江戸、深淵る
クトゥルフをクラーケンだと思っていた頃の江戸くん。
今思えば冒涜。
深淵の茶番タイム
悪魔降霊術は私には合わなかったようだ。
人はやりたいこと、できること、得意なことの三つでできてると昔聞いたことがある。
今回は悪魔降霊術がしたかった。しかし、普通の人間で魔術師でもエクソシストでもない私は悪魔に干渉することはできないと思う。
いや、できないと断言する。
元々何故オリジナルの方法なんてものを編み出してしまったのか馬鹿らしくて仕方ない。召喚方法は魔術師の特権、それを得意げに強引に回路として組み立てても結局は言葉の綾、ほつれでしかないのだ。
ならば。ならばだ諸君!悪魔はダメだった、それは召喚方法がわからないからかね?
それも一つの要因かもしれないが本質はそうじゃない。私は悪魔ほどの悪人ではないのだよ。
悪であることは悪いことだ。
悪魔級の悪であることは極悪ということだ。
今回私が召喚できなかったのは極悪に染まるという覚悟がなかったからだ。悪魔をただの異世界転生の道具としてみておらず、ろくに契約すら全うする気はないからだ。
相手はそれをわかってしまうことだろう。私と違って千年の時を生きる悪魔は何百万件と制約をこなして、こなして、こなしてきた。
そして魂を奪い、奪い、奪ってきた。
根本から舐めていた。舐め腐っていたのである。私は悪魔のなんたるかなんてものを全く知らなかった。
私だってただ利用されるためだけに召喚されるのはまっぴらごめんだ。ちゃんと極悪の契約を結ばなくてはならない。それではその極悪の契約とはなんだ?簡単だろう。人殺しだ。
私にはそれをする勇気がない。
法が無くてもだ。私のことを臆病者と揶揄する人もいるだろう。その逆に良い人だなんて盲目めいたことを言う人もいるかもしれない。
人を殺さないことは当たり前のことだ。いいことではないんだ。私たちは日頃から殺したいと思うような人物に何回も会うだろう。その度に我慢をしなければいつでも殺せるだなんて思っているかもしれない。しかし、実際は己の両手でしっかりと包丁を握った時、死よりも激しい恐怖の波によってその剣先は定まらないだろう。
人を殺せる人間は恐怖の波に打ち勝つ能力があるんじゃない、恐怖の波をただ感じなくなってしまっただけなんだ。もはやそれを私たちは人と呼ぶことはできないだろう。
それはもはや怪物である。
さてみなさんすいませんね、千文字もこんな厨二くさい分に付き合わせてしまって。でですね、私が何を言いたいかと言いますと
悪魔は怖えよ。
あーもう、はい、チキン野郎でね、すみません。でも、一回くらいは経験すると思うんですよ、ノリとテンションが覚めてやろうとしていたことに対して気力が奪われる瞬間。
それが今回私の場合は降霊術の実験でしたね。人形もわざわざ作ったってのに、途中材料が集まらないせいにして投げ出してしまいましたよ。
じゃあ、今回何やんのさ。そういう話でございますよね。えー、今回はクトゥルフの邪神様をお呼びできたらな、と考えております。
ですが、私あまりクトゥルフ知らないんですよ。でもね?宇宙の外から来た奴がいるって聞いてもうそこって異世界じゃね?そいつ召喚して異世界転生させてもらえばいんじゃね?なんて思ってるんですよ。
だから!次の案は!
【ドッキドキで!テッケリリな!クトゥルフ的異世界転生!】
どうです?新しいでしょう!邪神クトゥルフの力を使って異世界転生を試みる前例もないことをやってのけてしまいましょう!
で、このタコの邪神をどうやって召喚するんですかね?本当にこいつ異世界連れてってもらえますか?外見的にはこいつの方が寿司屋に連れてかれそうなんですが。
まぁ、そこは邪神ということでご愛嬌。
賑々しく召喚を試みてきますー!
「どうかな?安堂氏。」
「これは悪魔よりやばいんじゃない?SAN値直葬待った無しは決定だな。」
「大丈夫、大丈夫。どうせ相手はオクトパス。ほっそい足と吸盤と見掛け倒しな翼で何するってんでしょうか!」
「いや、お前消されるぞ?やめとけよ、召喚できないだろ?」
「後がないんですよ!召喚したいじゃないですか!」
「これ生贄とか絶対いる奴だって!絶対お前最初に喰われるじゃんかヨォ!」
「こんなタコ髭に負ける私ではない!」
「発狂からの自殺までみえた。」
「ふぇ?そんな強いん?」
「強いとか強くないとかそんな次元じゃないと思うんだけど。」
「ま、まぁまぁ板前さんの格好しとけばむやみに触れようとはしないでしょ。」
「死んでも知らないからなぁ。」
「安堂氏の名前だしてやる……(ボソッ)」
「ヤメチェネ。絶対ヤメチェネ(懇願)」
そういうわけで!よくわからないけどクトゥルブ呼びます!
ベントラーベントラー