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想う
美紀はコンビニでタクシーを待つ。人工的な光が細かな雪を鮮明に照らしている。美紀は目を細め、降り続ける雪を受け止めるように掴んだ。雪はすっと溶けていく。その美しさに美紀は息を吐く。アスファルトに息が渦巻く。コンビニで買ったホットコーヒーを飲みながら、美紀は圭織を想う。足先は痛いくらい冷え、買ったばかりのコーヒーも飲みやすくなっている。
それでも、美紀の心は熱い。いままでで一番、楽しいクリスマスになった。こんな日が来るなんて、昔の美紀には理解出来なかった。
「生きてて良かった……」
美紀は呟き、スマートフォンのギャラリーにおさめられた写真、そう、笑顔の圭織をじっと見つめる。
「……」
誰よりも圭織が可愛くて、愛おしくてどうしようもなかった。
寒いけど耐えられる。そんな日もあるのだ。




