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異世界乙女に呼ばれたけれど俺にチート能力をくれ  作者: たけのこーた
第一章:終焉の魔女
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第十七話:スライム

俺とラピュセルを乗せたバイクが地面を転がし、視界には徐々に緑が少しずつ増えていく。

それは間違いなく町へ近づいている証だった。

そんななか俺はプルプルと動く液体の塊を見つけテンションをあげていた。


「うっわーーー!スライムだぁ!!!」

「ちょっと、後ろで抱き着きながら騒がないで頂戴。くすぐったいわ」

「あれスライムだよね!?すげーテンション上がるな!あれなら俺でも勝てそう!」

「くすぐったいってば、あまり騒ぐと落とすわよ」

「なああれどうなってるんだ!? 服とか溶かぶぐえええええええええええええ!?」


ラピュセルに突き落とされ俺は地面を転がる。


「なにしやがる!?」

「ああごめんなさい、言葉が通じないからエロももんじゃかと思ったわ」

「誰がエロももんじゃだ!」


様子に気付いたシャルデンテとウェイスのバイクも停車し、こちらに歩いてくる。


「急に止まってどうしたのよ」

「ちょっと聞き分けのないエロももんじゃにスカウトアタックしたのよ」

「は?何言ってんの?」

「通じないの!?」

「当たり前だろ、何ショック受けてんだよ」


むしろ相手が俺と同じ世界の住人だとしても通じる奴の方が少ないだろ。

かくかくしかじか。


「はぁ、つまりスライムを見てテンションが上がったと」

「ありふれすぎて見落としがちな魔物に興味を持つなんて!私そういう人初めて見ました!」

「いや学者みたいなあれとは違うんだ」

「そんなに気になるなら、戦ってみる?」

「戦う!」


言うや否や俺は手ごろな一体に向けて駆け出した。

大きさは子犬程度だろうか、よくよく見ると液体の中に核のようなものが浮いてるのが見える。

難しいことはさっぱり分からないが、要はアレを壊せばいいのだろう。


「うおおおおおおおおお!」

「ピギィ!?」


先手必勝だ、俺はスライムの背中に向けて拳を振り下ろした。


…………

………………



「そ、そんな……一瞬で」

「ここまでとは思わなかったわ」

「ええ、甘く見ていたみたいね」


俺はスライムに負けて地面に転がっていた。


「さ、さすがはスライム……異世界最強のモンスター」

「最弱モンスターよ」

「さしずめA級といったところか」

「特にそういう分類はないですね……」

「おかしいな、こんな筈じゃなかったんだけど」

「たしかに、この強さはおかしいわね」

「俺の強さがおかしいって、強すぎるって意味だよな?」

「いいえ…………」

「いやおかしいだろおおおおおおおおお!?」


俺は血の涙を流す。


「普通こういうのって勝てるもんだよね!?スライム倒せないドラ〇エとかクソゲ―そのものだろぉ!?」

「大丈夫大丈夫、初めはきっと誰だってそんなものよ。次行ってみましょう」


「うおおおおおおおおおおお!」

「ピギィッ!?」


先手必勝だ、俺はスライムの背中に向けて拳を振り下ろす。


地縛陣マッドキャプト

地縛陣マッドキャプト

地縛陣マッドキャプト

「ピギャッ!」


見事脳天に拳が命中し、スライムは倒れる。


「おおー」

「すごいすごい」

「やるじゃないですか」

「ごめん、気持ちはすごく嬉しいんだけど突っ込ませて」


俺は一拍置いて呼吸を整える。


「馬鹿にしてんのか?」

「いやいや、まさか二回目にして攻撃が当てられるなんてね。

 ドラ〇エの主人公もたまには攻撃全部外してスライムに負ける事くらいあるわよ」

「地面に浮かんだ三重の魔法陣でスライムがんじがらめにされて完全に止まってたけど!?

