寒空を歩いているのに
帰り道。
いつの間にか舞い始めた雪も、いつもは寒くてどうしようもない風すら、心地好かった。圭織は息を吐く。街はイルミネーションと暖かな装飾で、充ちている。すれ違う人々もクリスマスだからだろうか。普段の忙しなさは消え去り、その顔には笑顔と幸福が浮かんでいる。
「美味しかったなぁ」
隣を歩く美紀に圭織は言った。美紀は笑う。眩しい笑みは昔と変わらない。
「そういえばさ」
「何?」
「んー、いつだって美紀はモテてたなぁって急に思い出した」
「何それ」
ふっと美紀は笑い、懐かしそうに目を細める。美紀の視線の先には、クリスマスツリーが映る。
「綺麗だね」
「そうね」
「……で、何の話してたっけか?」
「え? モテてた話じゃないかしら?」
アルコールによって、記憶の定着が不確かになっている。
「そうそう! 覚えてる? 高校一年の時に球技大会で男装したじゃない?」
「え? 男装と言うか、つなぎを着ただけよね?」
「あれ、そうだっけ?」
圭織はきょとんとする。確か、昔のアルバムには男装しか美紀が確かに写っていたはず。
「そうよ。あの時、確か、圭織がワックスで皆の髪を弄ったのよ」
「あー! そうだ、そうだ! あの時、ワックスで寝癖をどうにかしようとしてたんだ! 懐かしいなぁ、あれから……ちょっと待って! もう、十三年? わっ、わー! 凄くない? 月日が経つのは早いなぁ」
圭織は大きな声を出しながら、無意識に美紀の腕を掴む。
お久しぶりです。口調すら忘れてしまいましたが、これからちょくちょく書きますね。




