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元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?  作者: 雨宮羽那
第4章

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36・宰相の妻は見てはいけないものを見る


 会場となっているフォート家の庭園には、着飾った多くの紳士淑女がいた。

 色とりどりの女性のドレスがよく晴れた青空に映えていて美しい。


 私たちが会場に入った途端、ほぼすべての視線がこちらに集まった。

 

「きゃあ! リシャルト様よ」

 

「え、え、初めてお目にかかったわ……。かっこいい……」


 遠巻きに、女性たちの黄色い声が聞こえる。

 リシャルト様ってお腹は真っ黒かもしれないけど、そんなのどうでも良くなるくらいの王子様系イケメンだもんね。

 リシャルト様に視線が集まるのはよく分かる。


「なに、隣のあの女……。黒髪黒目って」

 

「あれ、元聖女様じゃないか?」

 

「いなくなったって聞いてたが、なんでこんなところに……?」


 リシャルト様へ集まる注目と同じくらい、私にも視線は集まっていた。

 気持ちはわかるけど……しんどい。


「キキョウ、周りの声は気にしなくて良いですからね」


 庭の中央へ進みながら、リシャルト様が微笑みながらそっと耳打ちしてくれる。

 とは言ってもな……。私の見た目は悪い意味で目立つから、隣に並ばない方がいいのでは、と改めて思ってしまう。


「なんであんな忌まわしい見た目の女が、リシャルト様の隣にいるの?」


 遠くからそんな声がひそひそと聞こえて、私はびくりとしてしまった。

 リシャルト様に求婚されて若干浮かれていたが、冷静に考えると私ってリシャルト様の評判を下げるのでは……?


「リシャルト様……」


 不安になって、ちらとリシャルト様を見上げる。リシャルト様はふっと笑った。


「今日のあなたは一段と美しい。あなたの黒い髪も瞳も、僕の大切な宝物です」


 リシャルト様は幸せそうに言ってくれる。

 ああ、あれこれ考えた私がバカみたいだ。

 リシャルト様がそんなふうに笑ってくれるなら、いいじゃないか。

 私がリシャルト様の笑顔を見て幸せになるなら、それで。


「……ありがとう、ございます」


 

「おお、よく来たな。フォルスターの坊ちゃん」


 中央まで行くと、そこには大きなテーブルと大柄な貴族の男性が立っていた。

 

「本日はお招き頂きありがとうございます。フォート卿」

 

 リシャルト様はにこやかな笑顔で挨拶をする。

 私もならってお辞儀をした。

 

 どうやらこのガタイのいい男性がフォート公爵様らしい。伸びた髭が印象的。貴族のきらびやかな服装よりも、軍服の方が似合いそうだ。

 

「まあまあ、固い挨拶はよしとして飲もうや」


 そんな酒かなにかじゃあるまいし……。

 

 明るい声音で話しかけてきた40歳くらいのその男性は、私とリシャルト様にカップとソーサーを渡してきた。

 と思ったらすぐにポットから紅茶を注がれる。


 リシャルト様が言っていたようにとてもフランクな方なのはいいのだが、行動が荒い……。


 貴族の公爵様、というより、下町のお父さんみたいな雰囲気だ。ある意味親近感を覚える。


「こっちの子が、噂のリシャルトの新妻か?」


「は、初めまして。キキョウと申します」


 フォート公爵様から視線を向けられて、私は慌てて自己紹介をした。

 フォート公爵様はがははと豪快に笑う。


「俺はジャック・フォート。王国第一騎士団の団長もやっている。よろしくな」


 なるほど。通りでガタイがいいわけだ。軍服が似合いそう、と思ったのも間違いではなかったらしい。


「リシャルトの父親とは幼なじみでなぁ……。俺はこいつが赤子のときから知ってるわけよ」


「フォート卿、やめてください。恥ずかしい」


 リシャルト様は言葉通り恥ずかしそうだ。たしかに自分の幼い頃まで知られているというのは少し気恥しいものがあるだろう。


「まさか聖女様と結婚するとはなぁ……」


 しみじみとフォート公爵様が言う。まるで親戚のおじさんみたいだ……。


「今、教会やら王城やらごたついてんのは知ってるぜ。ま、何があったかは今は聞かねぇから、今日は楽しんでいってくれや」


「ありがとうございます、フォート卿。それでは参りましょうか、キキョウ」


 リシャルト様から先日話を聞いたが、やはり王城内や教会は大変そうだ。

 リシャルト様についてその場を離れようとしたそのとき、フォート公爵様が私を呼び止めた。


「ああ、ちょっと待った」


「え?」


「もし、お嬢ちゃんの見た目になんか言ってくるやつがいたら教えてくれな。この茶会でそんな無粋なことを言うやつは、俺がつまみ出すからよ」


 あえて少し大きめな声で、フォート公爵様はそう言った。

 ちらちらとこちらの様子を伺っていた紳士淑女たちが一斉に目をそらす。


 この公爵様、本当に気がいい人だ。


「ありがとうございます」


 リシャルト様に求婚されてからというもの、私の周りはとてもいい人ばかりになった。

 私の容姿にとやかく言ってくる人はいないし、みな温かい。


「行きましょうか、キキョウ」


「はい」


 それはすべて、リシャルト様のおかげなのだろう。

 私は、リシャルト様に微笑みを返した。



 ◇◇◇◇◇◇


 

 パーティー会場にはサンドイッチや様々なケーキが用意されていた。まるで宝石のように飾られていて、目にも楽しい。

 リシャルト様は焼きたてのスコーンができたという話を聞いて、私の分まで取りに行ってくると人混みの中に行ってしまった。

 

 先程のフォート公爵様の一言が影響しているのか、ほかの貴族たちは私を遠巻きにしており近づいてこない。

 ありがたいやら気まずいやら……。


 人の少ないところで待っていようと、生垣の前に移動して。

 そうして、私は見てはいけないもの(?)を見てしまったのだ。


「エマちゃん、これも美味しいよ」


「僕が持ってきたのも食べて」

 

「ええー、エマこんなに食べられなぁい」


 アルバートの恋人であり、聖女代理として忙しいはずの男爵令嬢エマ・アンダーソンが、数人の若い男性貴族に囲まれて楽しそうにしているところを。


 え、これ浮気現場……?



 

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