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第2話: 予感と確信


静かな書斎の中、怜司が静かに紅茶を飲み干すと、ほんのりとした香りが広がった。彼はそのまま窓の外を見つめ、何かに悩んでいるような顔をしていた。静馬はそれを見守りながら、静かに一歩後ろに下がる。


「……やっぱり、俺はダメだ。」

怜司はふと口を開いた。その声は、静馬が予想していたよりもずっと小さく、弱々しく響いた。普段の強気な態度からは想像できないほど、怜司は疲れ切っているように見えた。


「怜司様?」

静馬は一歩踏み出し、怜司に寄り添うように立つ。その距離感が、まるで何かを訴えかけるかのように感じた。


「……お前は、俺のことどう思ってる?」

突然の問いに、静馬は少し驚きながらも、すぐに冷静さを取り戻した。


「私は、ただ……あなたのお手伝いをする者として、ここにいます。」

静馬は無理に深い意味を込めず、しかしその言葉の裏には「あなたを守る」という思いが込められていた。


怜司は少し顔をしかめると、再び視線を外す。

「……守る、か。」

その言葉に、何かが胸を締めつけるような感覚を覚えた。


「怜司様、何かお悩みがあるのでしょうか。」

静馬は怜司の目をじっと見つめながら、静かに問いかけた。その目に浮かんだのは、ただの従者としての関心ではなく、もっと深い感情がこもっているように感じられた。


怜司は少しの間黙っていたが、やがて静かに口を開く。


「俺、こんなに強くなくてもよかったんだろうな。」

その言葉は、静馬にとって衝撃的だった。普段の怜司は、自分の立場や責任を背負うことに強い意志を持ち、それを何とかしようと必死になっているように見えていた。しかし、今はその全てを重く感じ、押し潰されそうになっている。


「あなたは強いですよ。」

静馬は優しく、少し微笑んだ。それが怜司にとっては何よりも重荷を軽くするような、心に響く言葉だった。


「でも、強さって……痛いんだ。」

怜司は小さな声でつぶやいた。静馬はその声をしっかりと受け止め、また一歩、怜司に近づく。


「……私がここにいます。」

静馬のその言葉は、怜司が求めていた答えだった。ひとしきり沈黙が続き、ようやく怜司は顔を上げ、静馬を見つめた。


その視線には、かすかに懐かしいものが混じっていた。彼は普段、誰にも見せない弱さを静馬にだけ見せていた。


「……ありがとう。」

その一言に、静馬の胸が高鳴る。


その瞬間、静馬は自分の気持ちを再確認していた。怜司の強さの裏に隠れた孤独、そして彼を支えたいという強い思いが、静馬の心を確実に掴んでいることを。


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