18/51
異変
美紀のターン!!
なんだろう。圭織の様子が何だかおかしい。具合が悪いわけではなく、なんだろう。気分が悪いように思えた。どうしたのかしら、実際、そう、訊ねても良かった。でも、何だか、言葉より先に美紀は指先に触れてしまった。
「……何?」
刺のある言葉に冷たい視線。美紀は笑う。別に理由なんかなかった。
「触れたいと思う欲求に従うのはおかしいこと?」
本当にそう思っていた。だから、何も考えずに自然と口にしてしまう。圭織は途端に嫌な顔をした。美紀は目を細めた。何度も見たことのある顔つき。圭織は美紀を露骨に嫌悪している。それはなんだろう。異性愛者が同性愛者に向ける冷たい眼差しに似ていた。
ただ、圭織は何も言わなかった。
「……」
やがて、冷たい眼差しはゆっくりと消え、困ったように美紀を見つめている。美紀は息を吐く。圭織は怯えているようだった。
このまま、一人にしていいものだろうか。いや──
「圭織、ちょっと待っててくれる?」
美紀はスマートフォンを取り出し、圭織の前で電話をかけはじめる。
誰に電話しているのでしょうか。




