表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/13

第7話: 息を呑む瞬間


静馬は怜司の部屋に向かう途中、少しだけ緊張している自分に気づいた。今日、怜司とまた何か大きな進展があるわけではない。けれど、怜司が少しずつ心を開いていることを感じていた静馬は、どこか心の中で期待を抱いていた。


「怜司様、もうすぐお昼ですよ。」

静馬は部屋の扉を開けると、怜司が机に向かって何か書き物をしている姿が目に入った。


「お前、またその書類か?」

怜司は無意識にため息をつきながら、静馬に振り向いた。どうしても仕事に集中してしまう性格が災いして、昼食の時間すら忘れてしまうことがしばしばだった。


「そうですね、また少しだけ気になることがあって。」

静馬は怜司のそばに歩み寄り、その書類に目を通す。怜司は自分が静馬の存在に甘えていることを、まだ完全には認めたくなかったが、その行動はどこか素直になりつつある証拠だった。


「怜司様、少し休んでください。あなたも疲れているでしょう?」

静馬は優しく言ったが、怜司は微妙に顔をしかめた。


「俺はまだ大丈夫だ。」

それでも、静馬がそのまま手を伸ばして肩に触れた瞬間、怜司はその温かさに驚き、つい肩をすくめてしまう。


「お前、そんなに気を使ってくれるな。」

怜司は照れくさそうに言ったが、静馬はそのまま微笑んで言った。


「気を使っているのではありません、怜司様を大切に思っているからです。」

その一言が、怜司の胸をきゅっと締め付けた。


「……ありがとう。」

怜司は静馬を見つめ、その目には感謝の気持ちが込められていた。


静馬がもう一度微笑んでから、部屋の奥にあった食事を運び出す。二人が並んで食事を取る時間は、何気ない日常の中でも、怜司にとっては心地よい瞬間になっていた。


昼食を終えた後、二人は庭を散歩することにした。静馬は少し先を歩きながら、怜司がついてくるのを待った。その歩幅に合わせて、二人は静かな時間を過ごしていた。


「怜司様、今日は少しお疲れのようですね。」

静馬がふと後ろを振り返ると、怜司は少しだるそうに歩いていた。


「うるさいな、歩けてるだろ?」

怜司は少し怒ったように言ったが、その顔にはどこか照れくささがあった。静馬はその態度にくすりと笑う。


「そうですね、歩けていますよ。」

静馬はそう言いながら、でも怜司がついてきているのを確認するように、歩調を合わせて歩いた。


途中、二人は庭の大きな木の下で立ち止まり、しばらくの間黙って空を見上げた。何も言わず、ただその瞬間を共に過ごすことで、二人の距離はさらに縮まっていくのを感じていた。


突然、怜司が口を開いた。


「お前、俺に話してる時、いつも優しすぎるよな。」

静馬はその言葉に驚き、しばらく沈黙してから答える。


「優しすぎるというのは、私の気持ちですから。」

静馬はそう答えながら、視線をそらした。


「……お前、俺のこと、どこまで分かってるんだ?」

怜司は、少し冗談っぽく言ってみた。しかし、静馬の返事は予想外だった。


「分かっていませんよ。ですが、少しずつ分かろうとしています。」

静馬は、心からそう言った。怜司はその言葉を聞いて、ふっと笑った。


「お前がそんなに真剣に言うと、なんだか照れるな。」

怜司は言ってから、ほんの少し赤くなった頬を隠すように手で押さえた。


その瞬間、静馬は怜司の可愛らしい仕草に胸が高鳴るのを感じ、つい笑顔を浮かべた。


「怜司様、あなたのその姿もとても可愛いです。」

静馬は思わずそう言ってしまい、怜司は驚いたような顔をして、顔を真っ赤に染めた。


「な、何言ってんだよ!」

怜司は顔を背け、歩く速度を少し早める。静馬はその後ろ姿を見て、思わずにやりと笑ってしまう。


「怜司様、可愛いですね。」

静馬は心の中で、少しだけくすっと笑った。


その後も二人は楽しいひとときを過ごしながら、少しずつお互いの距離を縮めていくのであった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