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しばらく話が軌道に乗るまで、連続投稿していきたいと思います。

「ルイーズ、ジャック。今日はどんなことを勉強したんだい?」


その日の晩のこと、夕食の席でレーヌ伯爵ピエールがルイーズとジャックに尋ねた。いつもベニエール先生の授業があった日は、このようにピエールが子供達にその日の授業内容を訊いてくる。アッシュブラウンと呼ばれる少しくすんだ茶色の髪に綺麗な水色の瞳。ルイーズの大好きな優しい表情でこちらを見ている父親から隣の弟に視線を移すと、口の中の食べ物を飲み込んだジャックが口を開いた。


「今日は国学の勉強をしました、父上」

「そうか、国学か。内容は覚えているかい?」

「はい!…えーと、いろんな領地の名前とか、どんな所だとか、あとは……」


一生懸命に思い出そうとしているジャックに助け舟を出そうかどうしようかと迷いつつルイーズが伯爵の方を見ると、人差し指を口にあててにっこりされたのでそのまま黙っておくことにした。ピエールの隣に座っている母マリーも、緑色の瞳を細めて微笑んでいる。


「……あとは、魔法について学びました!」


(いやいや、かなり端折ってるし!)


説明するのが面倒になったのか、かなりざっくりとまとめたジャックに心の中でツッコミを入れる。とはいうものの、実際のところルイーズよりも1つ下で同じ内容をやっているのだから、ジャックはかなり優秀だと思う。


ルイーズは前世の知識を一部しか思い出していないし、現世では7歳児の脳だから記憶力とか思考力は年相応レベルだけれど、勉強すること自体に慣れている気がした。相変わらず前世の自分自身についての記憶はサッパリだったが、思い出す知識の端々からそこそこの教育は受けてきたんじゃないかと感じていた。


「そうか、魔法についてか…なるほど」

「はい。あと、姉上が魔導士について質問していました」

「魔導士について?…どんな質問をしたんだい、ルイーズ?」

「え?…質問、ですか……」


突然こちらに矛先が向いたことに戸惑ってしまったけれど、ピエールは急かすでもなくルイーズの答えを待ってくれている。


「あの…ベニエール先生がこの世の物に宿っている魔力を生活に役立てているというお話をして下さったので、それ以外のこと…例えば戦ったりとかいうことに魔力を使う人達はいないのかな、と思って質問しました」


ルイーズの答えにピエールは満足そうに頷いた。


「なるほど、いいところに気づいたね。魔力の高い者は高位貴族に生まれることが多いという話は聞いたと思う。お前達にはちゃんと話したことがなかったが、私の父…つまりお前達のお祖父様は強い魔力を持っていたのだよ。この国の魔導士として活躍していたが、西の海から攻めてきた海賊との戦いで命を落としてしまってね……私が18歳の時だった」

「そうだったのですね……」


祖母もジャックが産まれてすぐに亡くなったと聞いているので、ルイーズとジャックはレーヌ家の祖父母の顔を見たことがない。たまに遊びにきてくれるお母様の方の実家、先代のドランジュ伯爵夫妻だけが姉弟にとっての祖父母だ。


「残念ながら私は魔導士になれるほど魔力は強くなかったが、お前達のどちらも資質は十分にあると思うよ」

「父上、本当ですか!?」

「あぁ、ジャック。本当だとも」

「やったぁ!!」

「………」

「おや、ルイーズは嬉しくないのかい?」

「あ、いえ…そんなことは──」

「変なの、姉上。ベニエール先生にはあんなにいろいろ質問してたのに」

「うん、まぁそうなんだけれど…」


祖父の話を聞いてますます魔導士になるのが大変なことだと実感してしまい、素直に喜べなくなってしまった。こういう時は前世の記憶って邪魔だなと思う。なんだか子供らしさがどんどん失われていく気がする……。


何とも複雑な気分になって黙り込んでしまったルイーズに苦笑を零して、ピエールが再び口を開いた。


「そういえば、もうすぐ王家で開かれるお茶会の季節だね。今年は王太子殿下が主催されるそうだが、お前達にも招待状が来ているよ」


(王家のお茶会……何だかものすごく厄介そうな響き)


「あら、じゃあ新しくルイーズのドレスを作らなきゃね!髪飾りはどうしようかしら?」

「お、お母様…」


ぱあっと顔を輝かせてウキウキとドレス注文の日程を決めていくマリー。


「お父様、僕友達が欲しいんですけど、見つかるでしょうか?」

「今回は王太子殿下のお子様達のお披露目も兼ねているらしく、10歳くらいまでの貴族の子息、令嬢が招待されている。きっと同じ年頃の子息もいるのではないかな?」

「はい!友達見つけてきます!」


(友達、かぁ…。私も同じ年頃の女の子の知り合いがいないから、友達探ししようかなぁ)


「ルイーズは?どうするかい?」

「…はい、私もお友達を探してみたいと思います」

「あぁ、そうするといい。友というのは幾つになっても良いものだよ」


お茶会と聞いてとっさに面倒だなんて思ってしまったけれど。薄い水色の瞳を細めて微笑む父親を見ていたら、なんだか勇気がもらえたような気がして、自然とルイーズも笑顔になっていたのだった。


次はお茶会です。

ようやく主要キャラが出てきます。

ここまでお読みくださいまして、ありがとうございました。

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