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離宮を入ってすぐの大広間に集まった貴族は、ざっと見たところ100人〜150人くらい。子供がいる貴族だけでこんなにいるんだな、とルイーズが周りを見回していると、奥の扉の前に立っていた近衛騎士が王太子殿下と妃殿下の入室を告げた。


2人の近衛騎士が重厚な両開きの扉を開けてその両側に控えると、王子を連れた王太子殿下、そして王女を腕に抱いた妃殿下がゆっくりと広間の奥へと進み、台座に上がった。


事前に教えられていた情報によると、アンリ王太子殿下とカトリーヌ妃殿下は共に22歳。王立学園の卒業と共にご結婚されて、翌年にジャン王子、さらに2年後にシャルロット王女がお生まれになったとのこと。美男美女の両親に似てとても可愛らしいお子様達だと思う。


大広間を埋める貴族の人々の視線を一身に集め、静まりかえった広間を見渡してから、王太子殿下が口を開いた。


「皆、今日はよく集まってくれた。この佳き日に茶会を開くことができて嬉しく思う。こうして私達の子供たちを皆に紹介できることは、私と妃にとってこの上ない喜びである」


高くもなく低くもなく、とても聞きやすくてよく通る王太子殿下の声。ついうっとりと聞き惚れてしまいそうだが、それよりももっとルイーズの心を捉えたのは、その美しい姿だった。


(───なんて、綺麗な方なんだろう……)


彫りの深い陶磁器のようなお顔を縁取る輝くようなプラチナブロンドの髪。長い睫毛の奥にある深いサファイアブルーの瞳が瞬きをするたびに、広間中のご婦人方から溜息が聞こえてくるようだ。


王女様を抱いてにこやかな笑みを浮かべる妃殿下は、光沢のあるハニーブロンドの巻き毛に少し目尻が下がり気味の大きなヘイゼルの瞳。お人形のように可愛らしい王子はプラチナブロンドの髪、王女は妃殿下と同じ髪色、そして瞳はどちらも王太子殿下と同じ濃い青色をしている。


並んでいるだけで絵になるなんて、さすが王族。ハイスペックすぎる。


思わずそんな場違いな感想が頭に浮かんできてしまうほど、ご一家はキラキラ輝いて見えた。王太子殿下のお言葉が終わると、これから謁見の間に場所を移しての挨拶の時間だという近衛騎士からの説明があった。


挨拶は位の高い公爵家から順に行われるので、伯爵家である我が家はしばらく待つことになる。子供にじっとしていろというのはなかなか酷な注文だけれど、王族の方々が退席されるまでは動いてはいけないと事前に父であるレーヌ伯爵から注意されていたので、ここはジッと我慢だ。


そして、もう一度王太子殿下ご一家を見ようとルイーズが顔を上げた──その時だった。


(………え?)


謁見の間へと移動するために近衛騎士に続こうとした王太子殿下が、ふとこちらに視線を寄越した。それは誰も気づかないほどの一瞬のこと。けれど、ルイーズにははっきりと殿下と目が合ったのが分かった。


視線はすぐに逸らされ、間もなくご一家は扉の向こうに移動してしまった。


(本当に一瞬……気のせいだと言われればそれまでなんだけど……何故かとても優しい目をされていた)


一介の伯爵令嬢である自分に王太子殿下が目を留めるなんて、普通に考えればあり得ないことだ。いくら考えても理由はよくわからない。不思議なこともあるものだと思っていると、近くにいたご婦人方の話し声が耳に入ってきた。


「それにしても、やっぱり王家に遺伝する高貴な青(ブルー・ノブル)というのは本当の話なのね。王子殿下も王女殿下も見事に受け継いでいらっしゃるわ」

「遺伝は王家に伝わる強い魔力によると言われているけど、本当かしら?」


(高貴な青(ブルー・ノブル )?)


初めて聞く言葉に頭の中で疑問符が浮かぶ。国学で王家について学んだ時にも、ベニエール先生の口からそんな言葉を聞いたことはなかった。


何のことだろうと会話のご婦人方に目をやると、ルイーズが見ていることに気づいた片方の女性が「あ…」と大きく目を瞠った。その反応を見たもう1人の女性も、ルイーズの顔を見てひどく驚いた表情になる。


(え、なに?…なんで私そんなにビックリされてるの?)


見ず知らずの大人から向けられる反応にどうしたらいいのか分からなくなり隣を見上げると、見たこともないほど厳しい表情で件のご婦人方を見ている父親が目に入り、ルイーズは思わず息を飲んだ。その隣ではマリーが心配そうな顔で夫を見ている。


「───マリー、何か飲もうか。ルイーズとジャックも喉が乾いただろう?」

「え、えぇ。そうね。2人ともいらっしゃい」


不自然なほど唐突に飲み物のあるテーブルに向かい始めたピエールに慌ててついて行く。


あのご婦人方がルイーズを見て驚いていた理由を、ピエールは多分知っている。背中に貼りつくような視線を感じてとても落ち着かない気分だけれど、父の様子から見て、もしルイーズが理由をきいても答えてくれないだろうなと思った。


そこから謁見までの時間は、ひどく重苦しいものだった。飲み物を手に待つこと数十分。ようやくレーヌ伯爵家の順番が来たことを告げに来た近衛騎士が、ルイーズには救世主に見えた。この重い雰囲気から解放されることが嬉しくて晴れ晴れとした気分で歩き出したルイーズに、ピエールが謁見時の注意事項を繰り返した。


「いいかい、2人とも。私の挨拶が終わっても、許可が出るまでは絶対に顔を上げてはいけないよ。自分から口を開くのも駄目。何か尋ねられた時に、訊かれたことにだけ答えるんだ。訊かれてもいないことを答えたりしないように」

「はい、わかりました」

「わかりました、父上」


大きく1つ深呼吸をしてから、ルイーズは家族とともに謁見の間に足を踏み入れた。


お読み下さりありがとうございました。

お茶会まだ続きますよー。

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