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異世界乙女に呼ばれたけれど俺にチート能力をくれ  作者: たけのこーた
第一章:終焉の魔女
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第二十話:グレイタウン

谷底にある虹色に輝く陸珊瑚の群生地。

それを超えた突き当りに真っ白な洞窟が口を開けていた。

繋いでいた手はもう離れていた。

ラピュセルに続く形で洞窟の中へと足を進めてゆく。

洞窟内は入り組んでいて一人通るのがやっとの広さだった。

長袖でなければ今頃、ヤスリのような壁に削り取られて擦り傷だらけになっているだろう。


「夕暮れ時で丁度よかったわ、虹透鳥スカイフィッシュが出ないと楽ね」

「にしても狭いな……グレイタウンってのはこの洞窟の中にあるのか?」

「ええ」

「わざわざこんなところに作らなくてもいいのに」

「空にはワイバーンがいるもの」

「ああ、それもそうか」


昼間見た空を覆い尽くすワイバーンの群れ、竜雲を思い出す。

あんなものに襲われたら町など容易く滅びてしまうだろう。


「ラピュセル、お前はよくこの街に来るのか?」

「それほど頻繁ではないけれど、古い町だから記憶には残りやすいわね」

「へえ?」

「100年ぶりに訪れても街並みが変わらない町って言うと分かりやすいかしら」

「ああ、そりゃ覚えやすそうだ……てかお前は何歳なんだよ」

「魔女に歳を聞くものじゃないわよ」

「そんなレディみたいなノリで言われても……」


というかラピュセルはふりっふりの黒いドレスを身に纏っているわけで

この洞窟を抜けるころにはズタボロになっていそうな予感がするのだが平気なのだろうか。


「魔女の服は平気よ?基本的にどれも魔法をがかかっているからね」

「……シャルデンテ、お前も人の心が読めたりするのか?」

「あなたが分かりやすいだけでしょ」

「いやいや、別に説明して欲しそうな顔してねえだろ」


してないよな?

