初戦闘と今後
会敵、スライム。この魔物の特徴はなんと言っても弾力性が高いことだろう。ポヨンポヨンと跳ねながら移動するため慣れるまでは攻撃が当てづらく、ジャンプによる上からの突進攻撃も下をコロコロ転がっての突進攻撃も臨機応変な対応を求められる。
「でも……攻撃前に必ずちょっとしたタメがある!」
上からの突進、盾でガード。そして跳ね返り、もう一度突進するためにスライムが体をぐぐっと構えた瞬間、剣で叩き込む。うーん微妙な手応え。当たってはいるけど核に当たってないのか。
僕の攻撃を受けたスライムは何度か跳ねて後退したが、性懲りもなくまた突っ込んでくる。下から転がってくるなら上から叩きつけるんだけど……
「上から!」
なら今度は挑戦!突進に対して攻撃でもって迎撃!更にスキル込みで叩き落とす!剣術スキル──
「【重撃】!」
良い手応え!しっかりと核を捉えた一撃がスライムの体力を削りきった。
ブニュリと力無く溶けていくスライムの体液を採取、確か色々使い道があるんだよね。安価だけど需要があるから冒険初心者の貴重な収入源だ。
「ふぅ~……倒せた倒せた。もう何体か倒したいな、出来れば夕食の時間までに」
特に狙いたいのはリトルアルミラージだ。なんせ夕食に出来るから!
と、ここでガサガサッと物音。視線を向けると白い毛並みと額から伸びる角。
「見つけたー!」
「クュイ!?」
早速いた!先ほどのスライムを凌ぐ勢いで僕はリトルアルミラージに挑んだ。あ、そうだ。せっかくだしこれを使ってみようかな?実はずっと使ってみたくてウズウズしてたんだよね。
「ユニークスキル──『虚影の主』!」
「ただいま~」
「おう!帰ったか」
今日の戦利品はスライムの体液五体分、リトルアルミラージ二体。アルミラージ種は逃げ足が速いからね、見つけたらまず足元の石をぶつけて怯ませるのがコツだ。このコツを見つけるまでに二体程逃がした。くそぅ。
え?ユニークスキル?発動すらしなかったスキルなんて考えるだけ無駄よ。
スライムの体液は明日冒険者ギルドに行くからその時持ってくとして、リトルアルミラージの肉は何の料理にしようかな~、解体はガッソおじさんがやってくれてるから部位ごとに別で調理したいよね。
よ~し、まずリトルアルミラージの骨付きをビネガーにしばらくつけた後に鍋へ。ニンニクと一緒に火にかけてっと。色がついてきたらそこに玉ねぎ、トマトのペーストを入れて更に白ワイン。しばらく煮込めば完成!
お~、これはパスタのソースにもなりそうだ。準備しとこう。
モモ肉はこちらも煮込んだところに油で表面をカリッと揚げて、マスタードとミルクを混ぜたソースをかけて出来上がり。こっちはシンプルな仕上がりだけどモモ肉がジューシーだからすごくおいしい。おじさん達が酒を要求してきそうだね!
さて、ご飯の準備は出来た。後はお客を待つだけだね。
「おーぅもうやってるかー?」
「はいはーい!大丈夫ですよー!本日のメイン料理はリトルアルミラージですー」
「おっもしかしてお前さんが?いいねぇ、じゃあそれにするかな」
「まいどー!」
早速お客が来た。リトルアルミラージのトマト煮込みを持っていく。ついでに質問。
「レベルが上がったんだけどさ、ポイント何に振るのがいいかな?」
「うん?あー、序盤はなぁ人によるんだよな。俺はステータスに振ったぜ」
「そうなの?ありがとー」
うーん人による、かー。ガッソおじさんはスキル習得優先なんだよね。レベルアップによって手に入るポイント、それを割り振ることでステータスの強化やスキル習得ができるんだ。悩みどころだけど戦った感じしばらくはこのままでも問題なさそうだし、もう少しレベルが上がってからステータスとスキル同時に上げてくのがいいかな?
「明日はどうすんだ?またあそこで狩りか?」
「いえ、冒険者ギルドに行こうかなって」
「ん?依頼でも受けるのか?」
「それもありますけど…………パーティメンバーを集めようかなって」