岩手代表【平泉の遮那王】源義経
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岩手県代表【平泉の遮那王】源義経
平安末期の名将。鎌倉幕府初代将軍・源頼朝の異母弟。幼名の牛若丸を名乗っていた頃、のちの忠臣・武蔵坊弁慶を、京都・五条大橋の上で打ち負かしたのはあまりにも有名。兄・頼朝の挙兵に呼応して、平家打倒の急先鋒となり、一ノ谷・屋島・壇ノ浦といった合戦で平家を滅亡させ、源平合戦最大の功労者となった。のち、謀反の疑いをかけてきた兄の軍勢に攻め寄せられ、奥州平泉で自害して果てた。
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ドンドンドコドコドンドンドコドコドンドコドコドコドンッ!!!!!!!!!!!!
おおっとぉ~!!!!!カメラカメラ!太鼓映せ!!見てください!中継先の岩手県チーム控え室!!!平泉金色堂さながらの爛々と装飾された巨大太鼓を打ち鳴らす男は、岩手県代表、最有力候補と謳われた!!阿弖流為さんじゃないですか!!!!!!平安時代初期、朝廷の守護神と称えられた、原初の征夷大将軍・坂上田村麻呂(出生地が確定していないので今回涙の不参加です!)と渡り合った蝦夷の族長!蝦夷の巨人・アテルイが、筋骨隆々の上半身を惜しげもなく披露して太鼓を打ち鳴らしています!中継アナウンサーの石川啄木よろしく!
「なしておめはんがご自分で太鼓ただいでらのだが?(どうしてあなたがご自分で太鼓を叩いているのですか?)」
啄木!方言全開すぎ!全国見てるから、抑えて抑えて!
「ちっ。おらがお国言葉喋ってなして文句があるのだべが」
あれ?今舌打ちした!?
「アテルイさん。なしておめはんが太鼓を?」
「アテルイは蝦夷を誇りに思う。ゆえに、アテルイは蝦夷の志が連綿と受け継がれし、岩手県がとても大切だ」
「ほぉ、それがなして太鼓さただくこどに?(それがどうして太鼓を叩くことに?)」
アテルイは自慢の髭を撫でつけ、にかっと微笑んだ。
「アテルイは田村麻呂に負けた。負けたアテルイ、岩手代表に相応しくない。岩手に負けは似合わない。血で血を争う未曽有の大戦を勝ち続けた九郎義経こそ、岩手代表に相応しい。だからアテルイ、九郎を応援するために、太鼓を叩く」
なるほどぉ!!!!古の武人がまさに太鼓判を押しているというわけですね!って、あれ!?義経選手の姿が見えないぞ!?中継担当の啄木!どうなってんのー!?
「義経選手は今着替えに行ってら」
とのことですー!ハイスピードで岩手の郷土料理を完食し、あっという間に戦闘準備、流石は瞬く間に平家を追悼した、神速の名将、源義経!試合が今から楽しみですねぇ?清盛さーん?
「太子、おめぇわざとか?平家滅ぼしたアイツのことを俺に聞くなんて」
あれ?でも、息子のように可愛がってたなんて話もありますけど?
「まぁそりゃあ、常盤の連れ子だったからよ?面倒は見てやったし、ちっちぇ頃はべらぼうに可愛がってやったぜ?けど、大人になってウチを滅ぼしやがったんだ。マジで死ね義経、恩を仇で返しやがって」
ご自分も義経の父親を殺してるじゃないっすか(笑)
「「「「「「「「ハハハハハ(観客席爆笑)!!!!!!!!!!」」」」」」」」
清盛さんは逆判官贔屓するみたいですが、義経推しの人はいらっしゃいますか?
「それは勿論わたくしですよ」
バッと手を挙げたのは兼好法師!もちろんってどういうことですか?
