江戸、自問自答する
全く、どうしたものか。
異世界転生は運命の力こと運命の輪によって引き起こされるということはわかった。運命の輪は転換点の意を持つ。
しかし、転換点は転換点でしかない。
もう一つ鍵がないといけない。
それが転生者なのだろう。
では、その転生者にはどのような共通点があるのだろうか。転換点をものにするのは何が必要なのか?
社会に出なかったものが持つもの。社会に殺されたものが持つもの。社会に影も形も残せなかったものが持つもの。
きっとそれは
【こんな社会を、こんな世界を変えたいと思う欲求。】
ブラック企業に飼い殺された人も、社会に馴染めないニートも、普通に生きてる人も持っていたのはそんな現実逃避的な欲求が転換点を開けるもの。
つまり必要なのは少なくとも運命を変えるキッカケとこの世界を変えたいと思う欲望。
そんな小説が流行るということはみんなこの世界にそれなりに不満を持って変えたいと思ってる。しかし、変えれないのはやはり車輪がないから。運命を変えてくれるキッカケがない。
車輪だけじゃ足りない。
車輪を動かすだけの力が必要なんだ。
そうか!だからみんなスキルを持っていて、勇者だったりするのか!
世界を変えるだけの力を持ちたい。
自分の力で無双したい。
誰よりも強く、余裕を持ちたい。
人間と会うしがらみから逃れたい。
人生をやり直したい。
これらを解決するほどの力を現実世界で手に入れることは並大抵では万が一にもないから、そういった欲望はとどまることを知らないし、変える力もない。無気力さと虚しさとほんの少しの絶望が溜まりに溜まって異世界転生という小説の形をとるんだろう。
自分では変えられないから、自分のアバターを小説内に投影し、そのアバターが自分の欲求を満たしてくれるよう動く。それが読者によって読まれることでその欲求が解決されたことが作者によって初めて承認される。
世界を変えたという最大の喜びになり、より一層その物語はより多くの人に読まれるよう細やかになっていく。
じゃあ、立也氏の場合はどうして異世界転生したいんだ?全くわからない。
異世界転生してどうしたいかを聞く必要がありそうだが一旦それは置いておこう。
じゃあ、私は異世界転生をしたいか?
私自身きっとこの世界から離れたいと思っているだろう。
ならば、私は異世界転生したいと思うはずだ。
しかし、これまで一回もしたいと思ったことはない。異世界転生する小説に少しの憧れは覚えても成りかわりたいとは思わなかった。
異世界転生する理由がないのに異世界転生をしたい立也氏と異世界転生する理由があるのに異世界転生を望んだことはない私。
この違いはなんだ?
もしかしたら、私はよく異世界転生を知らないからそんな欲求を持っていないのではないか?形を変えてどこかに収納されているのではないか?
私の欲求、欲しいもの?あぁ!
若さ、強さ、美しさとかですかね?
若さはどんどんと失われ続ける、この小説を書く間にも私は老いている。
強さはある意味異世界転生に似ているだろう、しかし欲しいのは人より数倍力が強いだけでいい。
美しさは自分だけでなく、自分の作品にもあって欲しいと願うが私にはない。
だから、望む異世界といえば私のみが若さを自由に保てて、人を殺せるほどのしなやかで流麗な腕力と偉大なる先人たちによって彫られた彫刻や小説に出てくる描写のような美しい作品を作れる世界。
ワールドシェアホテルでも立てるか……
いや、それ私じゃないんだよなぁ……
車で死体でも運ぶか……
そんなわけで私の異世界は死体解体室付きのホテルというわけなのだが…
安堂氏はどうだろうか。
彼もまた異世界転生小説を愛読してる一人であるが、変化を求める人物ではないな。
もし彼が異世界転生したとしても、今の世界と変わらないでしょう。
1秒で納得してしまう私が怖い。
流されやすい人物だし、本人も自分で『鉄のように熱しやすくさめやすい人間』という評価を自分につけているからしかたない。
ま、じゃあイメージは人の多い教室で。
さぁ、最後はあの立也氏だ。
傲慢で貪欲な彼が異世界転生を望んでいるんだ。どんな異世界を創るだろうか、王国とかが妥当か?毎日適当な理由をつけて臣民を処刑してそうだな。
最低だな立也氏。
答え合わせは今度聞いてみるか。
「立也氏、異世界転生するならどんな世界がいいんですか?」
「うまいもの食いたい放題な世界。」
うーん、人は見かけによらない、のかな?
いやぁ、最近肩の荷がおりまして。理由はこの冬の時期よくあるイベントの一つですよ。やっと終わったんですが、その次があるので頑張らねばなりませんね。
さてさて、そんなことよりも今回は私の異世界に対しての認知でしたかね。順番が食い違うこともさながら、いろいろと研究していきたいところです。
これからも宜しくお願いします。
いやぁ、今回を書くにあたりね、立也氏にもし異世界転生するならどんな感じなの?なんで質問したらね、即答でなんでも美味しくたべられる能力って答えてきましたよ。
ははっ!異世界だって言ってんだろ。
ここんところ焼肉食べたいの一言、そんな彼でした。