第8話: 迫る決断
翌日、怜司と静馬の関係は少しずつ変化していた。静かな日常の中で、お互いの存在が当たり前のように感じられるようになってきていた。しかし、その中で怜司は何かしらの不安を抱えているようだった。
「静馬、今日の午後、少し外に出ないか？」
怜司は、午後の予定を考えながら静馬に声をかけた。静馬は一瞬驚いたような表情を浮かべてから、すぐに笑顔を見せた。
「もちろん、怜司様。お供いたします。」
その返事に、怜司は少しだけホッとしたような表情を見せる。静馬と一緒に過ごす時間は、何気ないことでも心が落ち着くものだった。
午後、二人は屋敷の外へと出た。町の賑やかな雰囲気が心地よく、怜司は少しだけリラックスした気持ちになっていた。
「今日は、何をしようか？」
怜司がぼんやりと尋ねると、静馬はすぐに答える。
「怜司様が好きなところに行きましょう。」
静馬の優しい提案に、怜司は少し考えてから、ある場所を思い出した。
「そうだな、あの花畑に行こう。」
怜司は決めたように言った。静馬はその言葉に嬉しそうな表情を浮かべる。
「花畑ですね。素敵な場所です。」
静馬は、怜司の傍らに歩み寄り、肩を少し寄せた。怜司はその動きに少し驚きながらも、自然に肩をすくめる。
「まぁ、気にしなくていいよ。」
怜司は照れ隠しのように言ったが、その言葉の裏にある温かい気持ちを静馬はしっかりと受け止めていた。
花畑に到着すると、あたりには色とりどりの花が咲き誇っていた。怜司は少し歩きながら、ふと立ち止まる。
「静馬、ここに来ると、なんだか落ち着くな。」
怜司は花の香りを楽しみながら、静馬に言った。静馬はその言葉に、少し微笑んで答える。
「私は、怜司様と一緒にいると、どこにいても落ち着きます。」
その言葉に、怜司は驚きと同時に、心の中で何かが温かくなったのを感じた。静馬の言葉は、いつも彼の胸に深く響いていた。
「お前、そういうことを言うんだな。」
怜司は少し照れながら言ったが、その顔には満足げな笑みが浮かんでいた。
しばらく花畑の中を散策していた二人だったが、静馬がふと立ち止まり、少し真剣な表情で怜司を見つめた。
「怜司様、最近、私のことをどう思っていらっしゃいますか？」
その問いに、怜司は一瞬戸惑った。しかし、すぐにその問いの意味を理解し、静馬を真剣に見つめ返した。
「静馬、お前がどうしてそんなことを聞くんだ？」
怜司の声には、少しの不安とともに、でもどこか強さが感じられた。静馬はその不安を感じ取るように、少しだけ歩み寄った。
「私は、怜司様の気持ちが知りたいのです。」
静馬は静かに言った。その言葉には、彼の真摯な想いが込められていた。
怜司は少し沈黙した後、ゆっくりと口を開く。
「俺……静馬がいないと、やっぱりダメなんだ。」
その言葉を聞いた静馬は、胸が高鳴るのを感じた。怜司の告白は、彼がこれまでに抱えてきた不安を乗り越えた証拠だった。
「怜司様……」
静馬はその言葉に、優しく手を伸ばす。怜司はその手を受け入れ、静馬の目をしっかりと見つめる。
「これからも、ずっと一緒にいてほしい。」
怜司の言葉は、静馬にとって何よりも嬉しいものだった。
「私は、いつまでもあなたの傍にいます。」
静馬はその言葉を胸に、怜司の手をしっかりと握り返した。
二人は静かな花畑の中で、今まで以上に強くお互いを感じ合いながら、少しずつ歩みを進めていった。