 これじゃただのスイカ割りじゃねーか!目隠しすらしてねーし!」

「次は目隠しでやってみせるだなんて、すごい自信ね」

「断じてちげーよ」


認めざるを得ない。


「ウェイスもスライム相手だと苦戦するよな!」

「い、いえ……魔法でボンと。あはは」

「何わろとんねん」


俺はどうやらこの世界で最弱らしい。


「まあそれが今のあなたの実力よ」

「正直とんでもなくめちゃくちゃショックだけど、どうやらそうらしい」

「いえ、そうでなくて」

「?」

「私が手伝うことも含めてあなたの力よ、それを忘れないでいて欲しいわね」

「そうです、あなただから皆手伝うんです!一人で強いのが偉いわけじゃありません!」

「良い話風にまとめたな……」

「まあ私は内心馬鹿にしてるけど」

「どこが内心だよ!台無しじゃねーか!」


本当にこいつは一言余計な事を言わないと気が済まないのだろうか。


「そもそもヤマトさんの能力ってチートギフトでしょう?使わないんですか?」

「あー、それな。自分に使えたらよかったんだが」

「自分には使えないんですか?」

「ああ、他人の心核は見えるんだが。どうも自分自身の心核は見えないらしくてな」

「へええ」

「……いえ、それはちょっと違うわね」


ラピュセルは首を振る。


「チートギフトは本来自分自身にも掛けられるはずだけれど

 というかそっちがむしろメインの能力なのだけれど。あなたが特別なのよ」

「まじかよ。ワルプルギスとかも心核見えなかったけどな」

「あれは自分の望む通りの未来が手に入るから欲望そのものを必要としないのよ、

 あなたは欲望に塗れてるでしょう?あなたに心核がない理由は私にも分からないわ」

「人を欲深い人間みたいに言うな、俺が別の世界の人間だからだとか……?」

「その可能性も無きにしも非ずね、まあ単純に才能がないのかも」

「傷つくなぁ!さっきのことがあるから特に!!!」


「ええええええええええええ!?何ですか別の世界の人間って!?」

「知らなかったんだ……」

「ああ、そういえばウェイスには言ってなかったわね」

「今更ね、まあ休憩がてらお茶にでもしましょうか」


ラピュセルはぱちんと指を鳴らした。

それと同時に何もない空間からテーブルと椅子、紅茶セットが出てくる。


「魔法が使えなくなってる割には、そういうのは出来るんだな」

「ええ。これは事前に物体にかけておく魔法だもの、触手も呼べたでしょう?」

「ああ、そういうものなのか」

「そうよ、片付けられないからここに置いていくことになるけどね」

「軽いミステリーだよな。それ」

「触手ベッドも出したままよ」

「出したままなの!?」

「成長期だし、帰ってきた時に変なことになってないといいのだけれど」

「まあそのころには魔力も回復してそうだし、何とでもなるだろ」

そそくさと俺とウェイスが注いで回る。


「おめーはちょっとは手伝えよ」

「いやよ、私は一番重労働したもの」

「ある意味ではそうだけどさぁ!」

「シャルは手伝ってくれないの?」

「メイド疲れで今はパス」

「メイド疲れってなんだよ、それがこの場で唯一メイド服着てる奴の台詞か」


まあ大した手間ではない。手早く終わらせて席に着く。


「それで、どういうことなんですか? ヤマトさんが別の世界から来たって」

「ああ、どうやったかは知らんがこいつに連れてこられたらしい」

「ええ、トラックで引きつぶしたわ」

「……そういや何故かあまり気にならなかったが何で俺を呼んだんだ? 」

「暇つぶし。強いて言うなら私が望んだからよ」

「さては悪の大魔王だなお前は、いつか倒す」

「それにあなたも望んでたはずよ?」

「は?」

「じゃないと呼べないはずだもの」

「それは――そうかもしれない」


まあ事実として、異世界に行けてテンションは上がっている。

無駄に悲観的になってはいないし、過ぎたことを悔やむわけでもない。

それは不自然なことのようで、俺にとっては至極当然のことのように思えた。

まあこういう思考だから異世界に行けたのかもしれないけど。


「開闢の手鏡もそうだけれど、あなたの異世界に干渉できる能力は特筆すべき能力でしょうね」

「まあこんな芸当出来るのは全世界で私くらいでしょうね」

「ヤマトさん、少し変な人だと思ってましたがそう言う事だったんですね」

「おっとウェイスのナチュラル失礼野郎が本性を現し始めたぞ」

「さ、もう少し休憩したらまた走るわよ。今日中には到着したいし」

「もう緑も多くなってきましたし、すぐそこですね!」

「準備はいいわね、ももんじ屋」


「ももんじゃの元ネタの関東地方在住である妖怪の元ネタの肉屋なんて知らねぇよ!

 正直ここまで突っ込んどいて普通にももんじゃって言っただけの可能性も否めないし

 そうだとしたらただただ恥ずかしくて不安でたまらねぇよ!」


「空也上人像みたいに言葉が文字になればいいのにね」


「異世界の住民の癖に平安時代の南無阿弥陀仏の文字に対応する仏を口から出す仏像で例えるなよ!

 チョイスが分かりづらすぎんだよ!せめて漫画の吹き出しとかで例えろよ!

 しかもミーハーみたいな解釈違い起こしてるけどそれを含めて突っ込む気になれない!」


そんな他愛もない事を話しながら、俺たちは再びバイクに乗り込むと進めてゆく。

徐々に荒地は草原へと変化する。草原には優しい風が吹いていた。多分。




場所:龍鳴峡谷

S級モンスター:開闢の魔女(特記)     討伐を試みたものは死刑とする

A級モンスター:覇翼のグラニュート         250000000G

B級モンスター:該当なし

C級モンスター:ワイバーン(10体につき)       1000000G

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