「わたくしの『徒然草』執筆時期とね、『平家物語』が流行った時期は同時期なんですよ。ゆえに、わたくしにとって『平家物語』は少年ジャンプみたいなものなのです。義経選手は、言うなればドラゴンボールの孫悟空、ワンピースのルフィ、ジョジョ3部の承太郎なんです。その彼の真剣勝負が生で見れるのですから、今からわくわくどきどきつれづれです」
おぉ~法師がまさか平家物語のファンだったとは!実際に、一時代の剣豪と、源氏の大軍勢を率いた名将とのタイマン、前評判としては、岩手県がやや優勢でございます!し・か・し!一回戦でもお伝えしましたが、今回のタイマン、特殊能力が勝敗の限りを握るんです!もう一度説明お願いします清ちゃん!
「はい!清少納言から説明させていただきます!47都道府県を代表する皆さんは、生きた時代も、元々のスペックも大きく異なりますので、それを補うべく、天界の皆様から、各代表者に、特殊能力を賜りました!!!こちらをご覧ください!!!!!」
沖田総司
特殊能力:血まみれ狼
源義経
特殊能力:濡烏の翼
一回戦同様、能力名だけではどんな能力かは皆目見当つかないね清ちゃん(笑)
「太子の仰る通りです(笑)お二人が、どんな能力、技を繰り出すのか!注目です!会場は今度こそ、勝ち負けのある試合を見せてくれと!義経が勝つだろう!いいや新撰組だろうと!大いに盛り上がっております!勝負は間もなく!皆さま、チャンネルはそのままで!!!!CMの後、偉人決戦四十七傑!第二回戦!!! 【 京都 VS 岩手 】です!」
「「「「「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」」」」」」」」
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ふん。僕の人気は相変わらず凄いみたいだな。
岩手代表・源義経は、牛若丸時代を彷彿させる穢れ一つない白衣を身に纏い、岩手の県鳥・キジをモチーフに美しい光沢のある緑色と青緑、赤の三色でデザインされた袴を履いている。白衣にも負けない色の白さは、悲劇のヒーローである彼の儚さをより演出していた。
「弁慶。沖田総司ってどんな奴?」
義経が、見目麗しい、女のような美貌とは対照的な、生意気な口ぶりで第一の家臣に問いかける。
「何だ殿?知らないのか?幕末の京都を賑わせた、人気者。剣の腕も一流。いい相手だと思うぜ?」
「ハッハッハッハッハッ、弁慶も面白い冗談が言えるようになったね」
「ふっ、ありがとうございます。殿はやっぱり京都代表で出た方が良かったんじゃないか?」
慇懃無礼な態度で言い返す弁慶。口の悪い主従はにやりと笑い合った。
「冗談きついよ。お高く留まって、プライド高く、人が困っている時は助けの一つも出さない薄情者の法皇や朝廷がふんぞり返ったあの、素晴らしい京都に、僕みたいな強くて人気と天下無双の才覚だけの武辺者は似つかわしくないだろうさ」
生粋の京都人じゃねえか。弁慶は苦笑いした。
――沖田総司。気に入らないね。しょせん僕の二番煎じ。人気者は、僕だけでいい。
「見ててね、じいちゃん」
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「楽しみだなあ」
京都代表・沖田総司が、義経の控え室の方から、漂う覇気を察知し微笑んだ。
強い敵がいる。そしてまた、君を振れる。
天界で打ち直してもらった愛する一振りを、高々と掲げてまじまじと見つめた。
愛刀の名は加州清光。
沖田総司並びに、新撰組が歴史に名を残すことになった「池田屋事件」の死闘で折れてしまった、思い出深い一振り。
カチャ。
刃こぼれ一つない清光を鞘に納めると、新撰組装束をオマージュしただんだら模様の京紫色オーダーメイド羽織を肩にかけた。
赤みがかった紫、実にいいね。相手の返り血を浴びても、よく馴染むだろう。
その点、新撰組の浅黄色はよくなかったなぁ。血が目立って下品だったのと、洗濯する隊士たちが気の毒だったのとで。
京妖怪の百鬼夜行をあしらった和柄の着物の襟元をきゅっと締め、思いっきり深呼吸をする。
京都に恩返しをするまたとないチャンス。全盛期の力で強敵と相対できる願ってもない機会。
そして何より。
新選組が日本一になれる最初で最後の大戦。
「野郎ども、名乗りをあげろ」
いつもの近藤さんの口上を静かに口にする。
「俺たちは、新選組だ」
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