してたとしても一列になって進んでいるから俺の顔は見えないけど。


「説明して欲しそうな体の動きをしていたから」

「どんな動きだよ!」

「前のラピュセルのスカートの動きに合わせて顔が揺れてるわよ」

「違う!誤解だ!」

「スケベ野郎ね」

「いや違わない!シャルデンテの言う通り服が気になっただけだ」


「堪能してもらってるところ悪いのだけれど、到着したわよ」


少し進んだところで開けた空間にたどり着く。

しかし建物らしきものはどこにも見当たらなかった。


「?着いたって、奈落があるだけじゃねーか」


まさか


「この高さから落ちたら私はともかくあなたは助からないでしょうね」

「はは、そうだよな。ところでなんで俺はお前と手をつないでるんだ?」

「照れてるの?はぐれないようにするために決まってるじゃない」

「ははは、全く離れない。接着剤でも塗ってんのかお前の手は」

「おっと足が」

「いやわかってたけどさーっ!?」 


案の定ラピュセルは何の躊躇いもなく飛び降りる。

しかも落下する時間が先ほどの比ではない。


「――――――っ!」


俺に出来るのはせいぜい舌を噛まないように歯を食いしばることだけだ。

しかし加速しきったかのように思えた落下速度が徐々に下がっていく。

まるでエレベーターに乗っているかのようにゆっくりと降下速度が下がっていく。


「…………?」

「ちゃんと出来て偉いじゃないの、目を開けていいわよ」

「これは……」



俺たちは町の遥か上空にいる。

眼下には夜景ともいえる光景が広がっていた。

控えめな町並みに、優しい光が揺れながらぽつりぽつりと灯っている。

ラピュセルは頭上に傘を差して、ふわりふわりと落ちていく。

俺はそれにぶら下がりながらゆっくりと降りていく形だ。


「……どうかしら?」

「お前なぁ……」


きっとこれは彼女なりの気遣いなのだろう。

この世界の美しいところを彼女は俺に見せようとしているのだろう。


「……ああ、綺麗だよ」

「そう」

「てか、その傘をパラシュートみたいに出来るならさっきもすれば良かったじゃねーか」

「無理よ。これはそれなりの時間、落ちないと使えないもの」

「ああ、そうかい」


洞窟の内部、冗談みたいに広いドーム型の空洞の底にその町はあった。

それは灰色に統一された石造りの町であった。

湧水が所々にあふれ、それらは川となり広大な湖へと流れ込んでいた。

どこかに通じているのだろうか、湖の麓には船がいくつも泊めてあった。


「さしずめ中世ヨーロッパってとこか」

「あら、この世界にキリスト教があると思って?」

「……それもそうだな」


少なくとも、これほど町並みを眺めて美しいと感じたのは初めての経験だった。

よく見ると左右にある横穴にもぽつりぽつりと灯がともっている。

きっと底の部分以外も、この洞窟一つ含めて丸々町そのものなのだろう。


「なあ、めっちゃ俺たち指さされてないか?」

「ふふ、さしずめ空から女の子がってところかしらね」

「いや、お前がいいならいいんだけどよ……」

「関係ないわよ、そんなの」


ラピュセルは涼しい顔つきで言い放つ。


「彼らの存在なんてどうでもいいじゃない」

「……自由なんだな、お前は」


言われてみれば他人の目なんて気にする必要はないのかもしれない。

そう考えるとむしろちょっとした優越感すら覚えた。

俺とラピュセルは存分に景色を楽しんだ後、地面に降り立つ。


「ここがグレイタウン……知識はあってもやはり直で見ると圧倒されますね……」

「ふふ、冗談みたいでしょう?山より大きな陸珊瑚の死骸だなんて」


それから程なくしてウェイスとシャルデンテも降下してくる。

大通りのど真ん中に、俺たちは降り立った。

傍らの石造りの三階建てはあろう建物が存在感を放っている。


「石漏れ灯の館……ってなんじゃこりゃ」

「そんなもんどうでもいいわ、拠点を探しましょう」

「このマークは、冒険者の施設ですね」

「丁度いいわ、私は早速ワイバーンの死骸でも換金してこようかしら」


シャルデンテは小走りで路地裏へと駆けこんでいく

周囲の人間を見るとちらほら大きな武器を持つ人間が見える。

彼らが俗にいう冒険者なのだろう。

皆一様にこちらを見ながら何やらひそひそと話をしていた。

あまりいい心地はしないが、当然と言えば当然だろう。


「そ、そうだ。私は変装しなきゃ」


ウェイスは慌てた様子でゴーグルとマスクをつけるとフードを被る

コンビニでも入ったら即通報されそうな格好だ、それは変装というのだろうか。

程なくしてシャルデンテが荷台に乗せた大量のワイバーンの死骸を引き連れて戻ってきた。

路地裏でワイバーンの死骸を吐き出してきたんだろうな……


「それじゃ行ってくるわね」

「私も行ってきます」

「ええ、私たちは外で待っとくわ」

「ん?まあそれでもいいが」


シャルデンテは建物の前に荷台を置くと建物の中へと入っていく。

この建物を覗けないのは少し残念だが右も左も分からないのだ。

ここはラピュセルの判断にゆだねるべきだろう。

ウェイスが何やらシャルデンテにしつこく言っているようだが……

まあ波風を立てないようにといった趣旨の事だろう。


次の瞬間、その建物は吹き飛んだ。


「はあああああああ!?っておい!ラピュセル!?」


ラピュセルは俺の手を引いて駆け出していく。

みるみるうちに建物は遠くなり、見えなくなった。


「あそこにいたら面倒なことになるわ」

「いや、あいつらが犯人って決まったわけじゃ」

「それ以外にいるわけないでしょうが」

「…………」


否めない!どう考えてもあいつら意外に考えられない!


「どのみち撒こうと思ってたし、都合がいいわ」


そのまま路地へと逃げ込んでゆく。

徐々に大通りのほうが騒がしくなっていくのが聞こえる。


「あれ、これって……」


路地のひっそりとしたところにワイバーンの石像が置いてあった。

酒、お菓子、饅頭、花と様々なものがお供えされている。


「……祀られてるな」

「祀られているわね」


それは一見すると不幸な事故のようなものだった。

しかし、近いうちに俺はどのみちこうなっていたと思い知ることになる。

こいつらと町に入って、平穏に過ごせるわけがないのだ、と。

場所:龍鳴峡谷

S級モンスター:開闢の魔女(特記)     討伐を試みたものは死刑とする

A級モンスター:覇翼のグラニュート         250000000G

B級モンスター:該当なし

C級モンスター:ワイバーン(10体につき)       1000000G

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