人工知能のアンサー
「佐山、人類と人工知能の違いって何?」
まただ、田中が妙なことを言い始める日常茶飯。
「俺より木下に聞けよ。」
「アイツ来るの遅いんだよ。」
「じゃあ、それまで普通の話をしよう。」
「俺がしたいのはごく普通の話なんだけどな。」
溜息が出る。
思わず肩を落とす。
「それで、どうしてそうだと思ったんだ?聞くだけ聞いてやるよ。」
「ありがとう。まず、人間なんてDNAというプログラムの元で形成された存在だろ?仮に人工知能を作るためのプログラムをDNAと名付けたとしたら、何が違うと思う?」
「あー、わからんわからん。問いかけるな。」
「考えてみろよ。楽しいぞ。」
「嫌だね。知恵熱で死んじまう。」
「…仮に、人工知能を我が子のように思ったら、自分なりに空っぽのメモリーを埋めることが出来たら。そう考えると普通の子供と違いがあるようには思えん。」
「あー、うん。そうだな。」
「もし、人工知能に肉体があって、成長する仕組みがあったとしたら。人工知能は次の人類になり得るのかな。」
「SFの見すぎだろ。」
「だって、想像つくだろ。」
「はー、この話は終わりだ。」
「それはダメだ。」
「なんでだよ。」
「これは前置きだ。」
「は?」
「木下、どうする?佐山は親友だろ?話せるか?」
「…話してみるか。」
いつの間にか、俺の背後に木下。
冷たい目が見下ろす。
手渡されたカッター。
右手に握ると、田中が俺の手に手を添えた。
導かれるまま、木下の左腕を刃が駆ける。
溢れたのは俺と変わりない赤い赤い血。
「驚かせんなよ…。大丈夫か?」
「痛くないと言ったら、」
「ん?」
「足りないものは痛覚だけだと言ったら、」
「…」
「お前は俺の親友のままでいられるか?」
仮に、人工知能を我が子のように、ただの友人のように愛したら、
「…次世代の人類ってことか…?」
ただの友人に過ぎない。それが答えだろう。