスの光は中東の砂漠から、そして創神ジェネシスの光は太平洋の中央から、それぞれ空を突き抜けて宇宙にまで達していた。

「神格エネルギーの出力が異常値を示しています」

統合司令部の中央モニターに、ノア=セレーンが収集した観測データが次々と表示されていた。その数値は、これまで測定した審判神の何倍もの規模を示していた。

「戦神ヴァルハラのエネルギー出力は、審判神の十倍。滅神アポカリプスは二十倍。そして創神ジェネシスは...」

ノア=セレーンの声が震えた。

「五十倍を超えています」

田村博士が机に拳を叩きつけた。

「どうしてこんなことになったんだ。これでは勝負にならない」

しかし、レンの表情は意外にも冷静だった。

「いえ、これは予想通りです。神々が本気を出してきたということは、僕たちが彼らにとって脅威になったということです」

アルグ=ザルが重々しく頷いた。

「その通りだ。神々は、我々を油断ならぬ敵として認識し始めている。これは、ある意味で勝利の証だ」

アヤカが不安そうに窓の外を見つめた。

「でも、これだけの力の差があっては...」

「大丈夫です」

レンが振り返って仲間たちを見回した。

「僕たちには、彼らにない力があります。それは、希望と団結の力です」

2. 三種族の技術融合

ノア=セレーンが中央のホログラム装置を起動させた。青白い光が空中に複雑な図形を描き出す。

「宇宙連邦からの最終支援物資が到着しました。これまでの戦闘データを分析した結果、三種族の技術を完全に融合させた新兵器の開発が可能になりました」

ホログラムに表示されたのは、これまで見たこともない巨大な装置の設計図だった。

「これは...」

「『トリニティ・コンバージェンス』と命名しました」ノア=セレーンが説明を続けた。「セレーン族の次元操作技術、クリスタリアンの精神増幅技術、ルミナス族のエネルギー変換技術、メタ・ヒューマン族の多次元同期技術、そしてプラズマ族の力場制御技術。これらすべてを融合させたものです」

アルグ=ザルが興味深そうに設計図を眺めた。

「なるほど、これに我々魔族の古代術式を組み合わせれば...」

「はい。魔族の力も不可欠です。特に、アルグ=ザル様の持つ『根源操作』の力なくしては、この兵器は完成しません」

田村博士が技術的な部分を検討していた。

「人類の技術はどう組み込まれるんだ?」

「人類の最も重要な技術は、実は技術そのものではありません」レンが答えた。「それは、調和と協調の技術です。異なる種族の力を一つにまとめるために、人類の統合能力が必要なんです」

