【番外編】クリスマス②
案内されたテーブルの中央にフローティングキャンドルが見えた。ガラスに浮かぶ深紅のキャンドル、灯された炎が空間を静かに照らしテーブルに波に似た影を落としつづける。男が椅子を引き、圭織に微笑んだ。感嘆の声を上げながら圭織は席につく。もう、この空間だけで楽しい。
圭織は足元に置かれたバスケットにバッグとプレゼントを入れ、美紀に両手を伸ばす。
「美紀の荷物もいれちゃうからちょうだい」
「ありがとう、気が利くわね」
「そりゃあね」
呆れる圭織に美紀は「褒めてるのよ」と笑う。そして、微笑み、「マイプリンセス、メニューをどうぞ」とメニュー表を圭織に手渡した。
「プリンセスって……」
圭織は笑いながらメニュー表に視線を落とした。
「意外に高くはないんだね……」
安堵する圭織に美紀は「そうね。でも、足りなかったらカードがあるもの」と笑う。
「あ、そっか。その手があったね。で、美紀のおすすめは?」
圭織の言葉に美紀は意外そうな顔をする。
「え、なにその顔? あれ、嘘。来たことないの?」
「ううん、あるけど……圭織のことだから好きなものを注文するのかと思ってたから驚いてしまったわ」
「え、そんなにあたし、自分勝手?」
「ううん、違うの。単に好きなものを注文して欲しかったの、うまく説明出来てないけど」
美紀は恥ずかしそうな顔で圭織を見つめた。圭織はふぅんと言いながらメニューをめくっていく。
「じゃあねぇ、スモークサーモンのマリネとラム肉の唐揚げと……あ、ウニのクリームパスタも食べたい! でも、いきなりこんなに頼んじゃ駄目かな?」
圭織は美紀を見つめ言った。美紀は楽しそうに笑う。
「大丈夫よ、頼みましょう」と言ったが思い出したように目を細め、美紀は圭織を見た。
「圭織、飲み物は?」
「あ、忘れてた! 何だろう、何にしよう。あんまり強くなくて甘いのがいいなぁ」
圭織の言葉に美紀がそうねと考え込んだ。
「ご注文は御決まりですか?」
「ええ、お願いするわ」
絶妙のタイミングでテーブルに来た男に美紀は次々と料理の注文をしていった。そして、最後に美紀は微笑み、「ベリーニとホットワインを」と言った。
ようやく、注文し終えました(苦笑)このままだと今年はクリスマスの描写をして終わりそうですが、明日も公開しますので宜しくお願い致します。