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異世界乙女に呼ばれたけれど俺にチート能力をくれ  作者: たけのこーた
第一章:終焉の魔女
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第二十三話:天使の名を冠する者

「がはははははは!なんだそりゃ!」

「少なくともスカしたギルドの連中じゃねぇな!気に入った!」


俺の渾身のネタの甲斐あって会場は爆笑の渦に包まれていた。

ありがとう世界のナベアツ。

あなたのネタは世界どころか異世界でも通じましたよ。


そのまま機嫌を良くした彼らにいくつか話を聞いてこの町の状況はおおよそ掴めた。

この町の鉱山を巡って宝とやらを巡って住人とギルドの冒険者が争ってるらしい。

その宝が何かは結局教えてもらえなかったが、状況を考えると仕方ないだろう。

挨拶もそこそこに、俺は食堂を後にした。


「さて、どうしようか」


芸の代金としていくらかお金をくれた人もいたので少しは使えそうだ。

とりあえず風呂屋に行って服も買えるか見てみるとしよう。

ラピュセルの前であまり不潔な姿は晒したくないしな。

そんなことを考えながら風呂屋の前に差し掛かろうとした時だった。


「オネエサン、アンタこのままじゃ死ぬネ~」

「む?そ、それは困るな……」

「ワタシに金貨5枚寄こすネ、そしたら不幸を避ける石あげるヨ」

「その程度なら払おう。私には宿願があるのだ、ここで死ぬわけにはいかぬ」


心を覗けば明らかにわかるが、詐欺だった。

明らかに怪しい風貌のサングラス掛けた男に、気真面目そうな女性が詐欺に合っている。

心を覗いて分かってしまった以上、無視するわけにもいかない。

俺は彼女たちに近づく。


「もしもし、騙されてますよ」

「な、なんだと!?貴様!よもや私を騙そうとしたわけではあるまいな!?」

「失敬な小僧ネ!ワタシがそんなことしている証拠がどこにもががっ!?」


いつの間にか

その女性は銃口を怪しい男の口の中に突っ込んでいた。

何という速度だ、いつの間にホルスターから抜いたのか全く分からない。

純白な銃に施された金色の十字架が鈍く輝いている。


「私を無視するな」


それは静かな一言であったが、それに込められた殺気は尋常なものではなかった。

ビリビリと空気が震えるのを感じる。


「て、適当な事言いましタ!すいませんでしタ~~~!」


その女性が口から銃を抜くと、怪しい風貌の男は土下座し全力で逃げ出していく。

その男が見えなくなると、彼女は俺の方を向く。

いつの間にか、銃はホルスターの中に仕舞われていた。


「うむ、礼を言うぞ。助かった」

「ど、どうも」

「まさか町の住民に聞き込みをしているうちにあんな事になるとは」

「さっきの男って占い師ですらなかったのか……」

「他の人たちは皆いい人だったのに残念だ」


「あの、その袋にどっさり入ってるアイテムってもしかして」

「これか?厄除けの壺にお札、植物に竜鱗だな、町の人が金貨と引き換えにくれたのだ!」

「どのくらい払ったんだ……?」

「ざっとギル金貨50枚ほどだな!厄除けのためには仕方ない!」


既に詐欺に遭いまくっていた。

あまり人のこと言えないけど少しは金銭管理に気を付けるべきだと思う。


「名前を聞いていなかったな、君の名前は何だ?」

「俺は、ヤマトって言います」

「うむ、良い名前だ」

「あなたは?」

「む?」


彼女は本気でいている意味が分からないらしく、きょとんとした顔をする。


「あなたのお名前は?」

「あ、ああ。私はイグルー。イグルー・ミカエルという」

「良い名前ですね」


ミカエル、ね。


「すまないな、まさか調査員で私を知らない者がいるとは思わなくて」

「へ? 調査員?」

「砂漠地帯の調査服を着ているから、君はギルドの人間だろう?」

「あはは、もちろん!」


あぶねえええええええええ!

さっきの食堂でよくバレなかったな!

ギルドの制服とやらが地域別で助かった、早めに着替えておかねばなるまい。


「ん?そういえば昨日の爆破事件の犯人も同じ地域の調査服を着ていたと証言があったな」

「ギクゥ!」

「ヤマト、何か知らないか?」

「全く何もわかりません」

「うむ!それならばいいのだ」

「あ、突然急用を思い出したので俺はこれで!」

「それはいけない!呼び止めてすまなかったな!」


助かったあああああああ!

彼女はどうやら言われたことは全て信じてしまうらしい。

考えてみれば俺はウェイスと全く同じ服装をしているのだ、危険すぎる。

笑顔で彼女と別れ、全力の早歩きでその場から遠ざかる。

風呂屋よりも先に、目指すべきなのは服屋だ。

服屋を探す傍らで、俺は思考を続ける。


さて、ここからどうしたものか。

俺が心を覗いた後に、彼女に話しかけたのには理由があった。

怪しい男が彼女から金貨を騙し取ろうとしている事が分かったので話しかけた。

…………というのは理由の半分だ。


もう半分は彼女の望みそのものにある。

イグルー・ミカエル

キリスト教における、天使の名を冠する者。

彼女の望みは、ラピュセルを殺す事だった。


場所:龍鳴峡谷―グレイタウン

S級モンスター:開闢の魔女(特記)     討伐を試みたものは死刑とする

A級モンスター:覇翼のグラニュート         250000000G

B級モンスター:該当なし

C級モンスター:ワイバーン(10体につき)       1000000G

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