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狼の反撃

おお!京都府代表・沖田総司が、裂けた右頬の血を手のひらで拭い、ペロリと舐めた!イケメンがやると画になりますねぇえええええ!!!!!!


「私は生前、労咳に侵され、おびただしい血を吐いて、最期は病床で死にました」


沖田選手、何か話し出しました!!


「ん?特殊能力を見せてくれるんじゃなかったのかい?ふふ、まぁ好きにすればいいよ。君のような天才剣士の昔話、好きな人にはたまらないだろうからねぇ」


勝利を確信している岩手代表・源義経は、1回戦の激闘で砕けた闘技場の壁面の破片に腰掛け、見目麗しい美顔で余裕の表情です!!相変わらずの皮肉っぷりは生粋の京都人!!!!!!


「あの時は、憎くて憎くてたまりませんでした。どす黒いこの血が。だからこそ私は、八百万の神々から、血を使役する能力を賜ることにしたんです。名は、血まみれ狼」


おー―――っとぉお!!!!沖田選手が能力を口にした途端、流血して足元に出来ていた血だまりから、1匹、2匹、3匹と、深紅の獣が湧き出てきましたぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!


「3体の狼。……ふふふふふ、いいね。かわいらしいわんちゃんだ。だけど、せっかくなんだから101匹くらい出せばいいのに」

「出そうと思えば可能ですが、三匹がちょうどいいんです。私たち新選組は、京都市中の巡回は、四人一組フォーマンセルが基本でして」

「あっそ。で?まさか犬を出すだけの能力なわけないよね?ああ、ごめん、本当にそうだったら君のプライドを傷つけるところだった、ふふふふ、ごめんごめん」

「安心してください、まだありますよ」


言うや否や、沖田選手が、愛刀・加州清光を血だまりに浸しはじめたぞ!!?なにやってんだー―――!?????


「血のこびりついた刀は使いものにならないナマクラです。池田屋事件でも、迫りくる攘夷志士を斬り捨て、この清光も途中で斬れなくなった。だけど、血まみれ狼の力は、刀の常識を超える」


おおおおおおお!!!!加州清光が、鮮血を吸い込み、刀身が真っ赤に染まった!!!!!!


「加州清光・紅一振(くれないひとふり)。この子は、血を吸えば吸うほど切れ味を増して兇悪になる。正真正銘、無限に殺せる一振りと言ったところでしょうか。さぁ、反撃開始です」


沖田総司!真っ赤な加州清光を片手に、義経に向かって突進していく!!!!そして赤き狼は三方に散っていく!!!!濡烏の翼を宿す神速相手に、この連携攻撃は通用するのか!!!!!


ははは。するわけがない。義経は腰を上げて、ほくそ笑んだ。

数が増えたところで僕の速さに追いつけるわけがない。更に言えば、ナマクラにならない刀だって、僕を斬れなきゃ、結局ナマクラなんだよ。


おお!!!!!最初に義経選手を襲ったのは、2匹の狼!!!!また避けるのか義経選手!?


「避けるまでもない。英雄・義経が、鞍馬山で何匹野犬をぶっ倒したと思ってるんだい?」


義経選手、神速で距離を詰め、一瞬で二匹の狼を切り刻んだ!!!!!


「どやっ(笑)」

「「ワオオオオオオオオオオオオン!!!!」」

「あ?」


なんと、斬られた狼がそのまま義経選手に飛び掛かる!!!!


「ゾンビかよ!」


義経選手!!咄嗟の判断で、超加速して距離を置く!しかし迫るぞ沖田総司!


「血まみれ狼は生物ではないので、私が生きている限り不死身なんです、」


よっ!!!


沖田総司!加州清光で斬りかかる!けど、もちろん避けられた!!!!義経選手はすでに遠くへ逃げている!!!!


「なるほどねぇ」


はぁ、はぁ、……不死身の狼か。厄介ではないけど面倒くさいな。それに。・・・・・・はぁ、はぁ、はぁ。濡烏の翼の神速、身体に負担がでかいようだ。


おー?義経選手、心なしか疲れが感じられますよー!?ゲストの皆様どう思われますか?って、福沢諭吉さん!?目ぇつぶってるんですけど!?


