強引で傲慢
電話は繋がらなかった。美紀はスマートフォンをカバンにしまい、圭織を見た。
「誰に電話をかけたの?」
ようやく、圭織が口を開いた。
「んー、弟さんにね」
「え? 弟さんって義之? なんで? 番号知ってたの?」
「ええ、昔、交換した番号が合ってればね」
「そう」
僅かにそっけない言い方を圭織はする。
「あら、なぁに? 嫉妬かしら?」
「はっ!? 何故? どうして、あたしが?」
大きな声を出す圭織をすれ違う人々が一瞥する。その視線に気がつき、恥ずかしそうに顔を伏せる圭織。美紀はくすくすと笑い、「大丈夫よ。私は圭織が一番なの」と真剣な眼差しを圭織に向ける。
「そう……まぁ、それはどうでもいいけど……何で電話したの?」
「んー、圭織が心配だったから弟さんに迎えに来てもらおうと思ってね。一緒に住んでるわけでしょ?」
「まぁ、一緒に住んでるって言うか、二人とも実家だけど……てか、仕事かもね、あいつ」
「そっか。弟さんはお仕事なのにお姉さんは私とデートってことね」
美紀が勝ち誇ったような顔をしている。
「……」
圭織は瞬時に口をつぐんだ。経験で理解できる。今、一言も、単語ですら美紀に言ってはならない。圭織は美紀を見つめ、息を吐いた。全くもって、意味が解らない。
調子を取り戻してきたのかな、圭織さん。




