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異世界乙女に呼ばれたけれど俺にチート能力をくれ  作者: たけのこーた
第一章:終焉の魔女
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第四十話:沈黙の魔女

レッドエリアは夜を迎えようとしていた。

夜になればこの大地は赤くならない、むしろ一面に青い大地が広がっているように感じる。

何もない静寂、辺りは不気味なほど静かだ。

そんな静寂の中で、俺はワルプルギスと相対していた。


「一人かい?折角助けてもらった命を捨てに来るなんてね」

「そんなことはどうでもいい!てめえ、ラピュセルに何をした!」

「ふふ、ちょっと心核を弄らせてもらっただけだよ」

「チートギフトだと……!」

「君が持ってて羨ましかったから。ボクがチートギフトを使えるように未来改変したのさ」


それは、こいつが望めばどんな能力でも手に入れる事が出来るという事を意味する。

こいつは――こいつはあまりにも規格外チートすぎる。


「お前がふざけた能力を持ってることはよくわかった」

「『だがそれは、お前を見逃す理由にはならないんだよ!』って言うんだろ?」

「だがそれは、お前を見逃す理由にはならないんだよ!」

「ふふ。おねえさまが好きそうな馬鹿だよ」

「ああ。その点、お前がラピュセルに好かれることはないよ」

「ハ!負け犬の遠吠えかい?」

「未来が見えるお前なら、分かっているはずだ」

「こいつ……!」

「図星かよ?」

「黙れ」


ワルプルギスは気絶したラピュセルをそっと地面に置く。


「黙っておねえさまから手を引けば無事に帰れたのに」

「ほう?俺はラピュセルに殺されるんじゃなかったのか?」

「ああ、それは絶対だ。だから殺さない。でも」


ワルプルギスは飛び掛かってくる。


「五体満足じゃ帰さない。そうだな、両目を抉られるのと両腕をもがれるのどっちがいい?」


俺は笑う。


「なんだそれは、して欲しい事のリクエストか?」

「がっーー!?」


ワルプルギスの身体が宙を舞う。

何故宙を舞ったか?

簡単だ、俺が殴り飛ばしたから。

ワルプルギスはきょとんと眼を見開く。

何が起こっているか理解できなかったらしい。


「な、なんで……!」

「教えてやろう、ワルプルギス」

「――!」

「お前の未来予知は俺には効かない」

「まさか、こいつ――!」

「欲をかいたな、ワルプルギス」


ワルプルギスは歯ぎしりして俺を睨みつける。


「ボクの心を通して、未来を見ているのか!」

「ああそうだ!ついでに未来を見たお前がどう動くか、こちらは手に取るようにわかる!」

「くっ――!」

「俺は、お前より未来を見ている!」

「ほざけええええええ!」


ワルプルギスは殴り掛かってくる。

かなり激高しているな、それほどラピュセルの事が気に障ったか。

どんな未来を見てどんなことを考えたか、そんなことはどうでもいい。

こいつが未来を見て色々考えた結果、大ぶりの右ストレートを俺に向けて振ってくる。

その結論さえわかれば、それ避けるのは容易い。

先程の挑発は、こいつに心を持たせるためだ。

俺を倒したいという欲望。心核さえ発生させればこちらに勝ち目はある。

俺は振り下ろされた拳をよけると、すかさずカウンターの要領で同じものを叩きこむ。


「かはっ!こいつ……!」

「どうした?そんな大ぶりの攻撃は、カウンターされるのは当たり前だろ!」

「やはりチートギフトは危険な能力だ……だが、ボクにダメージは!」

「じゃあその口から流れているものは何だ?」

「なに……!?」


ワルプルギスは口を拭うと手の甲を見る。

それが血と確認すると震え始めた。


「そんな、そんな馬鹿な……!」

「お前の未来改変には、二つ弱点がある」

「なんだって……!?教えてみろよ、その弱点とやらを!」

「くく、くくく!」

「なにがおかしい!!!」

「その弱点とやらを、未来のお前は教えてくれなかったのか?」

「……!!がはっーー!」


俺は再びワルプルギスを殴り飛ばす。

ワルプルギスの血が、レッドエリアに飛び散る。


「何故だ、何故だ何故だ!ボクには!避けてる未来が見えているのにいいい!!!」


半狂乱でワルプルギスは叫ぶ。

もしも自分が負ける未来が見えた場合、お前はそれを必死に改変しようとするだろう。

しかし自分が勝つ未来が見えている場合、お前はそれを改変しようとしない。

自分の能力に絶対的な自信を持ってるからこそ、自分の能力の事を疑わない。

その理想的な未来そのものが幻覚であると気づかない。

それがひたすら理想の未来に従ってきたお前の致命的な弱点だ。


俺は、ワルプルギスが俺を一人だといった時点で勝ちを確信していた。


リリカと目が合う。

事前に彼女は幻覚魔法が使えるようにチートギフトで渡してある。

そう、これは全て幻覚。

ダメージを受けている気がしているだけ、

未来が思い通りにならない気がしているだけ、

全ては三文芝居だ、だがそれで十分。

もっともらしい理屈を言って信じさせるだけ

それだけのことで、ワルプルギスは仕留められる。

未来が思い通りにならない恐怖。お前の心核に恐れが生じた時が、お前が負ける時だ。

お望み通り、戦いを放棄させてやる。

お前がラピュセルにしたのと同じ目に合わせてやる――!


「あああああ!おねえさまじゃない!こんな、ただの人間風情にいいいいいい!」

「落ち着けよ、ここが死に場所じゃあるまいし」

「何!?」

「戦いを放棄しろ、そしたらこの場は見逃してやる」

「――!!」


ワルプルギスに心核が出現する。

単純だな。

自分の能力を過信しているこいつは、この場さえ凌げばどうとでもなると考えたのだろう。

もちろん嘘だ、俺はこいつをそのまま見逃すつもりなどない。

未来を見て全てを決定してきたお前は、人を疑うことにも慣れてない。

それもお前の致命的な弱点だ。


王手チェックメイトだ、ワルプルギス」


俺はリリカにお姫様抱っこされたまま、幻覚を見て頭を抱えるワルプルギスに手を伸ばす。

こいつの心核。これを砕けば、全ては終わる――!


「そこまでです」


だがその手は届かなかった。

心核を掴むはずだった手は何者かに捕まれていた。

それは一人の女性だった、

茶色の髪を背後でまとめてポニーテールに纏めている。

赤いメガネにスーツ姿、正装に見えるが世界の服装としてはかなり異常な部類だろう。


「誰だ!?」

「ギルドマスターであるオーディン様の秘書を務めております。ベルゼラと申します」

「オーディン……?」

「あら、ご存じなくて?……ワルプルギスの表の名を」

「逆に言うと、ワルプルギスの素性を知ってるんだな。お前は何者だ?」

「いい質問ですね。でしたらあなたに分かりやすい自己紹介をしましょう」


ベルゼラと名乗った女は眼鏡をクイとあげるとにこりと微笑む。

それはまるで木漏れ日の中であるかのように穏やかな笑みだった。


「沈黙の魔女。ウプムプマプラプと申しますわ」


その静かな言葉は、静寂に包まれたこの地でいやに響いた。


その魔女は世界で最強と謳われていることを、俺はまだ知らなかった

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