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異世界乙女に呼ばれたけれど俺にチート能力をくれ  作者: たけのこーた
第一章:終焉の魔女
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第四十二話:ボーイ・ミーツ・ガール




「ああ、出会ってせいぜい一週間一緒にいただけだ。こいつの考えも全然わからん」

「だったらワルプルギスに」

「でもなんでかなぁ、俺の隣から居なくなると思うと胸が苦しくなるんだよ」


得て気付くものよりも失いそうになって気付くものの方がはるかに多いのは

きっと俺が馬鹿なのだからだろう。

俺は左腕を懐に入れる。


「――砕地爆破魔法カタストロフ!」


ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオン!

凄まじい爆発と衝撃波が生じる。

しかし、沈黙の魔女は無傷だった。

彼女は少し嘲るように笑う。


「ふん。その程度の砕地爆破魔法カタストロフなんて私に効くとでも――」

「ああ、そうだな。確かにお前には効かないだろうよ」

「っ!?」


確かに無傷だ、沈黙の魔女は。

だが彼女に捕まれていた俺の右腕はちぎれ飛んだ。

右肩から噴水の様に血が噴き出していく。

そして凄まじい勢いのまま俺は吹き飛んでいく。

その直線上には――ラピュセルが倒れていた。


「自分の右腕を犠牲にしたですって!?」

「うおおおおおおおおおおおおおおお!」

「愚かな選択を、チートギフトならば許可しなければ――」

「能力は使わねぇよ、俺はただ――届けるだけだ」


お前は言ったな、これはワルプルギス個人の戦いではないと。

だがこっちにとってもそれは同じだ。これは俺一人、いや俺たち二人の戦いではない。

ラピュセル、お前には渡すものがあるんだ。

俺は左腕を懐に入れると、一枚の輝く鱗を取り出す。

グラニュートの首の付け根、頭部に生えていた一枚の特別な鱗。

他とは桁違いの魔力を帯びている、核ともいえる竜の逆鱗。

これは死に際、頭だけになりつつ――

チートギフトによる蘇生を微笑みながら拒否したあいつから託されたものだ。

俺はそれを心核代わりにラピュセルの胸に突き立てると力を込めて砕く。


「受け取れーー!」


死に際のグラニュートの言葉が脳裏をよぎる。


【なあヤマト。五千年恋し、恋に焦がれた、俺が恋したあの女を】

【あのどうしようもない女を、救ってやってくれ】


あの時はたかが背中に乗せるだけでやけにハードな試練を課したものだと疑問も持ったが。

なあグラニュート、ひょっとしてお前は。

――最初から命を捨てる覚悟で俺たちの旅に同行したんじゃないか?


「……馬鹿ね、そんなことを想っていただなんて」


ラピュセルは立ち上がる。

その頬を一筋の涙が伝った。


「本当に、馬鹿な竜」

「ラピュセル!くっ貴様――!」


ラピュセルは俺を庇うように前に立ちふさがる。


「あなたは強いわ。でも強さと戦いに勝つことは別なのよ?」

「無駄よ、あなたの能力は何であっても許可しない」

「あなたには、私の最弱の能力を見せてあげる」

「何を……!」

『これは宇宙開闢の光、全ての始まり。そして――全ての終わり』

「――砕宙ビッグバン

「が!?きゃああああああああああああああ!」


それは手のひらに収まるくらいの光だった。

暴力的なものではない、暖かくほんわりとした光。

それはゆっくりと沈黙の魔女の方へ移動していくと、その内部へと取り込まれていった。

その直後、鶏の首を絞めたような断末魔が周囲に響き渡る。


「なに、これ。処理が。おいつか、な……」

「それはそうでしょう、これは宇宙全てを滅ぼす光」

「が、ぐ、ああああああ!」

「宇宙で現在行われている全ての処理量をはるかに上回っているわ」

「……はずがない、いくら開闢の魔女だからとはいえこんな魔力を持てるはずがない!」

「ええそうね、だから定義を弄ったのよ。正確には光に質量を持たせたの」

「なっ……!」

「この世界を誰が作ったと思ってるのかしら?」


「わたしが演算をやめたら、あなたたちも、みんな、死ぬわよ……!」

「ええ、だからこの能力は最弱なのよ。普通に撃つと私もろともすべてが滅んでしまう」

「だったら、なんで……!」

「あなたを信頼してるからよ」

「なにをっ……!」

「あなた。ワルプルギスが好きなんでしょう?」

「……気付いていたの」

「ままならないものね、恋というのは」

「……ふ。それはあなたも、おな、じ……」


それ以降ウプムプマプラプは完全に沈黙した。

血液が光になったかのように真っ白のまま静止した。


「全ての生体機能を演算に回したわね」

「なあラピュセル、わがままを言っていいか?」

「……352376」

「え?」

「さっきの中で沈黙の魔女がワルプルギスに対して行使した幻覚解除、幻覚対策の種類よ」

「ということは、つまり……」

「普通自分に見えてない幻覚を予測して対策を建てるなんて不可能よ。プールをかき混ぜてその中に落ちている針の穴に糸を通すような確率――でも引けたみたいね」


「それはそうだよ、だってボクがそうなるように組んでいるんだもの」


俺たちはその声のする方向を振り返る。

そこには微笑みを浮かべるワルプルギスの姿があった。


「ありがとう、沈黙の魔女を消してくれて」





「沈黙の魔女には未来改変が効かないし、何をどう変えたかまで把握されちゃってたから

困ってたんだ。あくまで手を下すのは間接的に――君たちにやってもらわないと」


「これで自由に能力が使える」



「別に自由に能力が使えるようになったのはあなただけじゃないのよ?」


シャルデンテは不敵に笑う


過去改変デウス・エクス・マキナ



「シャルデンテ、君の能力はボクと互角のものだ」

「でもね、君とボクとじゃ時間改変の能力を使った“経験”が違う」

「くっ……!」

「伊達にこの能力だけで」


「打ち消しあっても能力を獲得するよう未来に細工しておけばいいだけなんだから」


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