表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
淡とした空き箱  作者: 羽葉世縋
5/8

オリジナルの地表から

お茶にしようかと、花冠の老婆が話しかけてきた。奇妙だなとは思ったものの、かきむしりたいほど乾いた喉。顔には出さないが喜んで頷く。


花冠、綺麗ですね。


あら、孫がくれたのよ。嬉しくってずっとつけてるの。


紅茶、少し砂糖が欲しいです。


わかったわ。


老婆は砂漠の砂をスプーンで一掬い。なんの違和感もない。自然な動作。

老婆は太陽の光をちぎって紅茶に混ぜた。ちぎれた部分はストンと斜めに砂に消えた。


光が甘いなんて、本当に変な進化をしたものよね。


ええ、でも砂と光以外残ったものは焼け焦げた汚泥。光と砂に甘みを求めるしかないですからね。


汚泥から紅茶は作れたのに。


甘い汚泥があれば良いんですけどね。


不意に老婆が開いたパラソル。空は突如黒く染まり、黒い重たい雨が降る。

パラソルは溶け、老婆を貫く雨粒。


あら、あなたは死ねないの?


えぇ、死ねないんです。


死ねるって良いわよ。先に行った孫たちにようやく会えるもの。


それはおめでたいこと。ご冥福をお祈りしています。



残ったのは、自分のこの身と砂漠と紅茶。

手のひらいっぱいに掬い上げた水晶の粒たちを喉に流し込む。裂けるような痛みもすぐに消える。


死ねない。あっという間に晴れた空には嫌味ったらしい生の象徴。


神様、私は死ねますか。


答えはまだまだノーですから、先の先の先までこの星と共にいなさい。この星が終わる時、あなたにようやく福音が訪れるでしょう。


信じてみることにしたのだ。


とある天界人の日記より

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