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黄昏参り  作者: 竹屋智晶
1章
2/4

1部

放課後、靴箱に刺さっている花柄の帳面を尻目に正輝は校庭へと向かった。

寮に帰っても特にやることはないので校内で時間を潰す事にした。

西校舎裏側があまり人気が無い様なので取り敢えずそこらの木の上で完全下校時間まで昼寝でも洒落こもうと思い裏庭を横切り校舎裏までやって来た。

故郷の郷ではよく木の上でサボって寝ていたものだった。

すぐ父親に見つかり説教を食らったものだが――。


「......あんた生意気なのよ!」


体育倉庫に差し掛かった辺りでその様な声が聞こえた。

どうやら生徒同士のいざこざの現場に遭遇してしまった様だった。


「(うわぁ、面倒くせぇ...)」


咄嗟にそう思い相手の死角側に身を潜め、様子を伺う。

一人の女性徒に対して四、五人で取り囲んでいる。

ブレザーの肩章を見たところ取り囲んでいるのは2年、囲まれているのは1年のようだ。


「あんたがあの方の誘いを断り続けるから計画が滅茶苦茶になってるじゃないのさ!」


そう言いながらリーダー格らしき生徒が囲まれている女性徒の頬を平手で叩く。

しかし1年の女性徒はされるがまま俯き黙っている。


「ッ!!」


校舎の影から様子を伺う正輝の目が少し鋭くなる。

彼は昔から多勢で人を脅かす様な輩をあまり好ましく思わないからだ。


「(ちょいちょい...あっちのレディ達もだけど君も随分修羅場ってる顔してるぜぇ~)」

「なッ!?」


飛び出そうとした矢先、突然耳元で気の抜けたような囁きをされて正輝は驚き振り返った。

そこには見知らぬ男子生徒が人差し指を口に当ててニヤニヤしている。

肩の校章を見る限り自分と同じ1年生の様だ。


「(へへへ...吃驚した?)」

「(...あんた、誰だ)」

「(別に誰でもいいだろ? それより、あそこに飛び出して行く気かい? それはあまりおすすめしないねぇ...何分アイツらはしつこい上にかなり陰険だからさ)」

「じゃあ、どうするんだ。只見てみぬ振りするのが良いってのか?」

「(そう言う訳じゃねぇよ。物事にはやり方つーのがあるだろ? 例えばーー)」


そう言いながら男子生徒は鼻を摘まみ少し声色を変えて廻りに響くように叫んだ。


『何だ!誰かそこにいるのか!?』


「ヤバッ、誰かに見つかったよ!?」

「逃げよう!」


取り囲んでいた女性徒達が蜘蛛の子を散らすようにその場を去っていった。


「なぁ~。あぁ、礼ならデート一回でいいから......」

「俺は男だが?」

「それが何か? だからデート!」


悪戯ッぽく言う男子生徒の言葉に正輝は本気なのか冗談なのか理解出来ず戸惑ってしまった。

それを理解したのか、男子生徒はニヤッと笑みを浮かべ


「......まぁ、いいわ、今回は貸しって事で。さぁて、さっきの彼女は...」


さっきまで俯いていた女性徒はその姿を消していた。



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