思い出にかき氷をそえて
「しゃちょう~」
真新しい石造りの建物の最上階にある社長室に、若いメイドが飛び込んできた。
夏なのに走ってたせいでびっしょり汗をかいている。
窓から外を眺めていたスーツ姿の男が振り返る。
「ミーシャ。社長秘書なんだからおしとやかにって言ってるじゃん」
「だってって・・・。たいへんなんでしゅ~。し、しゃちょう~。・・・あでっ」
慌てすぎて舌をかむミーシャ。
お手上げのポーズをとり男が答える。
「いつものアルフでいいよ。普通にしゃべって。
で、どしたの? 」
てへっ。
と右手で頭を叩き舌を出すミーシャ。
「会社の下に、冒険者組合の奴らが。製氷器の販売を中止しろって。社長を出せって騒いでるの」
「知ってるよ。ここからみてたからね」
「今出てったらマジでやばいよ。どうしよう? 」
「ほっとこう。どうせ、貴族達にそそのかされたんだろ。しかも、想定内だし 」
「大丈夫かしら? 」
「大丈夫だよ。・・・製氷器は彼らの為のものでもあるからね」
ため息をつくとアルフはまた窓の方をながめる。
とこまでも続く海を眺め、目を細める。
アルフは、遠い昔の夏の日を思い出していた。
(マルコフ、やっとここまできたよ)
あの日も、今日みたいに暑かったなあ。
うちの親父は、結構有名な冒険者だった。
魔法も使えないのに、大剣一本でモンスターに挑む英雄だった。
あちこち冒険していて家には帰って来なかった。
女好きで、あちこちで浮き名を流していたらしい。
母さんは、オヤジ達に混じって漁にでて僕を育ててくれた。
漁に出たら、2、3日は帰ってこない。
そんな僕の相手をしてくれたのが、氷魔法使いのマルコフだった。
オヤジと言うよりは、じいちゃんに近い感じだったかな。
昔は、冒険者もやってたらしい。
魔法使いなのに、ツララを何本か飛ばせるぐらいの魔力しかなかったので、早々と引退したらしい。
氷魔法の力を生かして、細々と氷屋を営んでいた。
僕たち子供達には結構人気だった。
赤色や青色の甘いシロップのかかったかき氷は絶品だった。
僕の住んでいた島は、ヒートアイランドと言って一年中暖かい島だ。
島の中心にはでかい火山があり、いつも噴火してる。
溶岩が町に流れ込むのを氷魔法の使い手達が凍らせて防いでいる。
この島では、氷魔法の使い手は特権階級だ。
領主を始め、貴族たちの家には代々氷魔法使いが生まれ町を守っていた。
貴族達は、町を守っているからと税金をとり贅沢な暮らしをしていた。
僕達庶民とは、人間と家畜のような差があった。
貴族達に歯向かうと庶民は死刑になってしまう。だから、貴族達に逆らう者は誰もいなかった。
それが、この島で幸せに暮らす方法だったから。
そんなだから、マルコフは僕達庶民からすればちょっとしたヒーローだ。
貴族達からは、出来損ないとバカにされていたけど。
あの日は、特に暑かった。
火山の噴火がいつもよりでかかったんだ。
貴族達は、自分達の力では押さえきれないとみると我先に船に乗って逃げていった。
町の人も漁舟で避難しようと港はごったがえしていた。
そんな中、マルコフだけが丸太を氷らせたりしながら溶岩を塞き止めようとしていた。
一緒に逃げようとマルコフに声をかけると
「アルフも早く逃げなさい。私のこんなちっぽけな力でも町のみんなが避難するぐらいの時間稼ぎにはなるからね」
「なんでえ。マルコフ死んじゃうかも知れないんだよ」
「人は、いつかは死んじゃうものよ。もし、死んじゃってもみんなの役にたってなら本望よ。私に出来る事してるだけね。この町が好きだから。・・・さあ、アルフもいきなさい」
手をふると、マルコフはゆっくりと溶岩に向かっていった。
溶岩で町はほとんど壊滅したけど、奇跡的に死亡者はいなかった。
僕は、あのときのマルコフの笑顔を忘れない。
帰ってきた貴族達は、何事もなかったように支配者としてふるまった。
町の人もいままでどおりおとなしく従った。
そして、僕は大陸へ渡り冒険者になった。
氷魔法が使えなくても、でかい氷が作れる方法を探して・・・
冒険者としては、三流だったけど、魔法石を利用した魔道具がヒットして一財産つくった。
そして、帰ってきた。
「アルフ~。どうするの~? 」
「大丈夫。もう稼働できるから」
「冒険者の奴らなだれこんできたよ~」
「だから、大丈夫だって。一階には女好きの大剣使いがいるだろう」
「あっ! 」
「じゃ、いこうか」
ミーシヤと手を繋ぎ屋上に上がる。
百本はあるだろうか、金属で出来た管が火山の方を向いて唸っていた。
この建物自体が、製氷器だった。
燃料は、魔法石と冒険者達の魔力。
(・・・マルコフいくよ)
「製氷器起動! 」
百本の管から、天高くツララが発射される。
ツララは何時間も降り続いた。
やがて、ツララが噴火口を覆っていく。
永遠に降り続く雪のように。
火山はツララで真っ白になった。
噴火口は溶岩がにじみ出てまるでかき氷のシロップのようだった。
もう、誰も製氷器の邪魔をするものはいなかった。
でかい、かき氷に見とれていた。
(マルコフやったよ)
貴族達は、特権階級じゃなくなったことを恐れ、町中の人々は歓喜に震えた。
アルフがミーシャの肩を抱くと彼女かつぶやいた。
「おいしそ~! 」
私の好きな映画、ニューシネマパラダイスのオマージュです。
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