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何気ない会話
暖かな車内に控えめなラジオの音が聞こえる。水族館までは十分ほどだ。
「そういえば、美紀はいつまで休みなの?」
「今年は5日までよ。圭織も同じ?」
「うん」
「何処か旅行したりするの?」
右に曲がりながら美紀が言った。
「いや、寒いしずっと、家で本読んだり映画観たり、だらだら過ごすかなぁ」
暖かくて欠伸をしてしまう。
「こたつでみかん食べたり?」
幸せそうに美紀が言った。
「うん、そうかも。みかん、箱で毎年買ってるもん。美紀も買ったりする?」
「んー、一人暮らしだからね。たまにみかんを買ったりはするけど、箱だと腐っちゃうのよ」
「あー、そうだね。あ! 美紀は実家に帰ったりする?」
「いや……帰らないかな」
「そっか」
「うん。あ、そろそろ見えてくるわよ」
美紀の言葉に圭織は前を向く。気がつけば、美紀の横顔ばかり見つめていた。
ようやく、水族館に入れそうです。




