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黄昏参り  作者: 竹屋智晶
1章
3/4

2部

春とは言えまだ少し肌寒い風が吹く校舎の屋上で袴姿の男子生徒――真神涼風は給水タンクに寄りかかり薄雲がかった空をぼーっと眺めていた。

遠くからは部活の声、下校する生徒の声...様々と聴こえてくる。


『それにしても御前さんも物好きやねぇ...あのデカいのにちと肩入れし過ぎぢゃないのかぇ』

「(初日にその人と同衾し()た人に言われたくないです)」

『あの様な事、儂の時代(むかし)では当たり前だったぞ。それに確かめたい事も有ったしのぉ』

「(あ~、そうですか)」


彼の意識に語りかける“声”...名を寒凪(かんなぎ)と言う。

物心付いた時から何かと頻繁に語りかけてきたり、時たま涼風の意識を乗っ取ったりとしていた。

ちなみに、一昨日の一件も”寒凪”が原因だった。

本人曰く、真神家の始祖らしく代々一族の長男に憑いてきた守護霊みたいな者と言う。

困った時には助言をしてくれたり、時には滅茶苦茶な事を言い涼風をからかう...。

今となっては彼の日常の一部になっている。


ふと視線を落とすと校舎の端っこで下を伺う人影が見えた。

少し大柄な男子生徒... そう涼風には見えた。


『飛び降り自殺かねぇ』


“寒凪”がからかう様に言う。


「(寒凪様、ちょっと黙ってもらえます?)」

『むぅ......ちょっとした“じょうく”ではないか。...恐らくは忍者(しのび)ぢゃな』

「忍?このご時世にですか?今は戦国時代じゃ無いんですよ、お爺ちゃん」


かなり突拍子の無い事を言い出す“寒凪”に思った事をつい口に出してしまった。

この平成の世に忍者とは少しナンセンスすぎると思ったからだ。


『人をボケ老人見たく言うで無いわ!! まぁ、御前さんの気配に気が付かないところを見るとまだまだ見たいぢゃな』

「ふーん...」


少し遠目からは学生服の背中と肩の校章しか確認する事が出来ないが、恐らくは1年生だろう。

この学園は校章やジャージの色で学年を判別する事が出来る。

今年は赤が1年、緑が2年。そして青が3年である。

大柄な背中に知り合ったばかりの正輝(かれ)の姿がふと重なった。

普段から他人に興味が出ない涼風にとって少し新鮮な感覚である。

ふと振り返った彼と目が合ってしまったので笑顔で手を降って見せた。

すると相手は少し驚いたの表情を浮かべ、跳躍したのかその場からフッと消えてしまった。


「あらあら随分照れ屋な事で...」


そう空に呟いて空の薄雲に目を戻す雲達はその姿を消しており、快晴の青空に替わっていた。


「あの顔は確か...B組(となり)小田悌之(おだ やすゆき)君...だったっけか」


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