クリスタリアンの集合意識が共鳴した。

『なるほど、人類の真の力は、多様性を受け入れて統合することにあったのですね』

プラズマ族も電光を散らしながら同意した。

「人類の柔軟性と適応力が、この融合兵器の要となるわけだ」

3. 建設開始

翌日から、トリニティ・コンバージェンスの建設が始まった。

統合司令部の地下深くに、巨大な建設空間が開放された。セレーン族の重力制御技術により、地下でありながら無重力状態の作業環境が整えられた。

「まず、エネルギー核から始めます」

ルミナス族の技術者たちが、純粋なエネルギー体となって作業に取り掛かった。彼らの体から放たれる光が、巨大な球体の骨格を形成していく。

「続いて、精神増幅回路を構築します」

クリスタリアンたちが、自分たちの体の一部を提供して、美しい水晶の回路を編み上げていく。その回路は、まるで生きているかのように脈動し、集合意識の力を増幅していた。

「次は、次元操作装置の設置です」

セレーン族の科学者たちが、空間そのものを操る装置を慎重に組み立てていく。その装置の周りでは、時空が歪み、現実と非現実の境界が曖昧になっていた。

「多次元同期システムの構築に移ります」

メタ・ヒューマン族が、同時に複数の次元に存在する能力を使って、通常の三次元では不可能な構造を作り上げていく。

「最後に、力場制御システムです」

プラズマ族が、巨大な電磁場を生成し、すべての部品を統合していく。

しかし、最も重要な部分は魔族の技術だった。

「古代の封印術を解除し、根源の力を解放する」

アルグ=ザルが古代魔語を唱えながら、装置の中心に巨大な魔法陣を描いていく。その魔法陣は、時間と空間を超えて、宇宙の根源的な力にアクセスする門となった。

「すごい...」

アヤカが息を呑んだ。建設が進むにつれて、装置の周りの空間が異次元の色彩に染まっていく。

「これが完成すれば、神々と対等に戦えるのですか?」

「いえ」レンが首を振った。「この兵器の真の目的は、戦うことではありません」

4. 兵器の真の目的

建設が完了に近づいた頃、レンが全員を集めて兵器の真の目的を説明した。

「トリニティ・コンバージェンスは、確かに強大な破壊力を持っています。しかし、それが最終目的ではありません」

「では、何のために...」田村博士が疑問を投げかけた。

「神々の支配システムを根本から変更するためです」レンが答えた。「この兵器は、神々の力の源である『信仰エネルギー』を、『自由意思エネルギー』に変換することができます」

一同が驚きの声を上げた。

「つまり、神々を殺すのではなく、神々と人々の関係を変えるということですか?」アヤカが確認した。

「その通りです。神々が人々を支配する力の源は、人々の盲目的な信仰と恐怖です。それを、人々の自由な意思と選択に変えることができれば、神々はもはや絶対的な支配者ではなくなります」

アルグ=ザルが深く考え込んだ。

「なるほど、復讐ではなく変革か。それは確かに、より根本的な解決策だ」

ノア=セレーンが技術的な詳細を補足した。

「この装置は、惑星規模での意識変革を可能にします。地球上のすべての知的生命体が、神々の存在を客観的に認識し、自分たちの意思で神々との関係を選択できるようになります」

クリスタリアンの集合意識が共鳴した。

『素晴らしい発想です。破壊ではなく解放、支配ではなく共存』

プラズマ族も激しく光った。

「これこそが真の進化だ!支配者と被支配者の関係を超えた、新しい存在のあり方を示すものだ!」

5. 神々の察知

しかし、神々もまた、この異変を察知していた。

三大神の光の柱がさらに強くなり、空全体が異様な色に染まっていく。

「神々が動き始めました」

ノア=セレーンの観測装置が、神々の動向を捉えていた。

「戦神ヴァルハラが北欧から移動を開始。滅神アポカリプスが中東から上昇。創神ジェネシスが太平洋から浮上しています」

「こちらに向かってきているのですか?」田村博士が緊張した。

「いえ、それぞれが世界各地の人口密集地域に向かっています。ニューヨーク、ロンドン、東京、ムンバイ、サンパウロ...」

アヤカが青ざめた。

「人質に取るつもりね。私たちが兵器を使えば、世界中の都市が破壊されるという脅迫よ」

レンの表情が険しくなった。

「神々は、僕たちの真の目的を理解していないのかもしれません。でも、そのせいで無関係な人々が犠牲になるのは許せません」

「どうしますか?」アルグ=ザルが尋ねた。

「作戦を変更します」レンが決断した。「トリニティ・コンバージェンスの完成を急ぎ、神々が都市を攻撃する前に作戦を実行します」

6. 最終調整

時間との戦いが始まった。

「エネルギー核の出力を最大限まで上げます」

ルミナス族の技術者たちが、自分たちの生命力を削りながら装置にエネルギーを注入していく。

「精神増幅回路の調整を完了しました」

クリスタリアンたちが、集合意識の力で装置の精神的な側面を調整していく。

「次元操作装置、正常に作動しています」

セレーン族が、空間の歪みを利用して装置の効果範囲を地球全体に拡大していく。

「多次元同期システム、すべての次元で同期完了」

メタ・ヒューマン族が、複数の現実層にまたがって装置を安定化させていく。

「力場制御システム、全パラメータが正常値です」

プラズマ族が、巨大な電磁場を微調整して、装置全体の安定性を確保していく。

そして、最後にアルグ=ザルが古代魔術の仕上げを行った。

「根源操作術、最終段階に入る」

彼の唱える古代魔語が、装置の中心で巨大な光の渦を形成していく。その光は、宇宙の根源的な力に直接アクセスしていた。

「レン」アルグ=ザルがレンを呼んだ。「最後の調整は、お前がやる必要がある」

「僕が?」

「この装置は、三種族の力を統合する触媒を必要としている。それができるのは、三種族の力をすべて内包しているお前だけだ」

レンが装置の中心に立った。その瞬間、装置全体が彼の存在に反応して共鳴を始めた。

「力を感じます」レンの体が光に包まれた。「魔族の力、宇宙種族の力、そして人類の力...すべてが調和しています」


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