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第四十四話


 エドマンの言っていた通り、すぐにエクレアがやって来た。


「遅くなってごめんね」

「こっちも丁度準備が終わったところだから大丈夫よ」

「何かあったの?」

「ホーリス公が来ていたのよ」


 エクレアは納得したように頷いた。


「朝一番で用事を押し付けてきたと思ったら、ここへ来るつもりだったのね」

「どうして一緒に来なかったのかしら?」

「二人に気を使ったんじゃない?」


 そうして指した先にはモードレットとテオドールがいた。

 ―――あぁなるほど。


「上司がいたら畏まってしまうものね」


 特にテオドールは凄そうだ。

 実家の当主に当たるわけだしな。


「そんなことは良いからさっさと始めましょ」

「ええ、そうね」


 エクレアについて訓練を始めた。

 コルツたち騎士三人組は早速手合わせを始める。


「ルーティア、今日はこっちを見てくれないかしら?」

「セルフィ?ええ、良いわよ。どうしたの?」

「む、今日はそっちへ行くのか」


 俺を待っていたウィルが話しかけて来た。


「ええ、そうなるわね」

「それなら俺は帰らせて貰う」

「彼らと一緒に訓練しても良いのよ?」

「いや、お前がいないなら傭兵たちの訓練を優先したい」


 俺がいれば連携などの訓練も出来る。

 だが、俺がいなければ純粋な手合わせしか出来ない。

 それよりは傭兵たちの底上げをして貰った方が良いだろう。


「分かったわ。またお願いね」

「明日また来る」


 そう言ってウィルは去って行った。


「ごめんなさい。それでどうしたのかしら?」

「お姫様がね。中々魔法を使えないのよ」

「身体強化は出来ているのに?」


 エクレアは身体強化を俺と同等に出来る。

 それで魔法が使えないなんてことはちょっと考えにくい。


「魔法を使えない者もいるのかしら?」

「いないこともないけど、まずいないわ。魔力はそこにあるんだもの」

「私みたいに空気中の魔力を使えないことは?」

「ええ、お姫様も多分特殊な魔法を使うタイプだと思うわ」


 俺もそうだが、空気中の魔力を使えない者もいる。

 自分の安心出来る魔力を使わないと発動できないのだ。

 俺の回復魔法も同じ。


 それは言ってしまえば、暖炉に油を入れられないようなもの。

 油を使うと物凄い火力で燃えてしまう。


「回復魔法ではないのよね?」

「ええ、既にあるような魔法は一通り試したわ」

「今まで誰も使えなかった魔法ってわけね」


 そんなのどうやって探したら良いんだ?

 セルフィに見つけられなかったのに俺が見つけるのは無理だと思うんだが……。


「どうやって探すつもりなの?」

「文献を漁るのが一番ね」

「文献って言われても……」


 うちにあるような本なら、王城にもあるだろ。

 俺に聞くより、そっちを探した方が早い。


「それがちょっと特殊な本で、王城にはあまり無いのよ」

「そうなの?」

「あなたの家に絵本はないかしら?」

「絵本……?」


 魔法って全部絵本を参考にしてたのか!?


