表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Silver Sisters 2 ~HARUNA~  作者: 瑞城弥生
第三章 カーズ
13/40

 魔法少女にとって、王国への潜入は簡単だった。と言うより、王国の入国管理はザルだった。国際的な犯罪者であっても、割りと簡単に入り込める。

 ただし、疑わしき人物は完璧な監視下に置かれていて、ほんの些細な犯罪でも即刻逮捕されてしまう。それだけ警察力は優秀だった。場合によっては、その場でメイドよって処刑されることもある。

 そういう理由で、リアでも簡単に入国できた。

 シスカ国際空港は、シスカの街なかからバスで三十分ほどの立地に有る。駅前で連絡バスを降りたリアは、早速オンダに教えられた店へと向かった。


 駅前の商店街を南へ進み、アーケードの途切れたところを右に折れてから、細い路地を進んでいくと、怪しげな店があった。

 看板には雑貨と書かれている。

 取り扱っている商品は、たしかに雑貨に違いないが、外観からして怪しかった。店内はいかにも魔女がいそうな雰囲気で、常人には近寄りがたいディスプレイになっていた。

 しかしどういうわけか、店の中は制服姿の女子高生で溢れかえっている。

 こういう場所に来るのだからと、リアも久しぶりに軍服を脱いで、可愛らしいワンピースでやってきた。自分では似合っているとは思わないが、同室の同僚には好評だった。

 確かに十代の頃にはこういう服装にも憧れた。見た目は十代とは言え、実際はアラサーであるリアにとっては、少々ハズカシイ服装ではある。


「あれ、可愛くない?」


 すれ違う女子高生にそう言われ、リアの顔が赤くなる。ハズカシイという感情も、随分久しぶりだった。


 リアは、店内の商品の奇抜さに顔をしかめながら、それらには見向きもせず、まっすぐとレジへ向かう。途中、店員は何人かいたけれどみな若かった。リアは一番奥のレジで、一番偉そうにしている娘に狙いを定めた。

 他の店員とは雰囲気が少し違った。


「いらっしゃいませ」


 店員は輝かんばかりの笑顔になる。

 店の雰囲気とはかけ離れた爽やかさだ。店のコンセプトが全く不明である。


「ちょっと聞きたいんだけれど」


 そんな考えをかなぐり捨てて、リアは店員に問いかける。

 聞くべきことは一つだけだ。


「はい、どのような商品をお探しですか」


 店員は、ただの客だと思ってそう答えた。


「いや商品ではなく」


 しかしリアが探しているのは物ではなく、人である。


「はい?」

「ジルに会いたい」


 店員がかすかに動揺した。

 通常なら見逃してしまうほど僅かな反応だった。


「申し訳ございません、そのような人物は当店には――」


 冷静を装うために笑いながら、店員はリアに対して否定で答える。


「ジルを呼んでくれ、私の名前はリアだ。そう伝えてくれればわかる」  


 店員の笑顔が消えた。


「お客様、申し訳ございませんが、一旦お引き取りください」


 その言葉とほぼ同時に、リアの端末にメールが届いた。


『本日二十二時に、裏の公園に来てください。ジル』


 メールを確認したリアは、店員を一瞥する。

 店員は、今度は冷たく微笑んだ。


「分かったよ。ありがとう」


 回れ右して店を出たリアは、アーケードへと戻ってから、夜まで喫茶店で時間をつぶすことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