「ぼくね、昔っから血が大の苦手で、見れないんだよね」


なんでゲストに来たんだこの人ー!(笑)


「「「「「「「「ハハハハハ(観客席爆笑)!!!!!!!!!!」」」」」」」」


「ようはあれだろ、白兵戦の天才をもってしても、神より賜りし能力は御しづらいってこったろ」


平清盛さん!それはどういう!?


「そりゃそうだ、神速なんて、常人だったら、一回使っただけで心臓が張り裂けちまう。現代最速の男、ウサインボルトが100m9秒58。それすら圧倒的に凌駕する高速の移動を何本もなんて芸当、神に愛された運動神経、精神力、肉体を宿した奴にしか無理なんだ。それにも限界はある」


言うなよマジクソ禿げ坊主。はぁ、はぁ。休憩なしで連続で発動させて、あと数回がいいとこかな。見栄のために使いすぎた。ははは。


「疲労が見て取れます。義経さん、貴方、神速移動は何回も出来ないんですね」

「これがハッタリかもしれないと疑わないなんて、随分信じやすい子なんだね君は。はははは」

「ハッタリでもいいです。反撃は続きますよ、加州清光・紅一振の必殺奥義、百花繚乱・朱殷(しゅあん)!!!!!!!!!!!」


おおっと沖田総司!急に子供みたいにぶんぶんと加州清光をただただ振り回した!!!!!ガチンコタイマンファイトだというのに、気が狂ったのでしょーか!?


「実況の太子の言う通りだよ、なに馬鹿みたいに振り回して、はっ!?」


ザシュザシュザシュ!!!!!!


やばい!


咄嗟に逃げるも義経は更に攻撃を食らう。


ザシュザシュザシュザシュ!!!!!!!!!

ザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュ!!!!!!!!!!!



「ぐふぁ、はぁ、っは、なんだ、今のは……」


なんということでしょう!!!!!!!!!!!!!源義経選手!!初のダウン!!!!!今のはマジで何だったんだ!!!!!辺り一面血が飛び散っていたぞー!!!!!!


「その通り。百花繚乱・朱殷は、加州清光の刀身から、吸い込んだ血を、血の刃として飛ばす奥義。いくら神速でも、あたり一面飛び散らせた血液からは逃れられない。一撃は弱いが、命中率はかなり高かったんじゃないですかね?」


油断もあったとはいえ、かなりの消耗だぞ義経選手!


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、狼だけじゃなく、飛び道具まであったとはね。正々堂々、剣でやり合おうとしてくるかと思ってたけど、ずいぶん卑怯なんだね、幕末の武士は」


義経選手、疲弊はしても、皮肉は忘れない!


「好きに仰ってください。勝ち続けなければ、終わってしまう」

「……そうだね」


おお!?初めて、義経選手、沖田選手の言葉に同意した。


「僕もそう思うよ。勝者こそが正義。それが世界の理。勝たなきゃ駄目なんだ。僕は、自分を信じて勝ち続け、戦い続けるべきだったんだ」

「義経さん?」


****************************************


壇ノ浦の戦いで平家を討ち果たし、源氏の世になったあの時、謀反の疑いをかけられる前に、謀反を起こし、自分が源氏の棟梁に、鎌倉殿になるべきだった。


奥州藤原氏に匿われ、秀衡のじいちゃんが亡くなった時、すぐに藤原家の実権を奪って、鎌倉とやりあうべきだった。


裏切者の泰衡の軍勢相手に衣川で散るを良しとせず、人々の願ったように、蝦夷へ、海外へ落ち延び、再起を図るべきだった。


僕は、その先が修羅の道であれ、平家を滅ぼしたその時から、覚悟を決めて、この才覚を持ってして、戦い続けるべきだったんだ。


しかし、僕はしなかった。兄と戦いたくなかった。藤原家を裏切れなかった。逃げるのに疲れてしまった。


******************************************



「逃げるのは、源義経の性に合わない。ありがとう沖田総司」

「義経さん?」


――お前の活躍を、この奥州のじじいの耳にまで轟かせてくれ。なぁ、九郎。


秀衡じいちゃん。俺は、貴方の愛した岩手の代表として、必ず勝つよ。


「どんな難敵にも勝つのが僕らしい、それを思い出すことが出来た。お礼に、平安時代、最強の男の武をお見せしよう。ここからは、本気の僕だ」


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