表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?  作者: 雨宮羽那
第3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/64

29・宰相の妻はようやく自覚する


「キ、キキョウ! 大丈夫ですか!! されたのは頬へのキスだけですか!? ほ、他に何か嫌なことはされていませんか!?」


 リシャルト様は私のそばまで走ってくると、強く私の肩を掴んだ。顔をのぞき込んでくる。

 リシャルト様がこんなに慌てているのを初めて見た。

 ここまで慌てている人が目の前にいると、逆にこちらは冷静になるというものだ。


「だ、大丈夫ですよ。頬へキスされただけです。それに、エルウィン様にとっては挨拶なんだと思いますよ……?」


 多分。

 なんだかんだこの世界で暮らして16年。この国では、挨拶で頬へキスをする習慣はなかったように思うが、エルウィン様は仕事でよく外国へ行っているようだから、その影響とかもあるのかもしれない。多分。


「そんなわけはありません。エルウィン殿下は多分僕への当てつけで……!」


 リシャルト様は言いながら、ポケットからハンカチを取り出し私の頬を拭った。エルウィン様は軽く触れただけだし、汚れてなんていないのに……。


「僕だってまだ、キキョウの頬にキスしたことなんてないのに……!」


 ストレートに言われて、思わずかっと顔が熱くなった。


 ――リシャルト様は、私のこと……どう思っているんだろう。


 好意は、痛いほど伝わってくる。

 リシャルト様に『好き』だと言われたことがないけれど、今まで散々「幸せにしたい」だの「大切に思っている」だの言われてきた。

 向けられている好意を自惚れだと思うほどには鈍くないつもりだ。


 だけど、それは果たして恋愛的なものなのだろうか。

 私が昔リシャルト様の命を助けたから、恩を返したいと思ってくれているだけなんじゃないのか。

 求婚までされていると言うのに、好意を示す確定的な言葉を言われたことがないから、踏み切れない。


 ――ああ、私、踏み込みたいんだ。


 ようやく私は自覚した。

 私はやっぱり、リシャルト様のことが好きなんだ。

 それはもう、多分なんかじゃない。

 好きと言われたいし、この人の腕の中に迷うことなく飛び込みたいんだ。


「リシャルト様……。リシャルト様は私のこと、どう思っているんですか?」


 ――私、卑怯だ。


 好きなら好きだと、自分から言えばいい。

 だけれど、もしリシャルト様が恋愛的な『好き』じゃなかったら?

 ほんのわずかな恐怖が首をもたげるのだ。

 ついこの間、首筋にキスまでされたというのに、それでも怖いのだ。


「ど、どうしたのですか、突然。もちろん、とても大切ですよ」


 リシャルト様が当たり前だとでもいうように答えてくれる。

 少し前までは、その答えだけで嬉しかった。満足だった。

 だけど今は、それ以上がほしい。欲張りだ。

 

「それは私のことを、恋愛的な意味で『好き』ということですか?」


 リシャルト様を見上げる。思ってもいない一言だったのか、リシャルト様は私の言葉に一瞬驚いたようだった。


「そんなの――」

 

 勇気がほしい。

 勇気を出さなければ。

 エルウィン様だって言ってくれたじゃないか。

『本人に聞いてみるといいよ』と。


 リシャルト様が何かを言おうとしている。

 だけど、もう言葉を止められなかった。


「私は……リシャルト様のことを、好きになってしまったんです」


「……っ!?」


 リシャルト様が息を飲む。

 次の瞬間、私は近くにあった部屋の中に連れ込まれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