殴りてぇ。え、駄目?
「まったく困ったものだ。何故我々がこんなガキどもの為に時間を使わなければならないのか」
第一印象、何だコイツ。なんか腹立つな。彼はなんというか……すごいギラギラしてた、服装が。過度な装飾が目に痛いし一々髪をかき上げたりやれやれと首をふったりと身振り手振りも鬱陶しい。後ろの奴らも声こそ出してないけど似たような感じだ。正直既に嫌気が差してきた。
「…………チッ、さっさと行くぞ。急がねぇと日が暮れる」
「まったく何故そんな甘い日程を組んだんだ、少しは計画性というものを持ったらどうだ?」
おそらくここにいる『群青の風』のメンバー以外の全員が思っただろう。誰のせいだと。
うーん一々言うことが癇に障る。『赤き傷』の人達も大分イラついて来ているみたい。こうして雰囲気最悪のまま、調査に向かうこととなった…………先行き不安だなぁ。
「よっ!」「ふっ!」
僕とレオンの一撃でスライムが力尽きる。もう既に倒したのは五体程。リトルアルミラージも二体倒してる。
『赤き傷』の皆さんがせっかくだからと指導をもらいつつ敵を倒してるんだけど、結構戦いやすい。ていうのもレオンの弓の腕がすごく良いんだ。ただ射つんじゃなくて例えばスライムなら飛び上がって核を覆う体液が薄くなったところで正確に射ち抜いてる。おかげで戦闘時間が大分短縮されてた。僕?火力低いから殴りまくる。
「レオンすごいね!百発百中じゃん!」
「あ、あはは、ありがとう」
「いやー、ボウズ等良い腕だな。どっちも動きに迷いがねぇ」
『赤き傷』のリーダー、ザンズさんのお墨付きだ、やったぜ。
「ハズレ職業ならハズレ職業らしくおとなしくしていれば良いものを、おかげでこうして僕らがこんな貧乏くじを引くことになったんだ」
「お前いい加減にしろよ!?ハズレだろうが何だろうがコイツ等は自分の努力でもって戦ってんだぞ!」
「ハッ、それでここの魔物を漸く狩れる位だろう?」
「テメェ等いい加減に……!」
ヤバい、また口論が始まる。そろそろ僕とレオンがゴブリンを見た辺りに入るし大声を出すのは不味い。
「そろそろ僕達がゴブリンを発見した範囲に入ります。ここから先は僕達もどうなっているか分かりません」
「……そうだな。全員警戒して進め。ゴブリンを発見した場合は報告。少数だった場合は討伐するが俺等で対処できない場合は戻って報告する。鉄級の二人は最後尾でついてこい、何かあった場合一番に逃げて確実にお前達が報告するんだ。良いな?」
「「「「「はい」」」」」
僕達と『赤き傷』のメンバーは返事をするが『群青の風』は何も言わない。チラッと見るとやっぱりやれやれしていた。すごく嫌な予感がする。
「はぁ、何故君の指示に従わなければならないのかな?我々は我々で別で動く。問題はないね?」
「問題しかねぇが?何で別行動する必要があるんだ」
「はぁ……まったく少しは考えたらどうだい?私は風属性の魔法使いだ。特にそこのハズレのような足手まといが居ては邪魔なのさ」
そこの、と言いつつ僕達を指差す。いや、まぁ足手まといではありますよ、えぇ。
風属性の魔法は範囲が広い。確かに人数が多いと味方に当たってしまう恐れがある。でもこの言い方、僕達だけじゃなく『赤き傷』のメンバーも邪魔者扱いしてないか?
どうやらザンズさんもおんなじことを感じたらしくイライラしながら言った。
「あぁ分かった。テメェ等だけで勝手にしやがれ」
「ふん、最初からそう言えば良いんだ」
こうして二手に別れて行動することが決定した。あ、僕とレオンはもちろん『赤き傷』の皆さんと行動することになったよ。