「教会が魔法を禁忌に指定してね。ほとんどの文献は燃やされてしまったみたいなの」

「なるほど」

「なんだけどね。絵本は伝説とかいっぱいあるじゃない?」


 なるほど、伝説は教会にとって有利なものも多いから残されたってわけか。

 一歩間違えば同じく燃やされてもおかしくはなかった。

 そんなちょっとした気まぐれのお陰で俺たちは魔法を使えているんだな。


「それで今も生き残ってるわけね」

「そうよ」

「絵本ならお兄様が好きでいっぱい持っているわ」

「本当!?見せてくれないかしら?」


 ―――それは多分大丈夫だと思う。

 でも、ただで見せて貰うってのも気が引ける。

 ユージアは魔法に強い憧れを持っていたな。


「それならお兄様を研究室に呼んであげてください。今学園へと通っています」

「あなたのお兄さんなら絵本にも詳しそうね。今度呼ぶわ」


 多分これで勝手に見ても許してくれるはずだ。

 俺はエクレアとセルフィを一緒に、ユージアの部屋を訪れた。

 部屋に入った俺は、本棚を指差す。


「あれがそうよ」

「こんなにいっぱいあるのね!」


 この中にセルフィの知らない絵本があれば良いのだが……。


「見たことない本はあったかしら?」

「この三冊は見たことないわ」


 セルフィは手にした本をテーブルの上に置いた。

 それらはいずれもかなり古い本だ。


「絵本は貴族向けに何度も増刷されているけど、これらはあまりされなかったのね」


 増刷は全て手書きで行われる大変な作業だ。

 だから、比べれば少しずつ絵も内容も違ったりする。


「これだけ古いものなら原典に近いことが書いてあるかも知れない」

「新しいことが分かる可能性も十分あるってわけね」

「ええ、一つずつ読むわよ」


 三人でテーブルを囲み、一冊を開いた。

 それは古の秘薬を求めて主人公が旅をするという話だ。

 だが、そこには見たこともない生物が掛かれていた。

 それを見たエクレアが指を差す。


「このドラゴンって本当にいるのかしら?」

「秘薬の材料がこのトカゲみたい生き物の血ってのも凄いわね」

「ドラゴンって要は魔物でしょ?―――ならある程度は説明出来るわよ」


 これだけの巨大生物を生み出すって、一体どれだけの魔力が必要なんだ。


「これだけの生物を生み出すには途方もない魔力が必要でしょうね。ならその血も―――」

「魔力の塊ってわけね」

「これは秘薬を手に入れたところで終わっちゃってるけど、その後が気になるわ」

「どうして?」

「大きな魔力を受けた者は魔物になってしまう。多分この秘薬もそうよ」


 ―――確かにそうだ。

 魔物になってしまうほどの魔力の塊であれば、莫大な力を得られるかも知れない。

 だとしても、今はドラゴンなんて聞いたこともない。


「昔は今よりも魔力が濃かったのかしら?」

「その可能性もあると思ってる」

「―――どうして?」

「魔物の巣の核が魔法の一種なんじゃないかと思ってるのよ」


 それは一体どういうことだろう?

 考えても分からないので、セルフィの言葉を待った。


「核って要は魔力を集めて魔物を生み出す装置でしょ?」

「ええ、そうね」

「魔法を使えば魔力が消費されるように、核も魔力を消費してる筈なの」


 なるほど、そんな考え方もあるのか。

 だが、エクレアはそれに驚くべき答えを返す。


「―――そのために人間が作り出したってこと?」


 それは―――、あるかも知れない。

 レダティック王国が出来るよりずっと前、この地方は誰も住まない辺境の地だった。

 例え魔物が生み出されたとしても、襲ってくる前に霧散してしまう。

 もし核を生み出すことが可能なら、自分の住む場所を安全に出来るのだ。


「今でこそゴブリンやウルフがほとんどだけど、昔はもっと凶悪な魔物が生み出されていたんじゃないかしら?」

「―――そうかも知れないわね」

「でも、それなら核を放っておけば魔力を使い切って魔物がいなくなったりしないかな?」


 エクレアの言った通り、話を聞いていると核を壊してしまうのは惜しいと感じてしまう。


「いえ、多分今はもう追い付いていないわ」


 マーカスはこの十年で少しずつ魔物が増えていると言っていた。

 セルフィの見立てが正しければ、今後は増えるだけではなく強い魔物も生み出されてしまう。


「つまり、このまま放っておくとどんどん強くなっていくってこと?」

「そうなるわね」


 俺が破壊したせいで均衡が崩れてしまったというわけか。

 このまま放置してしまえば、この地は人が住めなくなってしまう。


「魔法を使って魔力を消費出来れば良いんだけど、今はそれも出来ないわ」

「だから壊すしかないってわけね」

「核を壊して、そこら中で魔物が出現するようになれば状況は変わる筈よ」


 それはそれで怖いんだが……。

 でも、核を使って積極的に魔力を集めなければ、しばらくは魔物が生み出されるほど集まることはないだろう。

 その安全な期間にいくらでも対策出来るってわけか。


「私が作った魔法の竃のように、平和な使い道だっていっぱいあるわ」

「―――そうね。そういう時代が来ると良いわね」


 魔法が当たり前に使われる時代か……。

 今は全然想像も付かないけど、遠くない内にきっとやってくる。


「この本はこのくらいね。次に移りましょ」

「ええ、次はこれを読むわよ」


 その本は神の泉という話だ。

 辺境にあるというこの泉は、浸かれば不治の病でも失った腕でもたちまち治してしまう。

 その泉を求めて主人公が旅をするという話だ。


「これって回復魔法のことよね?」

「不治の病を治すなんて凄いわね」


 エクレアがこちらを見てニヤリと笑う。


「ルーティアもこのくらい出来るかもね?」

「私が治せるのはちょっとした怪我だけ、こんなには流石に無理よ」

「神様と同じだけの魔力があれば?」

「それだけあれば出来るかも知れないわね」


 この本に書かれているようなことは無理でも、もう少し重い怪我を治せるようになりたい。

 戦場ですぐ治せれば死者を格段に減らせる筈だ。

 討伐にはあまり使えないと思っていた回復魔法だけど、もうちょっと訓練しようかな。


「この本も凄いけど、知らない魔法ではないわね」

「ええ、そうね」

「残るは後一冊―――」


 セルフィはそう言って最後の本を開いた。

ウィルが帰った描写が抜けていたので修正しました。

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